その十二 面接
「ん、んん……」
何だ、オレどうなってるんだ。
すると背中から布の感触が伝わってくる。
そうか俺、寝てたのか。
俺は重いまぶたをゆっくり上げた。
「うううん……何処だ……ここ?」
俺はまず自分の場所を確認する為起き上がろうとした。
「う、体が上がらない」
何かが上に乗ってるのか思うように体が動かない。
「何だ?何か乗ってるのか」
俺は上に乗っている何かを無理やりどかそうと首だけを動かし自分の体の上を見た。
「え、ちょっと待て、上に乗ってるのって………ミノル!?」
俺の上に乗っていたのは、気持ち良さそうにいびきをかきながら寝ているミノルの姿だった。
な、なんでミノルが乗ってるんだ!?
「ど、どうなってんだ。とりあえずどかした方がいいのか」
俺は未だに状況が飲み込めず困惑状態になっていた。
そのせいも合って何も考えられず無意識にどかそうとミノルの体に触れた。
「んあ?………あれかつ?」
しまった!起きてしまったか……
「お、おはよう……」
するとミノルはまだ寝ぼけているのか虚ろな目で辺りをキョロキョロを見渡す。
一通り見渡すと下を一点に見始めた。
「……………」
「どうしたんだ?何かあるのか」
俺もミノルと同じように下を見ると、そこにはミノルの胸を触っている俺の手が見えた。
「かつ……あんた……」
「な!?こ、これは違うんだ!」
妙に柔らかい感触があると思ったらそういうことだったのか。
「はっ――――!この……変態がーーー!!」
すると目が覚めたのか目をぱっちりと開けた瞬間俺を鋭い目で睨みつけると同時に俺は空中を飛んでいた。
「―――ぐべぼっ!」
顎と背中に痛みが走る。
「ば、バカじゃないの!?何考えてんのよ、この変態!」
「イテテテ……知らねえよ!俺はただ寝てただけで……てか何でお前がここにいるんだよ!」
俺は殴られた顎をさすり痛みを和らげた。
「何でってここ私の家なの!いるに決まってるでしょ」
「はぁ!?ミノルの家だって?それはおかしいだろ。なんで俺がミノルの家にいるんだよ」
「そ、それは……えっと……」
するとミノルが言いにくそうに体をもじもじさせる。
「何だよ。言えない理由でもあるのか。もしかしてお前がここに連れてきたのか!?」
「ば、違う!って全部違うってわけじゃないけど……」
何だこの反応。
冗談で言ったつもりなんだがもしかしてホントなのか。
「なあホントのところどうなんだ」
ミノルは言いたくなさそうな顔をしているがこっちも濡れ衣を着せられたままじゃ我慢ならないしな。
「分かったわよ。教えるわ。かつ、店で寝ちゃったから外で寝かせるわけにもいかないし、しょうがなく!家に泊めたのよ」
「寝た?俺が?店で?」
俺の数々の疑問にミノルは一つ一つ首を縦に振る。
「マジかよ……」
でもなんで俺は寝たんだ?
その時俺はあることに気付いた。
店で寝た……そうその店は間違いなく。
「リツの魔道具店……そうかたしかあいつのポーションで眠らされたんだ」
今までの疑問が一気に解決した。
俺はあの時リツに眠らされ、それをミノルが家で寝かしてくれたってことか。
え?でも何でミノルがあの場所に居たんだ。
「そういえばミノルってあの後帰ったんじゃなかったのか?いつの間に魔道具店に来てたんだ」
「え、そ、それは……」
すると動揺しているのか、目がキョロキョロと動いて落ち着きがない。
「もしかして何か言えない事情でもあるのか?」
「別に言えない事情があるわけじゃないけど……私自身何で行ったかもわからないし」
ミノルはさっきから訳の分からんことを言っている。
とりあえずあまり触れない方がいいってことか。
「それはもうわかったから話さなくていいよ。とりあえず魔法協会に行って面接しなくちゃ」
「ちょっと待って!まだ私の胸を触ったこと謝ってもらってないんだけど」
くそ、うやむやにしようと思ってたのに。
「ていうかそもそも、何で俺のベットに入ってんだよ。たしかにベットは1つしかないから仕方ないがもう少し離れて寝るとかすれば良かっただろう」
「私はベットに入ってないわよ!ソファーで寝てたの」
そう言ってミノルはソファーの方を指差す。
たしかに布がソファーに掛けられていて寝た痕跡もある。
「いや、だったら尚更なんで俺のベットに入ってきたんだよ」
「知らないわよ。とりあえず私のせいじゃないから」
そう言って頬を膨らませそっぽを向くミノル。
