その六 かつVSガルア
修行場で俺とガルアは目を合わせる。
お互いのオリジナル魔法をぶつける事、それが強くなるための修行内容。
たしかにもしあのガルアに魔法をぶつけられれば格段に強くなるだろう。
するとブライドが魔石を取り出すとこちらに投げてきた。
「それで魔力を回復したらいつでも初めていいぞ。俺は少し用事があるから離れるがサボるんじゃねえぞ」
「え?おい、ちょっと待てよ!」
ブライドはそのまま修行場を立ち去ってしまった。
この何もない広い空間で俺とガルアの二人だけになる。
俺は魔石で魔力を回復したことで何とかダルさが無くなり体も動けるようになる。
そして準備御運動をする為にも体をほぐしていく。
「そう言えばあの時以来だな。お前とこうして戦うのは。あの時みたいに腕を切断するのだけはかんべんな」
「安心しろ。今のお前ならもうそう簡単にやられないだろ。魔力レベルの差はあれど俺とお前の力関係は今は対等だ」
「そう言ってくれるのは嬉しいな。だけどやっぱりお前の方が実力は上だよ。あの時お前は手加減をしてたって言ったよな。それで俺は腕を一本失ってるし、しかも魔法じゃなくて腕力で切り抜けたもんだしな」
「それがお前の戦い方なら構わないだろ。それは俺はまんまと喰らわせられたしな。だけど、今回は油断はしねえぞ」
そう言ってガルアはやる気を見せる。
修行と言われているがどうやら本気の戦いらしい。
まあ、それはこっちもだけどな。
「へっ俺も修行だからって手を抜く気はないさ。ていうか抜けるわけないんだけどな。これから先、信じられないくらい強い相手と戦うんだ。俺だって信じられないくらい強くならなくちゃいけない。いくぞ、ガルア」
「ああ、来いかつ!」
先手必勝!
俺は空中に大量の魔法陣を展開させる。
俺はまだあのインパクトには慣れてない。
魔力の消費もデカイし、無駄に魔法は撃てない。
だったら隙を突いて最短でぶつける。
「お前ならそう来ると思ったよ。ブリザード!」
その瞬間、強力な吹雪により周りの魔法陣がすべて吹き飛ばされる。
俺はすぐにその場から離れて再び大量に魔法陣を展開する。
「レベル1の魔法陣に対して高レベルの魔法で対処するのは効率が悪いな」
「喰らえ!」
今度は大量の魔法陣を破壊することなくその場に止まる。
喰らった所で支障は何一つも無いと言う事だろう。
だがそれを俺は待っていた。
爆発により視界が遮られたタイミングで懐に巡りこむ。
そしてその隙を突いて俺は切り替えで魔法を放つ。
「残念だが、それは想定済みだ。ブラストバーニング!」
不敵な笑みを浮かべるとガルアは近くに着た俺に向かって魔法を放つ。
だがそれは空中で制止する。
「俺も同じだ!カウンター!」
「っ!?」
その魔法はさらに強い一撃となってガルアへと返って行く。
ガルアは移動系の魔法を持ってはいない。
空中に吹き飛んだガルアに向かってワープで近くに飛ぶ。
そして俺はすぐさま右手に魔力を込める。
「オリジナルか!」
「インパクト!!」
「しまっ!」
想定と違ったのか俺が放ったインパクトをまともに喰らう。
今回放ったのは衝撃波の方のインパクトだ。
それにより地面に勢いよく頭と体をぶつける。
魔法は集中力を伴う、いくらガルアでも頭をぶつければ魔法陣をすぐに思い浮かべるのは無理だろ。
魔力も相当使った、これ以上は時間をかけられない。
俺はそのまま地面に倒れているガルアへと空中を蹴って向かう。
左手に魔力を込めてそれを寸止めする。
そしてガルアへとその溜まった魔力を一気に解放させる。
これで決まりだ!
「っう!?」
だが途中で痛みが走り、そのままインパクトが放たれてしまった。
更にガルアが切り替えにより魔法を放ちそれが防がれる。
事を急いだせいだ、一瞬でも気を抜くと魔力が勝手に放たれてしまう。
すぐにガルアは距離を取り、こちらを警戒するように見る。
「今の怒涛の攻撃はよかったな。楽に回避は出来たけど、それでも焦った。やっぱりお前は速攻で決着を付けたがるな」
「それが俺のやり方なんでね」
まずいな、あそこで仕留められなかったのは痛手だ。
でもそう簡単に行けると思ってなかった。
でもそうするしかなかった。
「まあな、だけどこれは修行だ。もう少し、戦おうじゃねえか」
そう言うとガルアは瞬時に魔法陣を3つ展開させる。
まじか!!
俺はすぐにワープでその場から逃げる。
轟音とその余波で体が動けなくなる。
俺の動きが止まったことを見越して、さらに追い打ちを掛けて行く。
その一発一発が即死レベルの魔法だった。
手は抜かないって言ったけど、これはやりすぎだろ!!
「くそ、やられっぱなしでたまるか!」
まだチャンスはあるはずだ。
失敗したからか、魔力の消費は初めて成功させた時よりも少ない、これならもう一発撃てる。
後はチャンスを掴むだけだけど、何かがおかしい。
たしかにガルアの一撃一撃は強力な物だ、だけど避けようと思えば避けられる。
もちろん避けるのも一つ間違えば喰らってしまう程だがそれでも避けられる選択肢が存在している。
ブライドは行っていた、オリジナル魔法を当てろと。
てことはガルアにもオリジナル魔法があるんだよな。
「一体何を企んでいるんだ?」
「それは教えるわけには行かないだろ。それも修行の一つだ」
そう言ってガルアはさらに追撃をしてくる。
魔力があるからって言っても怒涛の攻撃すぎるだろ!
ワープやカウンターを用いて何とか攻撃を掻い潜る。
近寄らせたくないのだろうか、インパクトを警戒しているのが見えるな。
「ロックスター!!」
無数の岩が降り注いで来る。
鋭く巨大で次々と地面にめり込んでいく。
「ワイドファイヤー!!」
その岩の間を炎が埋めていく。
たまらず俺は岩の上に避難する。
それを待っていたのか鋭い矢がこちらに向かってくる。
何とか空中で身を捻って交わすがバランスを崩して岩の上に倒れてしまう。
すると氷柱が服の裾に突き刺さる。
「くっ!」
服が引っ掛かり思う様に動けない。
すると俺の真下に魔法陣が展開される。
これは何の魔法だ。
「俺のオリジナルの魔法は条件が少々厳しくてな。相手を5秒間そこに留まらせた上に俺の残ってる魔力の8割を使用しなければいけない。だけどその間、俺は無敵になる」
「無敵だって?」
「そしてその条件が今クリアされた。魔力は半分以上失ったけど、発動するぜ。王の領域」




