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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十一章 八つの源魔石の行方
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その三十七 嘘舌

クリシナはピンカを担いでキンメキラタウンへと戻っていた。


「ピンカ、大丈夫よ。あなたは何も悪くない。これは私達の責任よ」


ボロボロの姿になっているピンカの頭を撫でる。

ピンカの瞳には涙が浮かんでありそれを優しく拭き取る。


「イナミ……待って、私がぜったいに守る……」


寝言を言っているのかその表情は苦しそうに歪んでいた。

直前の出来事を夢で見ているのかもしれない、クリシナが来た時にはすでに誰も居らず源魔石も取られた状態だった。

ただピンカだけが諦めずに地をはいでいた。

大切な家族を取り戻すためにその名前を必死に叫んでいた。


「イナミか、本当に残念ね。もしこれが神様がピンカに向けた試練ならこんなひどいの無いのにね。でも負けちゃ駄目よ、だって女の子は幸せになるために生まれて来るんだもの。そうでしょ?」


—————————————————

「あなたは何者なの?」

「お姉さま、それって一体どういう意味なんですか?」


ミズトのイナミに対する質問にナズミは困惑していた。

目の前の男は明らかにイナミだった、だがミズトからすればそれはイナミではなかった。


「ひどいな、そんないい方しなくてもいいじゃん。俺はイナミだよ。見れば分かるでしょ」


だがミズトはその答えに納得いかなかったのか、手に魔剣を握りしめる。

それを見てイナミも警戒した瞳を向ける。


「何で攻撃しようとするの?俺達は味方のはずだよ。そうだよねナズミ」

「は、はいそのはずなんですけど……」


ナズミはイナミと一定の距離を保つ。

そしてミズトの後ろに隠れた。

更にイナミは怪訝そうな顔をする。


「ナズミまで俺を疑うのか」

「あなたは誰イナミとピンカを何処にやった。言わないとすぐに切る。どうせ他にも仲間が隠れてるんでしょ。さっきの奴もあんたの仲間なの」

「うーん、そうだね。おめでとう、ミズトの予想通りだよ。だけどさ、ちょっと希望が残ってるんじゃないのかな。やっぱりミズトも何だかんだ言って仲間想いなんだ」


ミズトは額に流れる脚を拭う。

嫌な予感が脳裏によぎる、だがその予感は拭い去っていた。

なぜならその予想を立ててしまえばその結果イナミはもう仲間として見られなくなってしまう。

そしてピンカが一番に心の傷を負う事になる。

皆の為にもそれは絶対に無ければならない。


「俺が誰かって聞いたよね」


イナミは不気味な笑みを浮かべる。

それは今まで見た来た中でイナミがするはずのない笑みだった。

それに対しミズトは魔剣をさらに強く握りしめる。


「俺は——————」


———————————————

ピンカ達が源魔石に向かって来ていた時の事。


『ピンカこっちだよ。こっちに源魔石の反応がある』

『そんなの分かってるわよ。ていうか所に本当にあるの?』


ピンカ達は探知機の情報を見て森の中に来ていた。

そこは特に特徴のない森であり源魔石が置いてある気配もしなかった。

探知機が反応を示した場所に立つもそこはただの地面だった。


『何もないじゃない、それ壊れてるんじゃないの?』

『うーん、そんなはずはないんだけどな。ん?ピンカあそこ見て』


イナミが指差した方向には不審な穴が出来ていた。

人一人分は入れる程の穴で中は道が続いていた。


『入れって事かしら。ていうか怪しい、こんな分かりやすい穴会ったかしら』

『そもそもあんまり人は通らないし、誰も気付かないってこともあるかも。とにかく入ってみよう』


イナミは積極的にその穴の中に入って行く。

ピンカは少し不審に思いつつも源魔石の為にイナミが入った後にピンカも中に入って行く。

中は入り口よりも広く通路が複雑に分かれていた。


『もしかしたらモンスターが掘った穴とか?』

『その可能性はあるかもしれないわよ。まあモンスターが来たら私が一発で仕留めてあげる』

『間違って通路は壊さないでよ。とにかく探知機に従って進んでみよう』


イナミは探知機を確認しながらその無数に分かれた通路を進んで行く。

探知機が合ったおかげかすぐにでも開けた場所が見えてきた。


『ちょっと待って』


するとピンカはすぐにその場で足を止める。

それに対しイナミは驚いたように足を止めて恐る恐るピンカの方を見る。


『どうしたの?』

『見てここ』


ピンカはイナミの方を見ずにじっと地面を見ていた。

それに対してイナミも地面を見るとそこには複数の足跡が付いていた。

いずれもピンカ達が通ったとは考えられないほどの量だった。


『少なくとも十人以上は来てるわね。やっぱりこれ罠なんじゃないの?』

『でもだからこそ早く取りに行かないといけないんじゃない。目的が一致してるなら取りに行くべきだ』

『まあね、私もそうしたいし有象無象ならへでもないんだけどあの人が来たら厄介よ』

『そう言う事か。それじゃあ俺が先に様子を見て来るよ。安全かどうか確かめて来る』

『は?今危険だって言わなかった。馬鹿なの?一人で行かせるわけないでしょ』

『別に危険とは言われてないけど、大丈夫だよ。俺だって元十二魔導士だよ。それこそ有象無象に何て負けないさ。じゃあ、ここで待ってて』


イナミはそのまま端末をポケットに仕舞い奥へと進んでしまう。

それを見てピンカは悪態をつきながらもイナミの帰りを待った。

数分後イナミが上機嫌で戻って来た。


『やけに気分がいいわね。何か合ったの』

『敵は居た、でも一人だけだ』

『一人?そんなわけないでしょ、あの足跡の量で一人なわけがない』

『もしかしたらもう出て言った後なのかもしれない。でも一人だったら、余裕だよ』

『まあ確かにそうだけど、まあいい行くわよ』


今度はピンカを先頭にして敵が居ると思われる場所へと歩いて行く。

広いところに出た瞬間、そこは真っ暗で景色があまり見えなかった。


『何よここ、敵どころか誰も見えないじゃない。ねえイナミ本当に——————』

『死ねえええええ!!』


その瞬間、突然周りが明るくなると大量の魔法陣がピンカに向けられていた。

放出される魔法に対してピンカはオリジナル魔法でゴーレムを生成しそれを防御に使う。

そして攻撃がやんだ瞬間、ピンカはゴーレムからゆっくりと顔を出す。


『いきなり攻撃して来るとはやってくれんじゃない。覚悟は出来てんでしょうね。イナミあんたも手伝いなさい。敵は一人って勘違いした罰よ』

『いや、敵は一人だよ』


イナミは大在に囲まれているのにもかかわらず平然とピンカの横を通り過ぎていく。

そしてそいつらの元へと行くと足を止めた。


『何を言ってるの?目でも悪くなった、それに何でそっちに行ってるの』

『ピンカごめんね。ずっと騙してて、でもさ仕方ないことなんだ。これは俺とピンカの為なんだよ』

『何言ってるのか分からないんだけど、いい加減にして早く戻ってきなさい』

『戻れないよピンカ、もう分かってるだろ。俺の正体を。俺は——————』


「俺は裏切り者だ」


そう言ってイナミはあざ笑うかのように舌を出した。

そこには奴隷の印が刻まれていた。



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