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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十二章 取り戻せ!源魔石争奪戦
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その十三 牛乳は世界を救う

完全敗北、その言葉だけが僕の頭の中で繰り返される。

仲間二人を犠牲にして僕は生き残った。

リーダーとして託された身として、これほど不甲斐ない事があるだろうか。


「くそ、くそくそくそくそくそ!」


自分の弱さが憎い、どうして僕はいざと言う時誰も助けられないのだろう。

どうして僕はここに来たのだろう。

申し訳なさと悔しさで何度も地面を殴った。

その手をハイトさんが止めるまで。


「リドル……」


言い表せないような複雑な表情でこちらを見ていた。

ハイトも共に戦った身だ、何か思う所があるのかもしれない。

だけど僕にはそんなハイトの気持ちに思いを巡らせる余裕はなかった。

自分の事で精一杯だった。


「僕は駄目な男ですね。二人の女性に助けられて、誰も守れずにただ悔しさを噛みしめるだけ何て。僕は何のために強くなったんでしょうか」

「お前はよくやったよ。自分の状態を見ろ、その怪我でよく戦ったな」

「怪我をすれば偉いんですか?これは自分の弱さを表すには十分ですよ」

「弱気なことを言うんじゃねえ。今のお前はこのパーティーのリーダーだろ。それならやるべきことはまだ残ってるぞ」


そう言ってハイトさんが指を指した方向には村の人々が見えた。

皆恐怖で頭を抱えうずくまって居たり、不安そうにこちらを見ている人も見た。

誰一人安心した様子を見せていなかった、それはツキノさんも同様だった。

不安にさせてしまっている、リーダーとしてもう一つの失態。

かつさんなら周りをこんな顔に何てさせないでしょうね。

僕は今一度、自分を奮い立たせて皆さんの元に向かう。


「すみません、お見苦しいところを見せてしまいましたね。怪我人は居ませんか?居た場合は優先的に運びますので」

「あの、大丈夫なんでしょうか?怪我すごいですけど」

「そうだよ、さっきの奴は何だったんだ!それとこの周りの炎をどうにかしてくれよ!」

「つれていかれた女性の人はどうなったの。また襲われたりしないわよね」


不安そうな声で不安そうな表情をしながらこちらに詰め寄って来る。

精神的にもかなり参ってしまってるでしょうね。

ここは僕が支えにならなければ。

僕は自然な笑みを見せる。


「大丈夫です。これも作戦のうちですから、敵の根城に潜入させているのです。だから大丈夫です」


もちろんそんなわけがない。

カノエとここで接触したのは全くの予想外ですから。

でも嘘でもいいから安心できる情報を与えなければならない。

それが残された僕にすべき事ですから。


「リドル……」


ツキノさんが心配そうな声でこちらを見つめてきた。

彼女は理解してるでしょうね、この状況の危うさに。

ですが、ツキノさんであろうとそれを気取られてはいけない。

ツキノさんだって不安にさせるわけには行きませんからね。


「大丈夫ですよ。お二人は必ず助け出すので。今は自分たちのすべきことを全うしましょう」

「分かった……」


ツキノさんは納得したのか頷くとそれ以上何も言わなかった。

いや、元々無口な人でしたからね。

何か思う所はあるのかもしれませんけど、あえて口にはしないのでしょう。


「先ずは周りの炎を消しましょうか。リフトタイフーン!」


風の魔法を放ち、周りを囲んでいた炎をかき消した。

これで村の人々の不安は取り除かれたでしょう。

今はいち早く村の人々をキンメキラタウンに送らなければいけません。

あの男はああ言ってましたが、何か嫌な予感もしますし問題が起きた場合対処できない可能性もあります。


「それではツキノさん、早速テレポートを開始して——————」

「何帰ろうとしてるんすか。お楽しみはこれからっしょ!」

「よお、あの時はよくもやってくれたな。借りを返しに来てやったぜ!」

「ザック!ニュート!」


炎の檻から解放された瞬間、村を取り囲むようにして大量の奴隷と不気味にほくそ笑むザックさんとニュートさんの姿があった。


「どうしてあなた方が居るのですか」

「カノエ様に呼ばれたからに決まってるだろ。あっしまったこれは秘密だったな」

「っ!?おかしいですね、カノエとは約束をしたつもりなんですけどね」

「ああ、そのことっすか。別に俺達は関係ないっしょ。それにカノエ様と交わした約束はこういう内容だったはずっす。俺はもう手は出さないってね」

「っ!そう言う事ですか」


その瞬間、全てを察した。

あの男は初めから僕達を生かして帰すつもりはなかったんですね。

あの2人が命を懸けて作ってくれた約束もむげにして、本当にはらわたが煮えくり返るほどにムカつく男ですね。

それ以上にその事すら見抜けなかった自分を殺したいほどムカつきますが。


「おい、この状況はまずいぞ。この数と今の俺達の状態じゃ村の人々を守り切れるかどうか」

「どうかじゃありません。守るんです」

「っリドル……ああ、分かってるよ」

「随分とボロボロじゃないか。そんな姿で俺達とやりあえるのか?」

「あの時とは状況は違うっすよ。一瞬で殺してやるよ」


状況は不利、でも僕はここで死ぬわけには行きません。

待ってる人が居ます、死ぬわけには行きません。

もう一度取り戻さなければいきません、生きて合わないといけません。

ミノルさんに託されたから、だからこそ僕はここを生きて村の人々を守らなければいけない!


