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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十二章 取り戻せ!源魔石争奪戦
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その三十二 何気ない日常をもう一度

「と言う訳で良い人紹介してくれないか?」


寝起きの俺を訪ねてきたブライドはいきなりそんなことを言って来た。

ブライドの説明を聞いて大体の事は理解することが出来た。


「つまり俺にメメの手伝いをしてくれる人を紹介してくれってことか」

「そう言う事だ!てことでどうだ?お前の事だからチャチャチャっと呼んで来れるだろ」


いや、寝起きでいきなりそんな話をされたこっちの身にもなって欲しいけどな。

にしてもあの天才発明家のメメの手伝いか……


「心当たりのある人は知ってる。多分頼めば了承はしてくれると思う」


ていうか百パーセント了承するだろうな、あいつの事だから。


「まさか本当に居るとは。それなら頼む、メメにはこれ以上心労かけさせるわけには行かないからさ」

「確かに今の話を聞くとその人にすべてを押し付けるってのは俺も賛成は出来ないけど、よりにもよって今かあ」


正直会いづらい、ミノルが今連れ攫われたことは伝えていないし、ここ最近は忙しくて顔を見せてはいない。


「頼む、これも作戦を円滑に進ませるには必要なことだ。今は少しでも人手が欲しい」


ブライドがこうも真剣に頼んでいるんだし、私的で断るわけには行かないよな。

俺はその提案を受け入れることにした。


「分かったよ。今日早速頼んでくる」

「よし!もし来れるようならここに連れて来い、クリシナに送ってもらってメメに審査してもらうからよ。もしかしたら断られちまう可能性はあるが、その時は俺から謝罪をしておく」

