その三十 地下の書庫の秘密
「地下の書庫?この城にそんな物があるのか」
「あるのじゃ。妾とクレハが出会ったのはそこじゃからな」
「でもその書庫も一緒に壊されちゃってると思うけど」
アイラの言う通り目の前にはボロボロになった城の残骸だけが残されている。
中に飾ってあった花瓶や食器、額縁に入った絵などが散乱していてさらに地価の書庫かは知らないがボロボロになった本も落ちている。
地下の書庫という物が存在しても同時に破壊されているだろう。
「いえ、それはないはずよ。あそこは地面の下に作られた場所だから城だけ破壊されたのなら書庫には問題はないはず」
「じゃが、上から崩れた瓦礫が降って来てたぞ。それは大丈夫なのか?」
「城が破壊されたことで天井が崩れたと思うけど、それは脆い部分だけで埋もれる程は崩れてないはず。お願い、瓦礫を掘り出してその書庫に連れて行って欲しいの」
そう言ってクレハは再び俺達にお願いをする。
「いいわよ。私達もそこに何があるのか気になるしね。そうでしょ皆」
「え?まあ元々行くつもりでは居たけど、でもどうやってそこまで辿り着くんだよ」
城は全壊、地下にあるとしたらこの瓦礫を掘り起こさなければいけない。
そもそも掘り起こしたところでその地下に行く道は残っているのか?
「テレポートで行けたりは出来ないのか?確か魔法陣が合ったような気がするのじゃが」
「あったとしてもここまで城が壊されちゃ魔法陣も残ってないでしょ。地下に魔法陣が残っているのならもしかしたら探知して一斉テレポートが出来るかもしれないけど」
「おっもしかして魔法陣残ってる系か。それなら俺に任せてとけ、それ魔法陣と直接繋げてやるよ」
ブライドはそう言うとそのままゆっくりと目をつむり集中するかのようにその場で佇んだ。
数秒後、ブライドは笑みを浮かべてそのまま目を開ける。
「ビンゴだ。地下深くに魔法陣らしき魔力を感知したぜ」
「さすがブライドさんですね。そんなことも出来てしまうとわ」
「まあそこら辺の魔法使いとは格が違うからな。それじゃあ、早速向かうか」
「すぐに行けるのなら今すぐにでも!」
クレハの言葉を聞いてブライドはすぐにテレポートをする準備に取り掛かる。
「ねえかつ、もしかしてそこに源魔石があるのかもしれないわね」
「ああ、可能性はあるだろうな。ていうか合ってもらわないと困るぞ。瓦礫の中に埋もれてたらいくら探知機があってもめんどくさいぞ」
「そこ!いつまで喋ってるんだ。口閉じないとした噛むぞ」
「いや、ただのテレポートで舌を噛むわけが——————」
その瞬間、景色が一瞬で歪みだし妙な浮遊感に襲われた時、目の前が真っ暗になった。
「っ!はあ、はあ、はあっな、何だ今の!?」
気が付くとそこは図書館のような大量の本が本棚に詰め込まれていた。
そして天井が崩れた影響か一部瓦礫が地面にめり込み本棚が倒れている場所が合った。
「何か気持ち悪いわ。いつものテレポートじゃないみたい」
「言っただろ、特殊なやり方を使ったんだよ。気持ち悪い奴は俺に言えよ、背中擦ってやるから」
「とにかくついいたみたいですね。本当に地下の書庫って感じがします。これだけ本が多いと読書には困りませんね」
リドルの言う通りここで暮らせば一生分の本が読めそうだ。
「懐かしいのう、ここでお主に抱きしめらたっけのう。しかも妾を監禁しようとしてたのじゃ」
「え?」
皆の視線がクレハに集まる。
分が悪いと思ったのか慌ててクレハは弁解をする。
「ち、違うのよ!人と会わな過ぎてテンションがおかしくなっていたというか、もうデビちゃんその話は二人だけの秘密にしましょうよ」
「まあまあ落ち着きましょ、ここにその本があるんですよね」
「ああ、そうよ。これは恐らくみんなにも関わっていく物だと思う。私はこの書庫を守れて言われた。記憶を失う前は本を守れと思ったけど、それは違った。本当の命令はこの書庫の秘密を守れという物だった」
「書庫の秘密、とっても素敵な響きね。それを今から見せてもらえるのかしら」
「もう使命は果たしたつもり、これ以上守る必要も無いと思うから皆さんにお見せしましょう」
そう言うとクレハはある本棚へと向かって行く。
そこは一見普通そうに見えるが一部だけおかしな部分があった。
そこの部分をクレハは手に取ると傾けた瞬間、その本が勢い良く戻って行く。
「な、何だ」
「仕掛けの本棚ですか。という事はまさかこの奥何かが」
「面白くなって来たな」
先程まで本棚だった場所が移動すると鉄の扉が見えた。
明らかにこの先に部屋があるのが見て分かる。
「これ、どうやって開けるんだ?」
「分からない、というのが本心よ。私はここにこの扉があるってことを知らされただけだから、行き方までは」
「いや、十分なのじゃ。もうこの扉必要ないじゃろ?」
「え?まさかお前」
するとデビが拳を握りしめた瞬間そのまま強固な鉄の扉をいとも簡単に吹き飛ばして見せた。
それによりは入れなかった通路がいけるようになる。
「お前、ごり押しにもほどがあるだろ」
「流石地獄の王だな。探知機はこの先を示してるぞ。早速行こうぜ」
そう言ってブライドはこじ開けられた道を意気揚々と進んで行く。
俺達も続けてその通路を進んで行く。
するとさらに開けた場所であり、そこで俺は思わぬ光景を目にする。
「これって書庫か?」
そこには先程の書庫のように本棚がずらっと並べられていた。
しかもどれも日本語で書かれている、つまりこの島の人達ではなく研究者たちの物だ。
「わあ、これメメが喜ぶんじゃないかしらどれもこれも研究記録みたいよ。それもかなり危険なね」
クリシナは早速並べられている本の一部を手に取る。
研究資料ってことなのか、俺は意を決して一つだけ本を手に取って中身を見た。
「何だこれ?」
それは専門用語と数式が並べられたものだった。
カタカナが多くそれは読めたとしても内容を理解できるような物はなかった。
その時横で放心状態になっているデビが居た。
「ぷしゅー」
「おいデビ、無理に理解しようとするな。これは理系の領域だぞ」
「なるほど、さっぱりわかりませんね。これを作ろうとした研究者はよほどの頭脳の持ち主の様です」
「ここが私が守ってたところなのかしら。どちらにしろ一般人には理解できない場所の様ね」
「彼らはどうやら神にでもなるつもりだったのかしら」
クリシナが突然そんな事を呟いた。
「神?それってどういうことだよ」
「彼らが作ろうとしたものが禁忌を犯す物、つまり作ること自体が禁じられている物を作ろうとしていたのかもしれないわ。人を作ろうとそして兵器を作ろうとしていたのかもしれないわ。その目的は分から売けどね」
兵器、人?
一体どういうことだ、研究者はわざわざこんな島で何を作って来たんだ。
半獣だけじゃない、別のやばい物が存在するのか。
「おい、お前等!どうやら書庫だけじゃないみたいだぞ」
奥の扉を発見したブライドは一足先にその部屋へと向かっていた。
俺達も続けてその中に入るとそこは様々な部品のような物が入った箱や棚があった。
そしてその真ん中にはガラスケースに保管された源魔石の姿があった。




