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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十一章 八つの源魔石の行方
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その三十九 一つと二つ

「ぶ、ブライド!!?」


不敵な笑みを見せるその男は木の上から降りると倒れている二人を一瞥する。


「どうやらミズト達が世話になったみたいだな。いくら裏切り者だからって共に戦った仲間によくこんなこと出来るよなあ」

「ブライド、早かったな。もうここまで来たのか」


イナミは額に冷や汗をかいてチラリと源魔石の方を見る。

未だに源魔石はミズト達の手から離れている。

それはブライドとイナミのちょうど真ん中に位置していた。

二人の間に緊張感が漂う、どちらが先に源魔石を取りに行くか互いに様子を探って動けないでいた。


「イナミ、お前も既に源魔石を獲得してるんだろ?これはここまで奮闘したミズト達に免じてそれだけで勘弁してくれねえか?」

「残念だけど、そのつもりはない。ひとつでも多くの源魔石を獲得するのが俺の任務だ。それにブライドだって持ってるんだろ?」


イナミはポケットにしまった探知機に触れる。

探知機の示すこの場所には複数の源魔石の反応が見られた。

お互い一つずつ手に入れているこの状況で中央に落ちている源魔石は絶対に手に入れたい物だった。


「正面からやり合っても勝たないのはお前が一番分かってんだろ?それともガイスに力でも授かってもらったのか」

「俺が貰ったのはこの奴隷の印だけだよ。それに戦いだけがすべてじゃない、源魔石さえ手に入れれば勝ちだ」


イナミは自分の下を伸ばして奴隷の印がここに刻まれているのをブライドに見せる。

ブライドはそれを見て睨みつけるような視線を送った。


「それの危険性はお前も十分理解してるはずだぞ。ましてや見えにくいように舌に付ける何て正気の沙汰とは思えないな」

「真っ先に疑われると思ったからな。だからあまり見ないここに付けたんだ。おかげで思った以上の収穫は得られた。この探知機とかね」

「それは返してもらうぞ。仲間の為に渡したんだ、お前はもう仲間じゃない」


お互い敵意をむき出しにさせて油断しないように警戒を怠らない。

だがこの状況で焦りを募らせるのはブライドだった。

ミズトには時間がない、度重なる魔力消費とケガによりかなりの重傷だった。

それに引き換え元々腕を失ったダメージも完全には回復していない。

いち早くミズト達を救出しこの場を去らなければならない。

さらに下手に魔法を放ちミズト達に危害を加えることも出来ないのだ。

だがイナミも悠長にしている場合ではない、他の端末持ち人が源魔石の位置が変化しないことに疑問を感じ来る可能性がある。

この状況で増援が来ればイナミが勝てる可能性はゼロに等しい。

お互い無駄に時間は消費できなかった。


「にらみ合いは好きじゃないんだ。それにこれ以上時間を使うわけには行かない」


イナミは再び端末に目を通す。

既に移動している源魔石を確認した時、ブライドが突然動き出した。

その一瞬の反応が遅れてイナミはブライドに源魔石を手にする機会を許してしまう。


「させるか!ウオーターガン!」


イナミは水の魔法で源魔石を弾き飛ばそうとする。

だがそれよりも早くブライドは瞬時に魔法陣を展開させてそれを防いだ。

そしてブライドは源魔石を手にした瞬間、すぐにミズト達の側による。

それにより別の魔法陣が地面に出現した。


「テレポート!?」


『逃げられる。やっぱり行動の速さは以上だ。だけどまだ諦めるわけには行かない!』


イナミはすぐにオリジナル魔法を展開させた。


「アグレッシブフルート!」

「遅いな!」


その魔法はブライドの頬を掠める。

そしていよいよその場から去ろうとした時、ブライドの横に鏡が出現した。

それに気づいた瞬間、ブライドの後ろにある鏡に魔法が吸い込まれそして隣の鏡から再び魔法が放たれた。

視覚からの攻撃、初見のブライドからしてみればそれは虚を突かれた一撃だった。

ほんの一瞬の油断とそれらの状況が重なり、その魔法はブライドの手にある源魔石を弾き飛ばした。


「しま——————」


一瞬の後悔、それを取り戻すためにブライドはすぐに手を伸ばす。

だが一度始めたテレポートを止めることは出来ずに源魔石を掴むよりも先にブライドはミズト共にその場から消えてしまった。

そして宙を舞った源魔石はそのまま地面に転がる。

たった一人残ったイナミはそれを拾い上げた。


「任務完了……」


源魔石に映し出されたイナミの表情は何処か物悲しさを帯びていた。


———————————————

「っ着いたか」


キンメキラタウンに到着したブライドはすぐに先程の出来事を思い浮かべる。


「日ごろから皆の能力を見ていれば気付けた問題だ。油断したな」

「浮かない顔ねブライド」


そこにはピンカの看病を終えたクリシナの姿が合った。

すぐに後ろで倒れている二人を見るとミズトを担ぎ上げる。


「かなりの重傷ね。あっちで治療を行ってるからナズミを運んで頂戴。ミノルたちが頑張ってくれてるの。もちろん他の皆もね」

「他の連中はもう全員来てるのか?」


ブライドはナズミを優しく持ち上げてお姫様抱っこで宿屋へ急ぐ。

走りながらクリシナは先程の質問に答えた。


「ええ、二人でちょうど全員集合よ。私達が助けに来たかいがあったわね。緊急はやっぱりつけておくべきね。あとでメメに感謝しなくちゃ」

「ああ、それもそうだが少しトラブルが起きたその事で後で皆に話さなくちゃならない。メメにも相談しなくちゃな」

「トラブルって現在進行形でトラブルだけどね」

「はぐらかすなお前はもう分かってるだろ。まだ話してないのか?」

「私から言う事じゃないかと思って、美少女は気も使えるのよ。それにまだ受け入れられてない人も居るから」


いつも明るいクリシナが今回に関しては少し暗い表情を見せる。

だがすぐにそれを察知したのかぱっと表情を明るくさせ、笑顔を見せる。


「とにかくみんな無事なのは吉報よ。それだけでも十分だわ」

「ああ、そうだな。ここか」


ブライドは目的地に着くなりノックもせずにドアを開ける。

するとすでに大勢の人が忙しなく廊下を走ったり部屋の出入りをしていた。

その時ちょうど実が通りかかり二人に気付く。


「あっ二人とも帰ってたのね。というかのそのボロボロの二人はミズトとナズミね」

「ああ、何処に運べばいい」

「二階の204の部屋が空いてるわ。広さもあるから二人ともそこで運んで。回復のポーションは後で持って来るわ」

「分かった。行くぞクリシナ」


そしてブライドたちはいち早く二階を目指して階段を駆け上がる。

そして廊下を渡り目的の部屋に入ると、空いているベッドにすぐに横たわらせる。

その数分後、ミノルが回復のポーションを持って戻って来た。

簡単な治療と回復のポーションを摂取させることで命に別状はなかった。

ブライドは治療を終えた二人を見ながらおもむろに口を開く。


「皆はまだ眠ってるか?」

「もちろん、中には精神面の方が傷ついちゃってる子が多いわね。無理もないわ、だってかつての王と対峙すれば冷静さ何てあっという間に吹き飛ばされちゃうでしょうし」

「回復をし、全員が目覚めたら広間に集合させてくれ。これからのことを俺から伝える」


その言葉を聞いてクリシナはうなずいた。



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