ミノルが自分から入って行ったってわけではないだろうし。
もしかして眠ったまま入って来たとか。
それはないか。
「とりあえずお互い悪い所があったってことでこの話は終わりだ。これ以上話しても意味ないだろ」
「なんか納得行かないけど仕方ないわね」
と言いつつ目はまだ諦めてなさそうなんだよな。
とりあえずこの家を一旦出よう。
じゃないとまた疑われる。
「それじゃあ早速魔法協会に行って面接しようぜ。もしかしたらもう待ってるかも知れないし」
「……そうね。これ以上は見つからなさそうだし。行きましょうか」
やっぱり諦めてなかったのか。
その後俺は準備するからという理由で外に追い出された。
「にしても遅いなあ……どんだけ準備に手間取ってんだ」
女の子の支度は長いのは何故なのだろう。
この世界にもメイクとかあるのか。
と、考えている内にミノルが支度を終え出てきた。
「ごめん。待った?」
「待った?じゃねえよ!どんだけ時間かかってんだよ。もう5分も経ってるぞ」
「いいじゃない。女の子の支度も待てないんじゃモテないわよ」
「何だそりゃ。もういいからとりあえず行くぞ」
俺はミノルに急かすように早歩きをして遅れを取り戻そうとした。
「ちょっと待ってよ。かつ歩くの速過ぎ」
「ほら早く行くぞ」
俺達は朝日と共に魔法協会に向かって行った。
―――――――――――――
魔法協会
「ねえかつ。たしか人がいるから早く行こうとか言ってなかったっけ」
「さあ?何のことかな」
「何とぼけてんのよ!誰1人居ないじゃない!」
「騒ぐな、変なやつだと思われるだろ!」
俺達はパーティーメンバーの面接をする為急いで魔法協会に向かったのだが、まさかの1人も待っておらず今もこうして誰かが来るのを待っている。
「いやまさか誰1人居ないなんて思わないだろ」
「もう〜これだったらお風呂入れば良かった」
ミノルは突っ伏しながら文句をブツブツ行っている。
正直俺も文句を言いたい。
確かに俺達は借金を背負ってるし仲間になりたくないのは分かるが、あそこの張り紙にはちゃんと一時的と書いといた。
しかもちゃんと後ろから二番目の席で黒髪と白髪の男女と書いていたから場所を間違ってるという訳でも無い。
「なあミノル、パーティーってみんな組まないもんなのか?」
「だいたい組むわよ。だけど人を選んでるからね。もしかしたらレベル8以上って言うのがキツかったのかも」
コップのフチを指でなぞりながら棒読みで説明する。
なんかもう諦めてないか。
「とりあえず条件をもうちょっと緩くするか?じゃないとほんとに来ないぞ」
「駄目よ。それじゃあクエストがクリア出来なくなるわ」
「だからって……」
俺達が条件を減らすか話し合っていると後ろから声が聞こえた。
「もしかしてお主らがパーティー募集をしてるやつか?」
その声は少し幼くそして聞いたことがある声だった。
「あれ?デビじゃん。何しに来たんだ」
「何、知り合い?ってあなた裁判の時証人でいた子よね」
「そうだな。まあそれは良いとしてお主らが募集してるのか!」
同じ質問を先程より強い口調で聞いてきた。
「そうだけど……もしかして入るつもりか?」
「ふふふ、その通りだ!妾が仲間になれば百人力じゃぞ」
そう言ってマッスルポーズをして筋肉を見せつけてくる。
いや、言うてそこまで筋肉ないぞ。
するとミノルが俺の肩を叩いてきてこっちに来いとジェスチャーしてきた。
「どうした?」
「ねぇ、かつ。あの子あんな喋り方だったかしら。もうちょっとお淑やかだった気がするけど」
「ああ、あいつはいつもあんな感じだ。気にするな」
「おい、何2人でコソコソ話しておる。妾も仲間に入れろ」
そう言って強引に俺達の間に入ってきた。
「おい、今お前の採用を話し合ってるからあっち行ってろ」
「な!?せっかく来てやったのに何だその言い草は!」
俺があっちいけと言っているのに一向に行こうとしない。
どんだけ一緒にいたいんだよ。
「だから判断するからあっち行ってろって」
「大丈夫よ。すぐ終わるから」
「そう言って妾をおいていく気じゃろ。その手には乗らんぞ。お主らは妾の近くにいろ!これは命令じゃ」
こいつの発言はいちいち偉そうだな。
とりあえず話しても無駄だし無理にでもどっか行かすか。
俺はデビを引き離そうと腕を掴もうとした時、後ろから肩を叩かれた。
「まだ面接やってますか?」