「大丈夫だ、あいつらは優秀だからな。きっと気に入ってくれるさ」

「かつがそれほどまで信頼に置いているのなら、心配は要らなそうだな。早朝に呼び出してすまなかったな。それじゃ俺は修行の準備をしてくるから、お前も後で来いよ」


そう言うとブライドはそのまま部屋を出て行ってしまった。

さてと、頼まれたからには行くしかないんだけどせめて菓子折りでも持って行こうかな。

俺は気まずさからか、何か手土産を持ってその人がいるであろう宿屋へと向かって行った。


——————————————————

「確か泊まっている場所はここだったよな」


俺は菓子折りを持ってその宿屋の前へと立つ。

妙な緊張感が俺の足を止めさせる。

久しぶりというのもあってか少し会うのは気まずいな。


「て、そんなこと言ってる場合じゃないよな。よし、行くか!」


俺は覚悟を決めて宿屋の方へと歩き出す。

と、その時ある事に気付いて思わず足を止めてしまう。


「あっそう言えば、俺宿屋の中には入ったこと無いんだった」


あの時は入ろうとして右往左往した時にたまたま帰って来るタイミングで会ったから、入らなくて済んだんだよな。


「やっぱり今度こそ中の人に呼んでもらうか。いや、もしかしたらまだ寝ているかもしれないし迷惑になってしまうかも」


俺はどうしようかと右往左往している時、突然扉が開いて中からルルとリツとマキノが出て来た。


「あれ?かつさん、おはようございます急にどうしたんですか?」

「え?あっルルさん、偶然ですねあははは」


するとルルさんの肩越しにリツがこちらを見て来る。


「あれ~ぜっちゃんどうしてここに居るの~」

「というか何をしに来たんですか。私達はこれから忙しんですけど、用がないのなら邪魔だから退いてください」


マキノはしっしっと手で俺の事を払ってくる。

なぜ俺は朝っぱらからこんな煙たがられなければ行けないのだろうか。


「ちょっと話があって来たんだよ。用事がないわけじゃないぞ」

「だから~紙袋~持ってるの~」


リツは俺の手元を指差すと紙袋の存在に気付く。

俺はすぐにその紙袋をルルさんに手渡す。


「えっと、菓子折りです」

「あっそれはご丁寧にどうも。へえ、これ高かったんじゃないですか?」


ルルさんは紙袋を手に取ると中身をじっくりと見る。


「いや、それほどでもないですよ」

「怪しいですね。物でつって頼みごとを受け入れやすくしたんじゃないですか」


鋭いなマキノ、その通りだ。

だがここは正直なことを言わずに気持ち程度と受け取ってもらおう。


「そう言う訳じゃないぞ。久しぶりに会うから、挨拶がてらにな。ていうか三人はこれからどこか行くのか?」

「簡易的な魔法協会を作ったのでその受付の仕事をしに行くんです」


前にそんな話が出てたな。

この様子だとうまく機能しているようだ。


「そうですよ。なので私達はあなたに構っている暇はないので、それじゃあ早速行きましょう」


そう言ってさっさと行こうとするマキノの手をリツが握る。


「何か~あったんだよね~話聞くよ~」

「ちょっリツ!?本気ですか、今の状況で頼みって絶対にめんどくさい事に巻き込まれますよ」

「でも~友達が困ってるのなら~助けてあげないと~」

「そうですね。私も何か力になれるのなら」

「ありがとう二人とも。でも実は頼みがあるのはリツとマキノなんだ」


恐らくこの二人ならメメの手伝いも可能なはずだ。


「げげっよりにもよって名指しですか」

「そうですか、それなら私はお邪魔になってしまいますね。お二人とも今日は手伝いは大丈夫ですから、それではかつさん失礼しますね」


ルルさんは紙袋を手に持ってそのまま魔法協会へと向かって行ってしまった。

そして残された二人はうち一名はこちらを睨みつけるようにして見ていた。


「えっと、まあそんなに難しいお願いをするつもりはないよ……多分」

「あー!今小声でたぶんと言いましたよ。濁すような言い方をして私達を変な場所に連れ込もうとしてるんじゃないですか」

「何だ変な場所って!あそこは変な場所じゃないぞ……多分」


正直あの場所は完全には否定は出来ないよな。


「またですか!リツ、あの人は信用できません。すぐに断るべきです。リツは優しいので何でもかんでも受け入れてしまうでしょうからここは私がビシッとむぐ!」


すると突然リツがマキノの優しく抱きしめる。

マキノは予想だにしていなかったのか目を丸くさせて固まってしまっている。


「どお~どお~落ち着こうか~マッちゃん~先ずは話しを聞いてみよう~」

「わ、分かりましたから話してください」


マキノは恥ずかしそうにリツの腕の中から離れる。

何か、いいね。


「て、そんなことより二人に頼みたいのはある人の手伝いをしてもらいたいんだ」

「ある人~?」

「そう、その人は発明家で今俺達に必要な物を作ってくれてるんだけど、一人でその作業しててさ。人手が足りないからある程度作れる知識を持ったうえで手伝える人を探してるんだよ」

「なるほど~つまり~お手伝いだね~」

「まあお手伝いだな」

「なるほど、困っている人が居るのなら私もお手伝いしますよ」


あれ、さっきまで否定的だったのに急に肯定的になったな。


「あなたが絡んでないのであれば面倒事に巻き込まれなさそうですし」


なるほど理由はそれか。


「とにかく了承って事でいいよな。それじゃあ付いて来てくれ。その人がいる場所に案内するからさ」

「分かったよ~」


そう言うと二人は大人しく付いてくれ来てた。

クリシナが居る泊まり先に向かう途中でリツが口を開く。


「そういえば~ミっちゃんは~今何してるの~」

「っ!えっと……」


思わず言葉に詰まらせる。

やっぱりそこ聞いて来るよな。

リツからしたら親友のミノルが今何しているのか聞くのは当たり前だし、ミノルは何度かリツたちに会いに行ったりしてるから、突然来なくなったらどうしてるのか聞きたくなるよな。


「どうしたの~ぜっちゃん~」

「いや、何でもないよ!」


正直に言うべきか、いや今は余計な混乱は避けるべきだよな。

でも本当にそれでいいのか。

リツもミノルの現状を知るべき何じゃないのか。

リツの立場になってみれば嘘つかれたのはショックだろうし。

でも、でも……


「ミっちゃんは~大丈夫だよね~」

「え?」

「何があっても~ぜっちゃんたちが居るんだもん~だから私~心配してないよ~」

「そっか、ありがとな」


リツはもしかしたら気付いてるのかもしれない。

気付いたうえでああ言ってくれているのかもしれない。


「何なんですか。今の会話、脈絡があって無さすぎませんか」

「良いんだよ~ぜっちゃんと~私は~通じ合ってるからね~」


そう言ってリツはこちらに満面の笑みを浮かべて来る。

その言い方はちょっと照れくさいな。

するとマキノは俺とリツは交互に見る。


「うそ、まさか二人とも……出来てるんですか!?」

「いやいや、ちょっと待て話を飛躍させるな!」


俺が慌ててマキノの言葉を否定していると突然リツが俺の腕に手を絡ませて来る。


「バレちゃったね~」

「やややややっぱり!見損ないましたよ!あなたはてっきりミノルさんの方を狙っているのとばかりに!」

「いや違うから!ていうかリツも勘違いするような事するなよ!」

「そんな~私とは遊びだったの~」

「ふふふ二股ですか!そんな複雑な関係になっていたとは、性欲の塊ですね!女の敵ですよ!」

「嫌だから違うから!おい、リツいい加減にしろって」


その言葉でようやくリツは冗談ぽく笑いながら俺の腕から離れる。


「あはは~マッちゃんは~反応が面白いな~」

「え?もしかして冗談だったんですか?」

「さっきからそう言ってるだろう」


飛んだ濡れ衣を着させられたな。


「こうやって~くだらない事で~笑い合えるのって~幸せだよね~」


リツはどこか遠くを見ながらそんな事を呟く。

今の世界では明日がどうなるかは分からない。

笑い合っていられるのも今日までかもしれない。


「大丈夫、必ず何気ない日常に戻れるはずさ。昔みたいにみんなで笑い合える日々に」

「何かっこつけてるんですか。そうしてもらわないと私が困ります」

「ぜっちゃんなら~出来るって~信じてるよ~」


皆元の日常に戻れると信じている。

だからこそ負けるわけには行かない。

またみんなが集まって笑い合えるように。


「さてと、着いたぞ!」



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