「状況ですか。確かに違いますね。今は守るべきものが多いです。だからこそ僕達は負けません!」

「こっちももう後がないんだ。お前らが邪魔してくれたおかげでカノエ様もご立腹さ。だからもうこれ以上俺達の邪魔をするな。死んでくれよ!」


一斉に魔法陣を展開し始める。

この量を三人で砂漠のは骨が折れますね。


「それぞれ分かれて攻撃を防ぎましょう!奴隷の人達は傷つけては駄目ですよ!無力化する事に専念してください!」

「そんなこと言ったって数が多すぎるぞ!これじゃあ押し切られる!」

「奴隷の人達は死ぬ限り攻撃をやめません!それは僕達の目的とは違います!」

「でも……やられちゃう……」


ツキノさんの言う通り防戦一方で活路が見出せない。

このまま続ければ確実にこちらが負けてしまう。


「ボロボロの体で随分と粘るな!大人しく死んでくれれば、楽なんだけどな!それとも足手まといが減った方が楽になるか!」

「駄目ですっ!」


その時村の人々に向かってニュートさんが魔法を放つ。

咄嗟に僕は魔法陣を展開させてその魔法を防ぐ。

だがその隙を突かれて一斉に魔法が降り注ぐ。


「があああ!」

「リドル!!」

「お前もよそ見すんなっしょ!」

「ぐっ!」

「ハイト……!」


僕はそのまま地面に倒れる。

既に身体の限界を超えていた。

力を入れようにもうまく力が入らない。

仲間どころか目の前に居る人々すら僕は守れないのか。

死ぬ、僕だけならそれでいい。

だけどみんなを死なせるわけには行かない、僕が巻き込んでしまったような物だ。

ここに居る人々だけは助けなければならない。


「まだ立とうとするのか。その根性は認めてやるよ。だが、お前はここまでだ。安心しろ、お前の仲間は俺達がきちんと使ってやるよ。立派な奴隷に育ててな」

「二人に手を出したら許しませんよ」

「地べたに這いつくばりながら言われても怖くないぞ。さてと、人間と半獣ども!これ以上抵抗すれば殺すぞ。大人しく俺に従うんだな。ああ、半獣に関して奴隷になるために忠誠を誓わなきゃいけないんだが、こんな状況になったらそれも無理か」

「そんな!忠誠を誓いますから、だから殺さないでください!」

「俺達まだ死にたくねえよ!」


皆恐怖に顔を歪ませて命乞いをする。

そうやって無理矢理忠誠を誓わせることもして来たのか。

すると村長が一歩前に進む。


「待てお前等、村長である私の命ならいくらでもやろう。このおいぼれ、行き残ったとしても大した人生は歩めないだろうしな」

「村長!何を言ってるんですか、貴方が命を懸ける必要なんてありませんよ」

「そうですよ、そんな真似はやめてください」

「そんな命乞いをするような真似はやめるんだ。こんな腐れ外道に命乞いをするくらいなら、村長としてお前らを守ることくらいさせておくれ」

「村長……」

「さあ、持って行くが良い!」


村長さんは覚悟を決めたようにザックさん達の前に立つ。

村長さん、それは駄目です。

貴方が死んでも、状況は何も変わりません。

駄目だ、声を出すのすら苦しくなってきました。


「なるほどっすね。どうする、このジジイの意を汲み取ってやるか?」

「そうだな、勇敢なジジイのその勇気をたたえてお前の命を持って見逃してやるよ」


駄目だ、あの笑みは完全に騙そうとしています。

このままでは村長さんが無駄死にに。

ツキノさんは奴隷の人達を相手にしていて動けない状態、僕が倒れてしまったから負担が大きくなってしまっている。

ハイトさんも魔法にキレがない、すでに限界に近づいてるはずです。

村長さんを助け出せる手段が見つけられない。


「それじゃあな、村長」


誰か、誰か村長さんを助けてください!!


「ライトニングアロ―!!」

「っ!?」


その時何処からともなく光の矢が飛んできた。

完全に油断していた二人は村長からかなりの距離を取る。

一体誰が放った魔法?

ツキノさん、いや今は他の人達の対処で終われてるはず。

ハイトさんもこちらに気を使えるほどの魔力も無いはずです。

だったら一体誰が。


「助けがあればドドンと参上、どんな人たちも私がビシューンと救っちゃっうよ!」


元気はつらつな声が近くから聞こえて来る。

そしてそれが誰なのか、僕は知っていた。

それは少女だ、いつも元気な笑い声をあげていて笑みを絶やさない、そして意味不明な言葉や行動を繰り返すおてんば娘。

僕達の大切仲間。


「みんな!カルシウム足りてるかな!牛乳を毎日飲めばハッピーな生活が送れるよ!」

「メイさん!!」



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