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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十二章 取り戻せ!源魔石争奪戦
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その十一 震え少女

「皆さんは村の人々や人間を避難させてください。僕が時間を稼ぎます」

「何言ってんだお前!相手は元王だぞ!一人で時間稼ぎするつもりかよ!」

「はい、この状況で大勢で戦っても勝てる見込みはありません。それならば今すべき最善を考える時です。今すぐにここに居る人々を逃がすことに集中してください」

「リドル、あんた……」

「これはリーダーである僕の役目です」


僕は皆に笑みを見せる。

余裕を持たなければならない、あくまでも時間を稼げるという余裕を持たせるんです。

心配を駆けさせるわけには行かない、かつさんだってそうやって僕らを引っ張ってくれたんですから。


「ガハハハハ!まさか時間稼ぎが出来ると思われてるとわな。その事実にまずは驚きだ。お前如き一秒もかからねえよ」

「なめない方が良いですよ。守る者が居る時の僕は強いですから」

「そうか、死ね。グランドファイヤー!」

「リストタイフーン!」


凄まじい熱気だ!

風でからめとるのが精一杯ですね。


「皆さん!」

「ちっ!やるぞツキノ!」

「うん……」


その掛け声でハイトさん達はすぐに村人をその場から遠ざける。

後は僕が時間を稼ぐだけだ。

なるべく多く時間を稼がなければいけませんね。


「誰も逃がすわけがないって言ってるんだろ。レベル魔法ファイヤーバーニング」

「レベル魔法リュートアグレッシブサイクロン!!」


巨大な炎の塊を荒々しい風で受け止める。

近くにある建物が次々と吹きとばされていく、村の人々には申し訳ないですが今は人命が優先です。

力を維持できなくなったのか、一気に爆ぜて熱風が広がって行く。


「ほう、思った以上に粘るな。正直最初で死ぬかと思ったが、ただのザコではないみてぇだな」

「はあ、はあ、はあ……」


一撃一撃で魔力が根こそぎ持ってかれてしまう。

このままではすぐにでも魔力がそこを尽きてしまいます。

僕のオリジナル魔法である魔法無効を使いたいところですが、正直一撃一撃が即死吸となると使うメリットがあまりないですね。

ひとつ封印しても別の魔法で死ぬ可能性があるのなら、無駄に魔力を消費してしまうだけになりますし。


「リドル!!こっちはいつでも行けるわ!早くこっちに来なさい」


どうやらミノルさん達は村の人々を離れさせテレポートの準備を終わらせたようですね。

人間の姿も見られるため、あれで全員なのでしょう。


「分かりました、今すぐに行き——————っ!?」


その瞬間、音もなく背後から炎の槍が僕の左腕を貫いた。

その瞬間、肉が焼かれるような強烈な痛みが襲った。


「あああああ!!!」

「リドル!」

「俺との戦闘中によそ見をするとわ。脱出の目途が立って油断したか」

「ぐっああああ!」


熱い熱い熱い、腕が燃えているようだ。

すぐに引き抜かないと……!


「さてと、まず一人……」


そう言うとカノエはこちらに魔法陣を展開させる。

すぐに逃げなければ全身を焼かれてしまう。

すぐに回避を!


「リドル逃げて!」

「ちっツキノ!テレポートは任せた!」

「ハイト……!」


ハイトさんがこちらに入って行くのが見える。

駄目だ、これは罠です!

来ちゃ駄目だ!


「ガハハハっそうだよな。仲間がピンチならすぐに駆け付けちまうよな。それがテメェらだよな!」

「ハイト、逃げてください!」

「親友を傷つけられて黙って見てられるかよ!」

「分かるぜ!お前の気持ち!その想いに免じて先に殺してやるよ!!」

「くっ!」


僕はすぐにカノエの足を掴む。


「何だ、邪魔をするなよ。せっかくお前の仲間が命を張って来てくれてるんだ。殺してくれって自ら来てくれてるんだからよ。その手を離せや!!」

「うがっ駄目です、ハイト!ここから逃げてください!お願いします」

「リドル!」


するとカノエは煩わしそうに僕の顔を何度も蹴って来る。

だがそれでも僕はその手を離さない。


「なるほど、そんなに先に死にたいのならお望みどおりに殺してやろう!」


その時切り替えで片手に魔力が込められる。

この距離で当たれば確実に死んでしまう。

それでも僕はこの手を離すわけには行きません!


「駄目、いやだよ、リドル!!」

「ちょっアイラ!駄目よ、戻って来て!」


その時アイラがこちらに向かって走って来るのが見えた。

駄目だ、何をしているんだアイラ。

こっちに来ちゃ駄目だ!


