その十九 メメの実験室
かつ達が修行をしている時、サザミ達は強くなるためにクリシナを探していた。
「くそ、あの女は何処に行ったんだ!早く見つけないと他の奴らに先を越されるぞ」
「がっはっは!そう殺気だつな、サザミ。心配するなすぐに見つかるだろうぜ」
「エング、なぜお前はそう楽観的なんだ。俺達には時間が無いんだ、こんな意味のない鬼ごっこをしている暇は……」
「ふっふふっふっふふ、ふっふのふ~」
その時、クリシナが鼻歌を歌いながら横を通り過ぎて行った。
「見つけたぞ!!」
「あら、こんにちは。そんなに熱烈な視線をぶつけて来てどうかしたの?」
「どうかしたのじゃないだろ!早く俺をお前らの仲間の元に送れ!」
「もう、こう言う時はクリシナを探してたんだよって言う物よ。女の子は追いかけるよりも追いかけられる方が輝くんだから」
「いい加減にしろよ。俺はお前とお喋りをする為に探してたわけじゃないんだ。いいからとっとと俺達を送れ」
「すまねえなクリシナ。こいつは少し短気な所があるんだ、すぐに送ってやってくれねえか」
するとクリシナは人差し指を顎に当てながら首をかしげると、悩ましそうにうーんという声を出す。
中々答えを出さないクリシナに対してサザミが更に苛立ちを募らせていると、今度は何か決心がついたのか腕を組んで頷いた。
「クリシナさん大好きって言ったら送ってあげるわ」
「ぶち殺す」
「がっはっは!相変わらずこういう事には慣れてないなお前は!」
「もうその返答は0点ね。まっ送ってあげてもいいわよ。ブライドにもそう言われてしね」
「送るんだったら早くしろ、いつまで話をする気だ」
「そんなに焦らないで、女の子の話はちゃんと聞く物よ。サザミは彼らの事をちゃんと信じてくれてるのかしら?彼らの要求にちゃんと答えられる?わがままとか言っちゃ駄目よ、あなた自分の考え通りに行かないとすぐに怒っちゃうみたいだし」
「誰のせいだと思って、うぐ!?」
その時エングは暴れ出しそうなサザミを押さえつける。
それによりクリシナの元にサザミが向かう事は無くなった。
「俺はもちろん信じてるぜ。ブライドの信頼する仲間だろ、なら俺達も信頼できる」
「そう、それならいいわよ。この先の戦いであなた達は完全に後れを取っている。成長しなきゃ死ぬだけよ。私はもうみんなの事を大切な仲間だと思ってるわ。仲間が死ぬのは悲しいでしょ?だから強くなってね」
「言われなくても俺は強くなる。お前もすぐに追い抜くぞ」
「ふふっそうなることを祈ってるわ。可愛くて強い女の子は無敵だから、追い越すのは大変だと思うけどね。それじゃあ、テレポートするわね。健闘を祈ってるわ」
クリシナは薄く笑みを浮かべるとサザミ達をテレポートさせた。
次に目に入った物は鉄のような臭い機械音が響き渡る場所だった。
サザミは警戒しながら周りを見渡す。
「何だここは?ここがあいつの仲間のアジトか?」
「やあやあやあ!よく来たね君達!早速だけど博士の実験に付き合う気はないかな!?」
ダボダボの白衣を着た小さな女の子が興奮気味にサザミの元へとやって来る。
それをサザミは不思議そうに見ていた。
「なぜ子供がこんな所に居る?迷子にでもなったのか」
「な!?こ、子供だって!?博士の事を子供と言ったな!博士はただ栄養が頭に言っただけで、本当なら君達なんてとっくのとうに抜いてるのだよ!つまり博士は子供ではないと言う事だ、分かったか!」
「がっはっは!面白い子供だな!嬢ちゃん、ここにブライドの仲間が居るんだがどこに居るか知らないか」
「ま、また子供と呼んだなー!もう許さないよ、博士の実験に強制参加させてもらうよ!」
すると博士と名乗る少女はポケットから赤いボタンを取り出すと、ぶかぶかの袖でそのスイッチを押した。
その時部屋の中でアラームが鳴り出して、奥から謎の機械が出現する。
「何だあれは?未知の生物か?」
「それにしちゃあ、生きてる感じはしねえな。むしろ機械っぽくないか?」
「行くぞ、博士の発明品シロマミレ3号!出陣なのだよ!」
「シロマミレ3号?よく分からないが、これ以上俺達の邪魔をするのなら容赦——————へぶっ!」
その時、サザミの顔面に真っ白い何かが目の前の機械によって投げ飛ばされた。
「サザミ!?」
「はっはっは!どうだ、それこそ博士の怒りの一撃さ!博士を怒らせるとどうなるか思い知ったか」
「何だこれ!甘い……こんなものぶつけやがってガキだからって容赦しないぞ」
「まだ子ども扱いして……これはコテンパンにしないと分からないようだね」
「そんなおもちゃで俺達が倒せるとはぶっ!?」
「がっはっは!また喰らってるじゃねえか、ぶほっ!?」
「さあ、まだまだ終わらないよ!」
次々と機械からパイが投げられていく。
サザミ達は全身がパイだらけになるほど猛烈な勢いでパイを喰らって行く。
流石のサザミも一方的にやられていることに腹を立てて魔法陣を展開させる。
