その十 パーティーを作ろうその弍
「それで早速どうするんだ」
現在難易度の高いクエストをクリアする為にパーティーメンバーを募集しようとしてるのだが、その張り紙を作るのに試行錯誤している状況だ。
「まあ一時的に仲間になるだけだし、適当で良いんじゃないの」
そう言ってミノルは紙に絵や文字などを描いた。
本当に適当に書いたな。
終わるのに1分もかかってなかったぞ。
「どうこれ!かなりいいんじゃない」
「げっ!これ……まじか」
それはお世辞でもいいとは言えないほどひどい出来だった。
本人は物凄く満足そうなのだがこれは気を使って褒めたほうがいいのか。
「それ貸して〜」
俺がその事に悩んでいるとリツがミノルが描いた張り紙を手に取った。
「リツどうしたの。何か付け足すの?」
「うん、ちょっとね〜」
そう言ってリツはササッと何か張り紙に描いてミノルに返した。
「へーなかなか良いじゃない。これなら絶対メンバー来るわよ」
あの悲惨な状態を直すのは不可能だと思うけどな。
そう思いながらも一応確認する為チラッと張り紙を見た。
「え……えええええ!!??」
め、めちゃくちゃキレイになってる!
何だこれ、まるで印刷して作ったみたいな完成度だ!
「リ、リツこれ今お前が書いたのか」
「ちょこっとだけ付け足しただけだよ〜」
「リツのおかげで凄くいい募集張り紙はできたわね。それじゃあ早速貼ってくるわ」
気分が良いのか小さいスキップをしながら募集掲示板に向かっていった。
「リツお前どうやったんだ。あんな一瞬の間にあそこまでキレイにできないだろ」
「さぁ〜どうだろうね〜」
「おい、何だその言い方。ほんとにどうやって――――」
「あ、ミッちゃん帰ってきたよ〜。おーいミッちゃん」
なんかうまくはぐらかされた気がする。
まあ魔法かなんか使ったんだろうな。
まあどんな魔法かは知らないけど。
「ぜっちゃん、ぜっちゃん」
「ん?何だ」
その瞬間リツが急接近してきた。
「お、おいリツ!顔ちか―――」
「後で教えてあげる」
そう耳元で小さく囁いた。
「どうしたの2人共?」
「え、いや何でもない。それよりどうだったちゃんと貼れたか」
まあ今聞かなくてもいいか。
後で教えてくれるって言うし。
何で後かはよくわからないけど。
「バッチリ、1番人目につくところに貼っておいたからすぐに集まると思うわ」
「じゃ、パーティーメンバーの件は大丈夫だな。それじゃあクエストだけど、どれにするんだ」
リツがまとめてくれたからかなり絞れてはいるが、まだどれも悩ましい。
「そうね、ちょっと私なりに考えたんだけどいい?」
「何だもう決めてたのか」
「まあさっき思いついたんだけどね。これなんかどう?」
そう言って悩んでたクエストの中から1枚を取り出した。
「これって……指名手配か?」
そこにはモンスターの絵では無く半獣の姿が描いてあった。
「そうよ。報酬金はもちろん1億円で、それにこいつの居場所は事前に把握済みよ。なかなかいいと思うんだけど」
「ちょっと待て、お前今事前に把握済みって言ったのか。何でそんなこと知ってんだよ」
「こいつは私が借金を返す為に捕まえようと思ってたのよ。1億だし」
「1億だしって……」
「それにモンスターよりも半獣の方が成功する確率高いと思うのよ。どう?やって見ない」
たしかにモンスターの方よりも魔法使いの方がやりやすいのかも知れないけど。
何か別の理由がありそうなんだよな。
話し方が妙に変ていうか。
「まあいいんじゃないか。魔法使いはミノルが居れば大丈夫だと思うし」
するとミノルは一瞬嬉しそうな顔をしたが急に不機嫌な顔になった。
「どうしたんだよ。俺は別に大丈夫だけど」
「なんか私に全部押し付けようとしてない」
「そんなわけ無いだろ。俺はレベル1何だから主戦力はミノルだろ。俺はサポートに回ったほうがいいっと思ったんだよ」
まだ納得してないのかジト目でこちらを見つめている。
「まぁいいわ。とりあえずクエストはこれで決定ね。それじゃあ明日の面接の為に今日は解散!」
「「は〜い」」
「―――ってリツは来るのか」
「私は店があるから行けないよ〜。頑張ってね〜」
まあそりゃそうだよな。
リツは魔法得意そうに見えないし多分レベルもそこまで高くないのだろう。
まあ俺よりは高いだろうけど。
「ぜっちゃんまた後で」
そう言って去り際に俺の耳元で囁いた。
「何話してるの?2人共」
俺達はお互いの顔を一度見てから。
「「何でもない」」
「そ、そうならいいけど……それじゃあ」
そう言って手を振りながらミノルは帰って行った。
「じゃ私も帰るね〜」
「お、おう」
リツも手を振りながら魔法協会を後にした。
「さぁ〜て、俺も行くか」




