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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十二章 取り戻せ!源魔石争奪戦
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その三十一 メメの過重労働

「がああああ!全然だめだ!」


俺は修行を終えてそのまま地面に突っ伏していた。

隣には同じくガルアが倒れながら天井を見上げている。

この光景を見るのは二回目だが、もう慣れたような物だ。

相変わらずブライドは汗一つかいていない。


「動きはよくなっている気がするが、全然倒せる気配はないな。くそ、何がいけないんだ」

「そうだな、お前等の行けない所を教えると魔力操作と発動タイミングと動き方と作戦だな」

「それほぼ全部じゃん。全然だめって事じゃん」


2日目にしてすでに心が折れかけている。

なんせ作戦の決行日は一週間後だ。

そしてもう既に二日目に入ってしまっている。

この間にも敵が着々と力を付けていると考えると、こんな所で躓いている場合ではない。

ガルアも同じ考えなのだろう、修行の最中もそうだが今の悔しそうな表情をしている。

焦りを感じているのは明らかだった。


「そうだなあ。ガルアは全壊指摘したオリジナル魔法の回避方法の対策はよく出来ていると思う。まあその解答がかつに追撃を任せるはちょっとありきたり過ぎるけどな」

「ああ、それガルアに言われた通りに空中に居る時のブライドの動向に注意しろって言われたけど、結局それって何だったんだ」

「魔力暴走だよ。あいつはそれを使って空中で回避してたんだ」


魔力暴走、何とも懐かしい名前だ。

そう言えばインパクトを撃つ時にその症状になった気がするな。


「ていうか、ちょっと待てよ。魔力暴走って危ない奴じゃないのか?たしか過剰に魔力を集めすぎて起こる現象とかじゃなかったっけ」

「そうだ、その魔力暴走を起こした時手にやけどの様なダメージを負う。だが上手い事やればかつがやっているインパクトみたいに爆発を起こすことも可能だ。まあ、魔法ではないから余計にダメージを喰らうからおすすめはしないが」


そう言いながらブライドは自身の腕を擦る。

確かに前回避けた時には腕を痛めていたような気がする。

それは魔力暴走の爆発で回避したからか。

するとガルアがゆっくりと立ち上がり、ブライドの方を見る。


「どちらにしろ、空中に行かせることを読まれてその状況に持ってはいけなかったけどな。今回はあまりにも策があからさますぎたか」

「おう、空中で身動きを封じてやるって気配をびんびん感じてたぜ」


戦っている時のガルアの動きはブライドの言う通り空中を飛ばすような動きをしていた。

最初はそれで上手く行っていたが、それが有効だと分かれば相手もその対策をするのは当たり前だ。

ガルアはそれくらい分かりそうな物だけど、修行中のガルアは何処か余裕がないような気がする。


「あと少しだけ時間をくれないか。今のままだと勝てる気がしない。せめて勝てるイメージが沸くようにしたい」

「言っただろ。俺は忙しいんだよ。島中を回って研究所を探さないと、部品の件もあるしな。それとまだ資料が残ってるたらそれを集めるようにも言われてるんだよ。つまり忙しいって事」

「それ全部一人でやってるのか?修行が終わった後にそんなことまでして、寝る時間とかないんじゃないのか?」

「寝る時間なんて必要はない。というか今の現状で寝ている暇なんて無いしな」


まじか、この人寝てないの。

てことは今日も一睡もせずに修行をしてるってことかよ。

それであの強さって本当に化け物だな。


「俺達は寝ていないお前に勝てなかったってことか?」

「はは、心配するな。寝ないくらいで俺のパフォーマンスが落ちるわけないだろ。手加減はしてないぜ」

「どちらにしろ、一人でやるのはきついだろ。クリシナはどうなんだ?あいつずっと俺達の泊り先に居るだけだぞ」


昨日は食堂で普通にご飯を食べていた。

というか今日もクリシナにここに送ってもらう時に食堂に居たしな。


「クリシナは本来裏方専門だから今こそ何だが、クリシナが居なければここには来れないだろ?お前らの他にもデュラに修行を付けてもらっている奴らも居るし、その為にもクリシナが居ないと駄目なんだよ」

