その十三 新たな仲間
「え、あ、はい」
「よかった。それじゃあ宜しくお願いします」
そう言うと空いた椅子にその男は座った。
「ちょ、ちょっと待って下さいね」
そう言ってその男に背を向けて俺はミノルと聞こえないようにヒソヒソ話した。
「おい、ミノル。お前はデビと2人であっちに行っててくれ。こいつは俺に任せろ」
「分かったわ。デビは私に任せておいて。デビ〜あっちで話しましょう」
「何じゃ急に?はっ!もしかして妾の実力を測るテストをするのじゃな。よぉーし妾の実力とくと見ろ!」
高笑いしながらデビはミノルと一緒に別の席に移動した。
騒がしいやつが遠くに行ってくれたおかげで集中できるな。
「すいません。待たせてしまって」
「いえいえ、構いませんよ」
男か……まあ女性ばかりだったから少し有り難いな。
「それじゃあ自己紹介をお願いします」
「はい、僕の名前はリドルです」
「リドルね……それじゃあ今日面接する絶対かつです。よろしくお願いします」
顔も声も若い、同い年くらいかな。
これだったら気を使わなくても大丈夫だな。
言葉遣いも丁寧で礼儀もちゃんとしてる、第一印象は最高と言ってもいいな。
「はい、宜しくお願いします」
「それじゃあ面接を始めるけど、俺みたいに気軽に話してくれて構わないよ。一応パーティー組むかも知れないし敬語ってのも変だろ」
「お心遣い感謝します。でも僕はこっちのほうが慣れているので」
遠慮してる……って訳じゃ無さそうだな。
ホントにこれが1番慣れてるのだろう。
「分かった。それじゃあ張り紙を見てきたのならそうなのだろうけど、一応魔法許可証を見せてくれ」
「そうですよね。分かりました。これです」
そう言ってポケットから魔法許可証を取り出し俺にすぐ渡した。
「ええっと……魔力レベルは……8!?」
「はい。大変恐縮ながら」
そう言って申し訳なさそうに頭を掻く。
張り紙の制限では魔力レベル8以上と書いてたはずだ。
俺の予想だと8以上では無く7、6、が妥協して来ると思ったけど。
「これは……大当たりだ」
「え?何か言いました?」
「いや、こっちの話だから気にしなくていい」
危ない、もう少しでレベルだけで判断する人と思われる所だった。
「レベルは合格だ。はい返すよ」
「ありがとうございます」
俺は魔法許可証をリドルに手渡すとすぐにポケットに閉まった。
「それじゃあ、どうして俺達を選んだんだ?」
何か会社の面接みたいな質問だが俺は面接をしたことが無いからこう言うのしか思い浮かばない。
「理由は単純にお金が欲しいからです。その為にパーティーを探していたんです。その時見つけたそちらの張り紙に書かれていた条件が僕にピッタリだったのでここを選びました」
「なるほど……」
でも、少し変だな。
単純に、金が目的ならもっと他に良いのがあるんじゃないか。
するとこちらを見たリドルが少し笑みを浮かべた。
「どうした?何か付いてるのか?」
「ああ、すみません。ご納得されてない様子だったので」
しまった!表情に出てたのか。
「かつさんの言うとおり理由は別にいます」
初めて名前呼ばれたな。
「かつさん、いや……あなた達は裁判に出ていましたよね」
やっぱり知ってるか。
そりゃ公衆の面前であんな裁判したら違う意味で有名になるわな。
「ああ、そうだけど」
「だから選んだんですよ」
「え?どういう事だ?普通に考えたら逆にやりたくないんじゃないのか」
すると真っ直ぐそして真剣な顔で答えた。
「僕はスリルがあったほうがいいんですよ」
何かやばそう。
「それでどうですかかつさん。僕は合格ですか」
そう言って俺に向かって手を差し伸べてきた。
「えっと……」
どうする!?
正直言って仲間にしたい!
同じ年代で女ばかりのチームで男が加入してくれるのもありがたい。
性格も悪くなさそうだし、すぐに他の仲間とも打ち解けるだろう。
でも何か、仲間にするとすごく後悔するような気がする。
「どうしました?」
「あ、何でもない。それじゃあ少しの間よろしく!」
俺はリドルの手を強く握りしめた。
「はい、宜しくお願いします」
まあ一時的だしそんな問題にはならないだろう。
「かつーもう終わったー?」
ミノルが話し終えたのか、こちらに戻って来た。
「グッドタイミングだなミノル。こっちは合格だ。そっちは?」
「こっちも大丈夫そうよ。デビ、かなり戦力になりそうよ」
「そうなのか?」
それは予想外だな。
もしかしたら地味に魔力レベル高いのか。
「まあそこら辺は後で話すとして、紹介するよ。こいつはリドル」
「宜しくお願いします」
「よろしく」
「ほう、お主が新しい配下か?まあ足を引っ張るなよ」
「おい」
俺はデビの頭にげんこつを食らわせた。
「イッターイ!何をするのじゃ!頭が割れたと思ったぞ!」
「お前が生意気なこと言うからだ。リドルを見習えあいつは言葉遣いも丁寧で何より礼儀正しいぞ」
俺がリドルを褒めると照れくさそうに頬を掻く。
「いえいえ、そんなこと無いですよ。ただ慣れてるだけですから」
するとミノルが興味津々にリドルを見つめる。
「ホントに言葉遣いも丁寧ね。元々貴族か何かなの?」
「そんなこと無いですよミノルさん。礼儀正しくしろと母親に言われていたので」
笑顔でそう返事をする。
俺は暴れているデビを抑えようと餌付けしていた。
「それでこれからどうするんだ?メンバーはこれで十分だろ?」
「そうね、それじゃあ早速出かけましょうか」
「出かける?何処に」
するとミノルがよくぞ聞いてくれたと言う顔で、両手を机に置いた。
「カルシナシティへよ!」




