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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十二章 取り戻せ!源魔石争奪戦
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その十二 その手を離さない

とても大切な人はいつも居なくなってしまう。

側に居て欲しいだけなのにそれすら叶わない。


「私を連れて行ってください」


アイラは真剣は表情でカノエにそう言い切った。

自分よりもはるかに高い身長の男に対して震えながらそう言い切ったアイラの度胸はすさまじい物だ。

だけどそれは喜ばしい事ではない。


「何言ってるんだアイラ……」

「お願いします。皆をこれ以上傷つけないでください」


アイラは深々と頭を下げる。

体を震わせながら本気で自分を犠牲にしている。

それは駄目なんだ、アイラ。

お願いだ、自分を犠牲にして居なくならないでくれ。


「ほう、お前を人実にしろって言うか?」

「人間を探してるんですよね。目的はそれだけのはずです。なら私だけが連れて行けばそれで済むはずです」

「随分と仲間想いじゃねえか。気に入った!そう言う覚悟が決まった奴ほど半獣にしやすい。お前の覚悟に免じてここは見逃してやるよ」

「駄目です!それは僕が許しません!」


僕はゆっくりと体を起こして目の前の男を睨みつける。

それだけは絶対にさせない、もう失ったりしない。

せっかく見つけたんだ、その為に強くなったんですから。


「アイラ、勝手に居なくなるなんて僕が許しません。もうアイラは僕達の仲間です。リーダーの僕がそれを許す限り、勝手に離れることは許しません!」

「リドル……」

「その通りだ。こんな奴にわざわざ身を捧げる必要はない。ちょっと油断をしただけだ」


そう言って額から血を流しながらハイトが立ち上がる。


「ハイト……危ない……」

「ツキノはそこでみんなを守れ。ここは俺達に任せるんだ」

「駄目だよ!今度は殺されちゃうかもしれないんだよ!」

「アイラ、リドルの気持ちも考えてやれ。かつに託されてるんだ、そう簡単に引けないだろ。それに仲間を犠牲にして助かってもあいつは喜ばないだろ」

「リドル、大丈夫でしょうね。あんたも無事に帰らないと意味無いんだからね」


この状況で勝てることはほぼ不可能でしょうね。

だからこそみんなで帰ることを優先しなければいけません。

もう、誰も失いたくないので。


「一番の解決方法を失わせたか。お前らも背負う物があるんだろうな。だが戦うって言うのなら俺も容赦はしないぜ。周りは炎で包まれている。救援は見込めない、唯一俺と対抗できるあいつも助けには来ないだろうな」

「助けに来るのを待っているわけではありませんので。僕は皆さんを助けに来たんですから」

「良い目だ。その目のまま死んでいくと良いぜ」


カノエの魔力がより一層高まる。

この威力の魔法はたとえハイトと協力したとしても受け止めきれない。

オリジナル魔法を使うしかないでしょうね。

その一撃を回避した瞬間にその隙を突いて攻撃する。

僕はハイトに合図を送る。

その意図を察したのかハイトが頷く。

付き合いは長い、僕の考えをすぐに察してくれるだろう。


「ガハハハ!さあ、来いよ!戦い合おうぜ!」

「行きますよ!」


カノエが魔法陣を展開させる。

その一瞬にもみたない速度で僕はオリジナル魔法を展開させる。


「スコープ!ロック!」

「グランドファイヤーバインツ!!」


その直後魔法が僕の体に直撃する。


「リドル!!!」


通常ならこれほどの威力の魔法を直撃すれば原型など残らないだろう。

だけど僕のオリジナル魔法、魔法無効は魔法陣を目にすることが出来ればその魔法を防ぐことが出来る。

だからこそ僕はそのまま直進する。


「っ!?」

「合わせてください!」

「おう!」


意表を突かれたカノエに向かって渾身の魔法を放つ。

僕が魔法を放つ瞬間、ハイトが僕の魔法に合わせて来る。

炎と風の魔法が混ざり合い、強力な威力へと変貌する。


「アグレッシブアシスフルート!」


直撃、その魔法はカノエの体を貫いた。

はずだった。


「っ!どうして」


その魔法はカノエの体を貫くことなく、その場で停止する。


「くそ、何で効かないんだ」

「言っただろ。実力差だ、お前如きが俺に勝てるわけがないだろうが!」


その瞬間、魔法が弾き飛ばされる。

絶好のチャンスのはずだったのに、そのチャンスをものに出来なかった。


「ぐっ!」

「所詮はそこまで、本気で俺を倒そうとしていたみたいだがすべて無駄に終わった。だがお前のさっきの魔法を無効化する魔法は見事だった。あれはオリジナル魔法だろ?良い魔法じゃねえか。圧倒的な格上に対しては意味ないけどな」