「確か他の人にはここの場所の行き方は教えないんだっけか」

「ここは最後の砦だからな。バレるわけには行かないんだよ。だから俺が動くしかない」

「そっか……」


ブライドにはブライドなりの譲れないものがあるんだろう。

だからこそこれ以上言った所でブライドがやめるわけがない。


「それじゃあ、今日はゆっくり休め。明日の修行に支障をきたすぞ」

「分かってるよ」


俺はようやく体を起こすとふら付きながらも何とか地面に足を付ける。


「ブライド、俺達にとってはお前が最後の砦だ。それを忘れるなよ」


ガルアの言葉にブライドは笑って答える。


「ああ、ありがとな」


そしてテレポートによって俺達は宿に戻って行った。


————————————————————

最後の砦でもある秘密基地ではメメの他にもデュラが元十二魔導士たちを順番に稽古していた。

そしてその稽古を終えたデュラはゆっくりと自身の席へと腰を下ろす。

そこにはいくつもの魔法陣が描かれた紙が机の上に無造作に置かれており、魔法陣に関する本が複数並べられている。

デュラがその内の一枚を手に取った時、背後から誰かが忍び寄って来る。


「どうしたブライド」


デュラは後ろを振り返ることなく名前を口にする。

すると自身の名前を当てられたブライドはニヤリと笑みを見せて、デュラの背後から隣へと移動する。


「いやあ、お疲れかなと思ってさ。肩揉んであげようか?」

「そうか、頼む」

「今のは冗談だって、お前は真面目だな」


ブライドはそのまま机にある紙を一枚取り出す。

それは試作品のオリジナル魔法であり、性質上全く使い物にならなくなったものだ。


「どうだ、弟子を抱えた気分は」


ブライドは冗談ぽく口にするがデュラは真剣に答える。


「弟子というわけでは無い。そうなると俺は師匠としてはいいアドバイスを言えないからな」

「ははっそうか?案外お前は向いてるかもしれないぞ。真剣に向き合おうとしてる所とか、本気で悩みを解決しようとしている所とかな」

「俺は当たり前の事をしているだけだ。教えて欲しいと言われた以上、やるしかない」


デュラは手に取った紙を机の上に置く。

そして椅子を反転させるとブライドの手に持っている紙を取る。


「そう言えば、今日見知らぬ奴がここに来たぞ」

「見知らぬ奴?」


デュラは思い出す様に顎を擦る。


「ああ、怪盗と名乗る不審者だ。クリシナがここに寄こしたという事は悪い奴ではないんだろうが、オリジナル魔法を作ってくれと言って来たんでな。ブライドに事前に教えてもらった人達はもう全員来ているし、念のため断っておいた。誰でもオリジナル魔法を教えてもらえると広まっているのなら、すぐに止めた方が良いぞ」

「ああーあいつらか」


ブライドは身に覚えがあるのか納得した様に頷く。


「知り合いだったか?」

「知り合いというかかつの友達だ。ちなみにそいつら何て言ってた?」

「物を小さくできるオリジナル魔法はないかと聞いてきたな。物に魔力を込められるが大きさを変えられるようなことは無理だからな。どちらにしろ断ったが」

「なるほどな、やっぱりあいつらそこで悩んでるか」


ブライドがぼそぼそと何かを呟くと、デュラは不思議そうにそれを見る。


「何だ、何か問題でも起きたか」

「いや大丈夫だ。そう言う事はメメに頼むことにしたから」


その言葉を聞くとデュラが不安そうな表情をする。


「メメはもう一杯一杯だ。昨日また何か頼んだらしいな」

「ま、まあな」


ブライドは気まずさから目線を泳がせる。

それを見たデュラはため息を付く。


「メメは今魔力装置の改造と奴隷の印を解除する為に薬、さらに半獣を人間に戻すための薬を作っているそうじゃないか。そもそもメメは機械専門だ、薬などは専門外のはずだぞ。さらに先日の件ともう一つ頼みごとをすればメメが疲労で倒れる」

「確かに……俺だってメメにすべてを背負い込ませたいわけじゃない。だが今はメメの力が必要だ。メメ程の知能と技術を持った奴は早々居ないからな」

「ブライドの言う通りではあるが、だからと言ってメメにすべてを背負い込ませる理由にはならない。せめて手伝いが出来るものを探すべきだ」


デュラの言い分に納得するようにブライドは頷く。

だがブライドも譲れない物はある為少しだけ考えこむ。


「ダメ元で頼んでみるか」

「だからメメには」

「いや、人望がある奴を俺は知ってるんだよ」


そう言ってブライドは得意げに笑った。



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