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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十二章 取り戻せ!源魔石争奪戦
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その三十五 自分で超える意味

その夜、ブライドはキンメキラタウンの魔法使いたちとマキノの協力で作り上げたポーションを手に持って、サザミの元へとやって来ていた。


「よお、真夜中の自主トレか。あまり関心はしないな」


サザミはキンメキラタウンの外にある岩壁に魔法を撃ち続けていた。

かなり魔法をぶつけたのか周りの岩壁と比べてサザミの周りだけ、以上に凹んでいた。

サザミはブライドを見つけると嫌そうに目を細める。


「お前か、何のようだ。俺は忙しいんだ」

「夜は寝る事って言ったはずだぞ。休むことも修行の一環だ。約束を守れないのなら修行場貸さないぞ」

「時間が無いんだ。休憩をしてる場合じゃない、その時間も修行に費やすべきだ」

「だから相棒には内緒で自主トレしてたってわけか」


ブライドは手に持っていた瓶を数回空中に投げながらサザミの元へと近付く。


「限界を超えることに苦労しているようだな」


ブライドがそう言うとサザミが苦い顔をする。


「まあ、気持ちは分かる。エングの方は普通よりも魔力レベルが上がりやすいオリジナル魔法を取得してるからな。一方お前は努力のみで上がるしかない。差は広がって行くよな」

「黙れ。そんなことを言うためにここに来たのか」


明らかな敵意をサザミはブライドに向ける。

それを受けたブライドは肩をすくめる。


「そう警戒するなよ。俺達は仲間だろ。まっ上から目線にムカつくのは分かるけどよ。実際に実力は俺の方が上だし」

「ちっ帰ればいいんだろ。説教は沢山だ」


サザミはそのままその場を離れようとするが、ブライドがサザミに向かって瓶を投げる。

サザミは突如投げられたことで反射的にそれを受け取る。

瓶は青色の液体でいっぱいに入っていた。


「何だこれは」

「魔力増強ポーション、試飲は俺がした。それは間違いなく魔力を倍にさせることが出来る」


サザミは訝しげにその瓶をまじまじと見る。


「魔力を増やせるのか」

「ああ、かつのやり方を参考にしてな。あいつはインパクトで無理矢理魔力の量を増やさせた。そう言う強引さが限界を超えさせるヒントになると思ってな。死に物狂いで魔法を使って、魔力を拡張させるよりも手っ取り早いだろ」

「魔力を拡張か……」

「前も言ったが、限界さえ超えれば後は簡単だ。そこを超えられるかどうかが大事だってことだ。期間は短い、何事にも最短の道を進むべきだ。使えるもんは全部使う、お前もそう思うだろ」

「……」


サザミはゆっくりと瓶のふたを開けた。

そしてその中身をじっと見つめた後、自分の口元へとそれを持ち上げる。


「やっぱいらね」


そう言うとそのまま中身を地面にぶちまけた。


「っ!おいおいおい、やってくれるな。それを作るのにどれだけの人が関わったか」

「自分の限界位自分で超えさせろ」

「……へえ、言うじゃん。意外と熱血タイプなのか?自分の力で達成しないと満足しないとか」

「俺はただ負けたくないだけだ」

「負けたくないって誰に?」

「十二魔導士として限界を超えるのにそんな物を使うわけには行かないんだよ」


その言葉を聞いたブライドは思わず口元をにやけさせる。

それを見たサザミは不満そうに背を向ける。


「それ、他の奴に渡さない方が良いぞ。その中身が大事ならな」

「ご忠告どうも。だけどそれが最後の一瓶だったよ」


サザミは一瞬目を見開くと、そうかと呟いた。

だが次の瞬間、ハッとさせるとすぐにブライドの方を向く。


「ちょっと待て、まさかこうなる事を知ってたのか?」

「まあ何となく。だが言わないわけには行かないだろ。それを飲めば限界を超える難易度は格段に下がるのは事実だしな。受けてくれる分には俺は構わないし。皆頑固なんだからなあ。あーあ、こうなるならわざわざ取りに行かなかったのに。まっ町の戦力を把握できたから別にいいけど」

