その九 二人の人間
「テレポート!」
俺達はブライドのテレポートによってキンメキラタウンへと戻って来る。
すでに空には星空が見える。
出てくる時は太陽が見えていたのに、もうこんな時間になっていたのか。
俺達は宿へと足を進める。
「皆は宿で休んでるのか?」
「俺もいろいろ忙しかったからな。あいつらがどこで何をしているかは把握していない。まあ、けが人は大人しく療養していて欲しいけどな」
「ははっあいつらが大人しくしているとは思えないけど」
「俺も同感だ。まっタフな奴らだ、直に治るだろう」
俺はブライドの言葉に同調するように頷く。
確かにあいつらの生命力はすさまじい、今頃自分の体を鍛えていたとしても不思議じゃないな。
するとガルアが疑問を口にする。
「あいつらもブライドが稽古を付けるのか?」
「何でそう思うんだ?」
「あいつらは各々けじめを付けなければいけない戦いがある。効率ではなく私怨で戦いをするだろう。俺だって同じだ、それについては否定はしない。だがそれならなおさら実力が足らな過ぎている。俺やかつみたいな勝利をする為の決定打が足りない」
ガルアは冷静にブライドにそう告げる。
「正解だ、的を得てるよ。正直そこについては頭を悩ませてる所だ。本来なら勝率の高い方法で奴の牙城を少しづつ削って行きたい所だが、そう上手くは行かないみたいだ」
「ブライドはもう作戦とか立ててるのか?前は全部の魔力をぶつけるとか言ってたけど」
「ああ、あれは最終手段は穴だらけでまだ使いたくはない。何かしらの方法がまだあるかもしれない、現在模索中ってところだな」
「……そうか」
ガルアが何か躊躇うようにその言葉を発する。
何か思う事があるのだろうか。
確かに今の状況は自分たちの目的の為に走っている傾向がある。
ガイスに関しての効力の糸口に具体的な案はまだ出ていない。
このままで本当に良いのだろうか?
その時、ブライドが俺の背中を勢い良く叩いて来る。
「いった!急に何するんだよ」
「お前はそんな事で悩んでるんじゃねえよ。こういうのは俺に任せとけ、ガイスの事に関しては師匠に任されてんだからよ。本来なら仲間たちだけでやるつもりだった。むしろ余裕が出来たほどだ。だからお前らは自分のやりたい事をやれ。あんなクソ野郎の事なんて気にするな」
「ブライド、精一杯やってみせるよ」
「俺も自分の戦いが終わったらガイスを倒すのに全力で協力する」
そう言い切るとブライドは笑みを見せる。
するといつの間にか宿についていた。
話していたから、着いたのがあっという間に思えた。
「よし、すぐに体を休めておけ。明日も訓練だぞ」
「ああ!明日も頼むぜ」
俺達は宿の扉を開ける。
その扉を開けた瞬間、何かが勢いよく飛び出してきた。
それはデビだった。
「かつ!!」
その声は焦りが込められており、表情は青ざめていた。
嫌な予感がする、俺の視線はデビを通り抜けて人が集まっている場所に注目する。
そこには何故かボロボロになって横たわるリドルの姿があった。
「っ!!」
それを見た瞬間、俺はデビを押しのけてリドルの元に行く。
「リドル!」
「かつ……さん?」
呼吸が弱々しい、所々痛々しいやけど跡が見える。
一体どうしてこんなボロボロになったんだ。
その時リドルが涙を流す。
「痛いのか?どこが苦しいんだ」
「すみません、すみません」
「どうして謝るんだよ!お前は何も悪くないだろ」
「僕のせいです。約束を守れませんでした。任せてもらったのに」
「何を言って……」
俺は思わず周りを見渡す。
だが周りには俺が探している人物は見当たらなかった。
「僕のせいで……ミノルさんとアイラがカノエに連れ攫われました」
「なっ嘘だろ。ミノル達が攫われた」
近くに二人が居なかったのはそもそも二人が居ないから、二人は連れ攫われた。
その時ハイトとツキノが姿を現す。
二人も体の所々に怪我をしていたがリドルほどではなかった。
「すまねえ、俺が付いていながら守れなかった。逆に命を救われた」
「命を救われた」
「かつ……ごめんなさい……手助け出来なかった……」
状況が飲み込めない、一体どういうことだ。
ミノルはアイラはどうして連れ攫われたんだ、何が目的だ。
頭の中で様々な疑問が現れて行く。
明らかな混乱、今の状態では冷静な判断が出来ない。
俺は一度深呼吸をする、深くゆっくりと体の熱を冷まし、脳を落ち着かせる。
「リドル、先ずは傷の手当だ。話しはそれからにしよう」
「かつさん……本当にすみません」
「それじゃあ、あたいはリドルを運ぶよ。他の奴らもあたいについてきな。ガイ、ポーションをありったけ持って来な」
「パシリかよ。まあいいけど」
それからリドルは早急に傷の手当てを施される。
重度のやけどと打撲のみで命に別賞はなかった。
すぐに処置を施したことで後遺症も残らずに安政にすれば治ると言う。
傷を処置している間もリドルは涙を流し続けていた。
病室ではツキノとハイトも治療を受けており、二人に関しては回復のポーションを飲めば治るけがだった。
リドルはベッドで横になり、同じ部屋にはデビとハイトとツキノも同席していた。
「大丈夫か、まだ痛むか?」
「痛みはだいぶ引きました。ありがとうございます」
声に覇気がない、かなり落ち込んでいるようだ。
「お前のせいじゃない。何かわけが合ったんだろ?その怪我を見れば分かる、戦ってくれたんだよな?」
「リドルの名誉の為に俺が話す。あいつは本当にミノルたちを助けようとしてた。自分の命を顧みず真正面から戦おうとしてた。だが相手が悪かったんだ」
「カノエが来たんだろ。そのやけどもあいつのせいか」
「怖かった……本当に殺されそうだった……」
ツキノの体が小刻みに震える。
よほどの事が合ったのだろう。
「改めて教えてくれないか?人間を助けに行ったお前らに何が起きたのか」
「はい、あれはある村を目指していた時でした」