「人間がまさかこっちに突っ込んでくるとわな。これは殺してくれってことかな!」


カノエはすぐに標的を変えるとこちらに来るアイラに向かって攻撃を放とうとする。

アイラ――――――


「っ!テメエ……」

「アイラに触るな」


早急に切り替えを行いカノエに向かって魔法を放つ。

だがすぐに反応をされたのか頬を掠める程度だった。


「その目、それがテメエの本性か?」

「だったら何だ」


左腕の痛みはもうない。

僕は常に右手をカノエに向ける。

今度は外さない、こいつの頭を貫いてやる。


「そんな殺人鬼のような目をする奴なんて早々居ねえ。どうやら普通の生き方はしてこなかった見てえだな。だが、技術が足りないな!」


その時足元に魔法陣が展開される。

すぐさま僕は距離を取るがすぐにカノエは切り替えを使い、アイラの方に向ける。


「ファイヤーボム!」

「きゃっ!」


アイラは避けようとしてバランスを崩してその場で倒れる。

すると近くの家が突如爆発した。


「うわああああ!やっぱり俺達を殺しに来たんだ!」

「ここに居たら殺される!」

「ちょっと皆落ち着いて!」


人間達はパニックに陥りその場から逃げ出そうとする。

やはりトラウマを植え付けられてしまっていましたか。


「だから誰も逃がさないって言ってるだろうがよ!!」


すると周りが炎に包まれる。

それにより炎の檻のように僕達を村に閉じ込めた。


「さてと、正直言うと俺は殺しは好きじゃない。将来の優秀な兵隊どもを殺すのは惜しい。だが俺に協力しないと言うのならやむなく殺す。賢い選択をしてくれよ」

「誰もあなたなんかに付くわけないじゃないですか。彼らは僕達が守ります」


既に左腕の感覚がありませんね。

重度のやけど、それでも諦めるわけには行きません。

隙を作って何とかここを脱出できれば。


「その戦いなら俺とツキノも参加するぜ。正直やられっぱなしは嫌だからな」

「ハイトさん、ツキノさん。ありがとうございます。でもダメです」

「っ!なんでだ!この状況で協力する以外ないだろう!」

「それは勝てることを前提として話です。先ほども言いましたが、僕達が束になっても勝てません。それほどの実力差があります。だからこそ僕が囮になってるんです」

「リドル、その怪我でまだ続けるつもりかよ」

「リドル、もうやめて。これ以上やったら死んじゃうよ。ごめんなさい、私がこんなことを言ったからリドルが傷ついて」

「アイラのせいではありませんよ。僕がそうしたいからやってるんです」


僕は再びカノエを正面から立ち向かう。

これしか全員が助かる方法はない。


「安心してください。僕は死ぬつもりはありませんから」

「正直人間さえ捕まえればよかったんだが、めんどくさい事になったな」


逃げるわけには行きません、ここで逃げたら大切な物を失ってしまう。

もうそんな思いはごめんですから。


「ツキノ、テレポートの準備をしていろ。すぐに出来るようになったら教えてくれ」

「分かった……」


そう言うとツキノは混乱に陥っている人を落ち着かせる。

そしてハイトは僕の隣立った。


「どうしてですか?」

「馬鹿野郎。そんな怪我で安心して下さなんて言われても安心できるかよ。そういう所はあいつに似てるな。だけど俺だって任されてんだ、援護位はさせてもらうぞ」

「分かりました、よろしくお願いします」


正直助っ人はありがたい、体は限界でしたから。

ですがそれを悟られるわけには行かない。


「行きますよ!ハイト!」

「ああ、リドル!」


僕達は左右から攻撃を仕掛ける。

倒すことは出来ない、だからこそ足止めに全神経を注ぎます。

そう思っていた。

だが次の瞬間、記憶が飛んでいた。


「茶番だな」

「あがっ!?」


ハイトの苦痛の声が聞こえて来る。

僕は何故か地面に倒れていた。

頭から血が流れている。

攻撃をされた?

何がどうなっているんですか。


「魔法の威力、スピード、技術、どれを取っても俺よりも低いお前らが足止めが出来ると思っているのか?そこの小娘、今すぐにテレポートを停止させる」

「ハイト!」

「リドル!」

「くっうぐ……」


圧倒的な実力者、やっぱり無理だったのか。

合ってしまった瞬間から生きる事は無理なんですか。

その時アイラの不安そうな顔が見えた。

ああそうだ、僕は何のために強くなったんですか。


「くっハイトさんを離せ……」

「まだ意識があったか。強めに叩きつけたつもりだったが、今度は確実に頭を潰すか」


もう体が動けない、抵抗することが出来ない。

こんな所で僕は死んでしまうのか。


「ちょっと待って!」


声が響く、震えたその声は同じく体を震わせているアイラから出た物だった。


「お願いリドルを傷つけないで」

「言葉だけでやめると思っているのか?」

「もちろん条件がある。人間を連れて行くのが目的なんでしょ」


嫌な予感がする、とても嫌な予感が。


「あなたに着いて行きます、その代わりもう誰も傷つけないでください」



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