「つくづく癇に障る奴だな。結局俺を試してたのか」

「そう言うなよ。お前らが本気で限界を超えようとしてるのは知れたし、だけど夜は寝ろ。超えたければなおさらな」

「分かってる。すぐ寝るよ」


サザミはそう言うと素直に宿へと戻って行った。

それを見ていたブライドがつい言葉を呟く。


「素直じゃねえな」


————————————————————————

それから日にちは進んで行き、そして戦いを何十回、何百回も繰り返していた。

そして最終日


「かつ!」

「分かってる!」


ブライドを中心に俺達は挟み込むように魔法を撃ちこんでいた。

俺の魔法陣は全てブライドには効かない。

だからこそガルアの魔法陣を隠すための布石として使用する。

だが、そうしようとすると。


「ふっファイヤスパイラル!」


周りの魔法陣がそれによりすべて破壊される。

ここ数日でようやくブライドに魔法を当てられるようにはなった。

だが、それによりブライドは自身の魔法を惜しげなく使う様になり、さらにその魔法はどれも見た事の無い物だった。

あれが俗に言う古代の魔法、俺の知らない時代に使われた魔法なのか。


「ガルア!そっちに行ったぞ!」

「分かってる!ウオーターツイスト!」


激流の水が渦を巻くようにしてブライドに襲い掛かる。

だがブライドは余裕そうにその魔法を自身の魔法にぶつけて弾き飛ばした。

だが俺はその一瞬の隙を突いてブライドの懐に潜り込む。

入る!


「残念だけど、見てたぞ」

「っ!?ワープ!」


俺はすぐにワープで距離を取った。

あぶなかった、すでに切り替えでこちらに魔法を放とうとしていた。

くそ、やっぱりだ。

どれだけ死角を突いて行こうとしても必ずバレてしまう。

こんなに修行をしたとしても、ブレイクインパクトだけは一撃も入らない。


「かつ!上だ!」

「へ——————うぐっ!?」


その時体が突如重くなりそのまま地面に倒れ伏す。

これは風か!


「くそ!」

「仲間が傷つくとお前はすぐに意識を削ぐな」

「くっ!がああ!」


強力な雷がガルアの体を貫通する。

するとそのままガルアは膝を付いて動かなくなってしまった。


「終了かな」

「く……そ……」


勝てない、どうしても勝てない。

もう明日なのに、どうして勝てないんだ。


「動きは最初の頃よりは格段に良くなっている。二人の連携はより強固になっているだろう。俺も判断を誤ればやられていただろうな」

「判断を誤ればか、それは判断さえ謝らなけれどうという事は無いってことか」


まだ体が痺れているガルアが目線だけをガルアに向ける。


「お前らの武器は分かりやすい。オリジナル魔法がお前らのメインの武器、その他は別にどうってことない。まあガルアはこの修行の中で魔力レベルを上昇させているから、喰らい続けるのはさすがにきついだろうな」

「だとしても喰らわせないのなら意味がないだろ」


ガルアは力ない言葉を呟く。

確かにそうだ、どれだけ強力な一撃も当たらなければ意味がない。

俺の魔法だって、当たらなければ無駄に魔力を消費するだけだ。


「まっ今までの戦いの中でかつが一番分かりやすい。前にも言ったが一撃を放つ際の魔力量が違いすぎるからな。近づいてくる分、必ずわかる」

「じゃあ、俺はただの足手まといじゃねえかよ」

「そう悲観するな。その代わり一撃でも入れば、逆転はあり得る。まっ一度でも警戒してしまえば、喰らう事はほぼないだろうけどな」


つまり正攻法では無理ってことだよな。

するとようやく痺れが切れたガルアがゆっくりと立ち上がる。


「かつ、計画を練りたい。修行は今日で終わりなんだろ?」


その言葉にブライドは頷いた。


「ああ、明日は本番だからな。これ以上体力を消費して明日に響かせるわけには行かないだろ」

「そうだな、確かに。魔力の回復も必要だし」


するとガルアがこちらに手を差し伸べて来る。

いつの間にか風の魔法の効果は切れていた。

俺はガルアの手を握って立ち上がる。


「今日の夜は色々と気持ちの整理をしておけよ。当日になったら話せなくなるかもしれないしな」


ブライドはそう言うと俺達を元の部屋に戻していった。



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