隙を付ける瞬間はあれしかなかった。

それに同じ魔法を何度も放てない。

次は一度に複数の魔法陣を展開されたら僕のオリジナル魔法は意味を持たない。

一撃を与えて隙を作った瞬間にこの場を去ろうとしたんですが、そう上手くは行かないみたいですね。


「アグレッシブフルート」

「っ!?」


一瞬の出来事、体が熱くなるのを感じる。

左腹を貫かれていた。


「リドル!!」

「クソが!」

「ウォーターガン」

「っ!!」


二発、ハイトの体を水の弾丸が貫通する。

痛みがもがきその場で転げまわる。


「ハイトさん……」

「さてと次は誰をやるか」

「もういいです!!!」


アイラが涙を浮かべながらその場で立ち尽くしていた。

その目には先程の覚悟が見える。


「もういいですから、これ以上皆さんを傷つけないでください。お願いします」


涙ながらに頭を下げているアイラの姿を見て、体からふつふつと怒りが湧きあがって来る。

情けない、どうして自分はかつさんの様に出来ないのだろう。

誰かを守ることがこんなにも大変だ何て、その為に覚悟も決めたはずなのに。

今は大好きな人に守られる何て。


「ガハハハ八っ!女の涙には弱いんだ。いいぜ、そこまで言うのなら許してやろう。さあ、来い。お前を犠牲こいつらは行かされる」

「その代わりもうみんなを傷つけないでください」

「分かってるよ。俺はもうこいつらを傷つけない」


アイラはカノエに従う様にしてカノエの元へと歩み寄って行く。

その手を僕は握りしめる。


「リドル」

「駄目ですよ、アイラ。自分をこれ以上犠牲にしないでください。その苦しみは自分一人だけが背負っていい物じゃありません。その考えは僕は好きじゃありませんよ」

「またか、お前はそいつの覚悟を理解出来てないのか?女が命張ってるんだ、男として見届けてやれよ」

「男としてですか。だったらなおさら止めないといけませんね。好きな女性に涙を流して命乞いをさせてしまう男にはなりたくないんですよ!」

「ガハハハッ!良いじゃねえか。その男気は認めてやる。だがこれ以上やるのなら今度こそ死ぬぞ」

「好きな女性を犠牲にするくらいならそっちの方がマシです」

「何言ってるのリドル!そんなのダメだよ!私が皆を守るから、だからもう戦っちゃ駄目!」


アイラはこちらの手を振り払いカノエの元に行こうとする。

だが僕はそれに対抗するようにその手を力強く握りしめた。


「離しませんよ。もう絶対に離すわけには行きません」

「良い目だ。だがこれ以上付き合っている訳に行かないんだよ」


その瞬間、カノエの右手に魔力が込められる。

それを見ていたアイラは慌てた様子で飛び出した。

その手からするりとアイラの手が抜けていく。


「駄目!私が来たからもう攻撃しないで」

「良いだろう。お前から来てくれるなら俺は何も言わない」

「アイラっ!うぐ……」

「やめとけ、もう体もボロボロのはずだ。これ以上やれば本当に死ぬ——————っ!」


その時何処からともなく岩が飛んでくる。

それを飛ばした方向を見て見れば、そこにはツキノの姿があった。


「何だ、お前もやるのか?やれないだろう。実力差は分かり切っているはずだぞ」

「……」

「この女に感謝をすることだな。おかげでお前等は生き残れるんだからよ」

「アイラ、駄目です……」

「ごめん、リドル。私は……」


アイラはそれ以上言葉を紡がずにカノエと共に歩いて行く。


「アイラ、待って!アイラ!」


その言葉に止まることなくアイラは歩き続ける。

力がない、守れると本気で思っていたのに。

僕には大切な人を守れる強さがない。


「ちょっと待ちなさい!」


その言葉でカノエが足を止める。


「私も連れて行きなさい」


そう、ミノルさんが言い放った。


「ミノルさん?どうして……」

「私も人間よ。アイラを連れて行くのなら私も連れて行きなさい」

「俺は構わないが、なぜわざわざ犠牲になることを選んだ」

「私はアイラの仲間よ。アイラが行くのなら私も行く。ただそれだけ」

「なるほどな。まあ、人間なら抵抗できないだろう。それにお前も中々良い。いいぜ、着いてこい」

「そんな、駄目です!かつさんに何て言えば」

「待ってるから」


通りすぎる瞬間、ミノルの口からその言葉が告げられる。

その目はまっすぐで確固たる意志を持っていた。

そのままミノルはアイラと同じカノエの元にたどり着く。


「良い手土産になりそうだ。それじゃあな、約束通り俺はこのまま帰らせてもらうぜ。じゃあな」


そう言い残してカノエはミノルさん達と共に消えて行った。

この日、仲間が二人連れ攫われた。



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