そして目の前の機械を正確に壊して見せた。
「いい加減にしろよ。遊びがしたいなら他所に行け。俺達はお前に構ってる暇なんて無いんだよ」
べとべとになった体を洗う様にして水の魔法でパイを洗う。
「済まねえな。俺達はここに用があって来たんだ。相手ならまたいつかしてやるよ」
「へえ、それなりの実力は持ってるみたいだね。でも博士よりも弱いのに偉そうにするのはどうかと思うよ」
「何だと、お前は俺達よりも強いつもりなのか?」
「博士は偉大な発明家なのだよ。もちろん魔法もこう言った発明に組み込むことが出来る。その為には高レベルを維持するのが秘訣なのだよ」
「それじゃあ、お前が俺達を強くしてくれるのか?」
「もちろん!博士に任せておきなよ!」
そう言うと博士と名乗る少女は奥からまたもやデカイ機械を取り出してくる。
明らかに嫌な予感しかしない物をサザミは不安げに見つめる。
「これこそ強制魔力増幅装置さ!本人が引き出せない魔力を強制的に引き出すことが出来るのだよ。ほらほら、早速付けて見てくれよ」
「本当に大丈夫なんだろうな。てっまだやるって言ってないのに勝手に付けるな!」
「そんな簡単に壊れる体じゃないだろ。いちいち騒ぐんじゃないよ。早速スイっとオン!」
するとサザミに取り付けられた装置が突如光輝きモーター音が聞こえて来る。
そしてサザミの体中を思いっきり締め付ける。
「な、何だこれ。体が急に締め付けられるぞ」
「どんな感じだサザミ、魔力あがって来たか?」
「そんなの分からん!というかこれはどうやって止めるんだ!」
「うーんおかしいなあ。もうちょっと魔力が爆発的に上がるはずなんだけど、出力をもうちょっと上げてみようか」
すると博士は更に機械の出力を上昇させる。
それにより機械のモーターがさらなる回転をさせて熱処理が沸騰するかのように煙が噴き出す。
「お、おい!これ大丈夫なのか!?体がすごく熱くなってきて……はじけ飛びそうだぞ!」
「おい嬢ちゃん!なんかおかしいぞこれ、すぐに止めてくれねえか」
「何を言ってるんだ。博士の発明は安心安全なのだよ。そんなに心配しなくても……あれ、止まらない」
「おい、今なんて言った?博士、早く止めろ。体の魔力が膨れがっているような気がする。これ以上すれば魔力暴走が起きかねないぞ」
「わ、分かってる。今すぐに止めて見せるさ。おかしいな、このボタンを押せば止まるんだけど。あっ熱暴走で強制シャットダウン機能が発動しなくなってる」
「は!?おい、今なんて言った!」
「がっはっは!こりゃ大ピンチだな!」
「笑ってる場合かエング!うぐっ魔力が上がって来て……おい、何とかならないのか」
サザミは体の中にある魔力が限界を超えそうになっているのか、苦しそうな表情を見せる。
流石のエングも危機的状況を察してか博士に助けを求める。
「おい、嬢ちゃん!あの装置何とか外せないのか」
「そんなに慌てる出ないよ君。博士は色々な対抗策を考えているのさ、その中の一つが自爆機能なのだよ」
「そうか、すぐに発動してくれ!」
「ちょっと待て!今自爆機能って聞こえたぞ!何をするつもりだ」
「自爆スイッチオン!」
「おわ——————」
その瞬間、サザミの装置が爆発と共に残骸が飛び散って行く。
そして残ったのはボロボロになったサザミのみだった。
「おーい、サザミ大丈夫か?」
「これが大丈夫に見えるか?なあ、ガキ。お前は本当に俺達を強くしてくれるのか!」
「もちろん、博士は天才だからね。君達を強くすることなんて博士の頭脳にかかれば一瞬なのだよ」
「クリシナに信じろと言われたから我慢したが、これ以上は付き合ってられない。強くなれないのなら、これ以上は」
「何をしているんだ、メメ」
そこには巨漢の男が立っていた。
「誰だお前は」
「俺はデュラだ。もしかしてお前らはブライドが言っていた強くなりたい奴らか」
「ブライドが言っていた?その口ぶりだとお前が俺達を強くしてくれる人に聞こえるぞ」
「実際俺はブライドに頼まれたからな」
その事実を受けてサザミとエングはメメの方を見る。
するとメメは悪びれる様子もなく自信満々に腕を組む。
「博士に感謝すると良いよ」
「何をだ!!騙しやがったらこのクソガキが!」
「メメを傷つけるな。俺が代わりに謝ろう」
「デュラ!勝手に守った風にするな!博士は守られるほど弱くはないぞ。それは博士を侮辱しているという事か」
「すまん」
そう言ってメメの数倍の体の大きさを持つデュラが何故か素直に頭を下げる。
その光景にサザミ達は若干の違和感を感じる。
「何であいつが謝ってるんだ」
「さあな、この二人の関係性を俺達は知らないし」
「お前等、強くなりたいのか」
突然デュラが二人に語り掛けて来る。
その言葉に対して、二人は力強く答える。
「「もちろんだ!!」」
「分かった、ついて来い。お前らのオリジナル魔法を俺が強化しよう」




