その二十 サザミとエングの魔法強化週間
「オリジナル魔法の強化!そんなことが出来るのか」
「その為にお前らも来たんだろ」
「おうそうだぜ。ここでなら強くなれるって聞いたからな、うおっ」
その時サザミがエングを押しのけてデュラに詰め寄る。
「ちょっと待て!今、お前等もと言ったか。俺達の他に誰かいたのか」
「遅かったなお前等!!」
突如大きな声が聞こえて来ると同時に奥からサラとガイが出て来る。
しかもガイは上機嫌に笑い声をあげていた。
それを見てサザミは顔をしかめる。
「よりにもよってお前等か」
「よっお前さんらも来たんだね」
「遅かったなお前等。俺はとっくのとうにオリジナル魔法を作ってもらったぜ!俺が一番だ!」
「別に競争をしていたわけじゃない。そんな事はどうでもいい」
「ちっつまんねーな。サラ、あっちでオリジナル魔法の特訓と行こうぜ」
「はいはい、付き合うよ。それじゃあサザミ達も頑張るんだよ」
それだけ言い残してガイたちは行ってしまった。
「がっはっは!先を越されちまってたようだな。俺達もうかうかしてる場合じゃないぞ」
「当たり前だ。デュラと言ったなすぐにでもオリジナル魔法を強化してくれ」
「分かってる。だけど、先にこの人からやらせてくれ」
そう言うとデュラはエングを指差した。
一番最初は自分だと思っていたサザミは思わず驚いた声を上げる。
「何だ!なぜエングから先にするんだ」
「この人の方がすぐに終わりそうだからだ」
「そうか?なら俺が先に行こうか。それともお前がそこまでしたいならサザミを優先にしても俺は構わないぞ」
「俺は子供じゃない。わがままを言うつもりはない。デュラがそっちを優先した方が良いと言うのなら、そうなんだろう」
サザミはこれ以上文句を言わずに大人しく引き下がる。
「その間にはメメと遊んでてくれ」
「博士は暇ではないのだよ。遊び相手が欲しいなら他でやってくれ」
「誰が遊び相手だ。俺は勝手に暇をつぶす、時間が来たら教えてくれ」
「おう、また後でな」
サザミは自分の番が来るまで暇をつぶすためにその場を去る。
その向かった方向はガイたちが向かった場所と同じだが、エングは何も言わなかった。
「それじゃあ、早速君のオリジナル魔法の性質と強化したい部分を教えてくれないか」
「おう、だが俺はエングだ。これから長い付き合いになるだろうし、そう呼んでくれ」
「分かった。それじゃあエング、オリジナル魔法を教えてくれ」
「おう、俺のオリジナル魔法はインフェルノキャノンだ。高威力の炎を放つ魔法だが、いかんせん威力が高すぎて魔法陣に留められなくてな。四つに分けて魔法を放ってるんだ。改善したい部分はこの四つの魔法陣を展開せずにしてえんだよ。放つ時の隙が大きすぎるからな」
エングのオリジナル魔法の性質と改善点を聞いたデュラは一つ頷くと早速近くに合った紙とペンを取り出す。
「エングの魔力レベルは十でよかった」
「最近は測ってねえから分からねえが、多分十だ」
「改善は可能だ。だけどそれは本人の魔力レベルによって質は変わる。高レベル程、魔力の性質は強くなる」
「つまり、俺じゃあまともな改造は出来ないってことか?」
「前の人にも言ったけど、限界を超えた者と戦うのなら同じく限界を超えなければならない。今から改造する内容は魔力レベル十三を想定してやる」
「おいおい、それじゃあ俺が扱えねえじゃねえか」
「大丈夫、荒療治になるけど限界を超えられるようにサポートする。超えた後は意外と簡単に上がるさ」
デュラは簡単そうに言うがエングにとっては簡単な物とは思えなかった。
限界を超えた者との戦いは命がけだった、その者たちと同じ土俵に立つのは並大抵なことではない。
だがそれは同時に限界を超えずに勝てると言う甘い考えを捨てろと言う事でもあった。
「がはっはっは!いいじゃねえか、やってやるぜ。限界の一つや二つ、超えてやるよ」
「それじゃあ、この紙にオリジナル魔法の魔法陣を書いて、それを元に俺が改善する」
エングは言われた通りに魔法陣を紙に書きだす。
複雑な模様と記号が描きだされるが、何百回も打って来たためエングは目を瞑ってもその模様が描ける領域に居た。
そして四つの魔法陣を書き終えるとそれをデュラに渡す。
それをじっと見ると今度はデュラが紙に魔法陣を書き始める。
デュラはエングよりも早いスピードで魔法陣を書き終えた。
「これをすぐに覚えるんだ」
「これが俺のオリジナル魔法?」
「魔力はすでに宿してる。俺は覚えてないから覚えるまでは他の人に見せない様に」
その紙を受け取るとエングはじっとオリジナル魔法を見る。
どことなく元のインフェルノキャノンの面影を残しつつ、完全な別物となっていた。
「これを覚えたとして今の俺の魔力レベルで放てるのか?」
「それの真価を発揮するのは十三から、でもそれまでも使う事をおすすめする。その方が魔力レベルが上がりやすいと思うし」
「へえ、ちなみにここは何処が変わったんだ?」
「具体的な内容は実際に体感した方が分かりやすいと思うが、口頭で説明した方が覚悟は出来るか。その魔法陣は今までのように四つの魔法陣を展開しなくても良いようになった、その代わり威力は以前よりも落ちている」
「っ!それじゃあ弱くなってるじゃねえか」
「改善点で上げていた隙を無くすにはこれしかなかった。その代わり別の魔法陣を組みこんで威力の補強をした」
そう言って、デュラは紙に書いてある別の魔法陣を見せる。
「まさか、あんな短い間にもう一つのオリジナル魔法を作ったのか?」
「材料が足りなかったからな。これで問題だった威力は以前の数倍はあるだろう」
「がっはっは!すげえな、さすがブライドの仲間だぜ。それでどんな魔法で威力を上げたんだ?」
「ゼットさんの……いや、今は絶対かつか。そのオリジナル魔法のインパクトを参考にさせてもらった」
「え? そんなこと出来るのか!?」
「完全に一緒じゃない。威力はさすがに劣るけど似たような物を使った。魔力を外から一気に取り入れて魔力暴走のエネルギーを変換させる。それで十分な威力を誇れるはずだ」
「へえあいつと同じ様な感じで出来るのか」
「言っておくが似ているだけで根本的な所は違うぞ。師匠の魔法は複雑すぎて理解できない。だが作りは単純だけど、威力は十分なはずだ」
「ありがとな、デュラ。この魔法陣を覚えて早速特訓して来るぜ!」
そう言ってエングは満面の笑みを見せる。
デュラは特に表情は変えないが口元は笑みを浮かべていた。




