その八 救済
ミッ――――
「ミノルぅぅぅぅ!!」
「ちょっ!かつ!泣かないでよ。みっともないじゃない」
「だ、だっで……もう駄目がど思っだがら。俺は無慈悲に殺ざれるんだど思っでだがら」
「もう大丈夫だよ〜。今助けるからね〜」
くそぅ、涙が止まらねぇ。
まさか助けに来てくれるなんて。
しかもミノルだけじゃなくてリツも来てくれるなんて……感動だ!
「誰ですかあなた達は?」
「白髪の女は黒のウシの捕獲クエストで一緒に行動してた仲間ですね。もう1人は売れない魔道具店の店長です」
「売れないは余計だよね~」
「それであなた達は何しに来たの?」
そう言って女警察官は不機嫌そうな目でミノル達を見ていた。
そりゃそうだあともう少しで判決が決まった所を邪魔されたからな。
俺にとっちゃ好都合だけどな。
「この裁判を止めに来たのよ」
ミノル達は裁判官に堂々と言いはなった。
「あまり部外者が来られると困るのですが、出ていってくれますか」
「これを見ても同じこと言えるかしら?」
すると、ミノルはポケットに手を突っ込んだ。
「これが目に入らぬかー!」
するとミノルは持っている紙を女警察官に向かって堂々と突き出した。
「そ、それは……!」
「パーティーメンバーカードよ」
パーティーメンバーカード?
何だそれ?
パーティーメンバーって書いてあるから、冒険を一緒にする仲間が書かれてるってことだよな。
この世界もパーティーとかあるんだな。
「このカードを持ってるってことの意味わかるわよね?」
「まさか……」
「そう!かつは私のパーティーメンバーであり、このパーティーのリーダーなの!」
「な、何だと!?」
急に外野がざわざわしだした。
どういうことだ!?
俺がパーティーメンバーに入ってるし、しかもリーダーになってるなんて意味が分からない。
でもこれで処刑されずに済むならミノルの作戦に乗ってやる。
「これは本当なのか、絶対かつ!」
「あー、ホントだよ。俺はミノルのパーティーメンバーでリーダーだ」
すると女警察官がみるみる顔色が悪くなって来ている。
「パーティーメンバーで、しかもリーダーのかつを殺すわけには行かないわよね」
「そうだね〜。それはいけないよね〜」
「う〜む……たしかにリーダーならばすぐに処罰は出来ないが……」
さっきまで判決を下そうとしていた裁判長が、ここに来て判決を出そうか悩み始める。
「ホントですか!」
やった!これで俺は殺されなくて済む!
ミノル達には後でお礼を言わないとな。
「裁判長、私は納得いきません!かつは極悪集団の黒の魔法使いと繋がってるかもしれないんですよ!?」
「たしかにそうだが……」
「だから俺は関わってないって言ってんだろ。それに黒いモンスターも消してないし、誤解なんだって」
「お前は黙ってろ!」
「っっ!」
怖っ!何でそこまでして俺を処刑したいんだ。
「おい!どう考えても処刑はなしだろ!」
「そーよ!そーよ!」
「無理やり殺そうとしてんじゃねえよ!」
外野の人も流石に変だと思ったのか、みんな揃って抗議し始めた。
いいぞ!やっぱりこの裁判は絶対おかしい。
「静粛に!静粛に!今は裁判中ですよ!」
「うるせぇージジイは黙ってろ!」
「誰がジジイじゃ!処刑にするぞ!」
何か収集つかなくなってきたな。
その騒ぎに乗じて逃げるかって、今俺男2人組に押さえられてるんだった。
「お黙りなさい!」
「「っっ!」」
金持ちのおばさんが一瞬で外野を黙らせた。
「ゴチャゴチャうるさい!外野は黙ってなさい!裁判長、あなたは判決を下すのが仕事でしょ?早くしなさい」
「………分かりました」
「は?嘘だろ。何だよそれ、完全におかしいだろ!」
やっぱりこうなるのかよ。
これで分かった、この金持ちなぜだが知らんが俺の事を完全に殺したがってる。
「そんなこと許されてると思ってるの!?パーティーメンバーなのよ!」
「ホントにいいの〜。よく考えたほうがいいんじゃない〜」
「黙りなさい、これ以上無駄な悪あがき不要よ。警備員!」
指をパチンと鳴らした瞬間警備員がミノルとリツを取り押さえた。
「ちょ!離しなさい!どこ触ってるの」
「捕まっちゃった〜」
「何でリツはそんな呑気なのよ!」
「ミノル、リツ!おい、2人を離せ!」
すると金持ちのおばさんは首を横に振った。
そして不敵な笑みを浮かべ何やら俺を押さえている男2人組に指示を出した。
その瞬間俺は台が丸に凹んでいる所に首を無理やり入れられ、首を上から固定された。
「まさかこれって……」
俺は嘘だと思いながら上を恐る恐る見た。
そしてそこには今にも落ちそうな銀色に輝く刃物が吊り下げられていた。
「これ処刑台かよ!」
「さあ、始めましょうか」
やだやだ!絶対やだ!
これってあれだろロープ離したら上からざっくり切り落とされるアレだろ。
ギロチンだ!
あれって少しは意識残るって聞いたことあるぞ!
「くそ、離せ!」
「あまり暴れないことをオススメするわよ。間違って落としちゃうかも」
その言葉を聞いた瞬間切り落とされた自分を想像してしまい顔が青ざめてくのが分かる。
「さあ!始めましょうか!今こそ罰する時」
立ち上がり天を見上げる様に手を横に広げ笑みを浮かべている。
あいつはかなりの権力を持ってるやつなのだろう。
先程の騒ぎが嘘みたいに静まり返っている。
このカオスな状況に皆突っ込めないのだ。
「そんなに俺を殺したいのかよ」
だったら何でこんな面倒くさいやり方をする。
正式に殺すため?
だったらもうちょっとマシな証拠を用意するはずだ。
もしかしたら殺したということを他の人に見せるのが目的?
いや、どっちでもいいか、どうせ死ぬんだから。
「それでは判決を下す!」
あーあ、こっちでもそこまで幸せな生活を送れなかったな。
「判決は――――」
せめて借金は返えしてあげたかったな。
そんな後悔を残しつつゆっくりと死神が俺の首に落ちて行き――――
「何やってるのお母様?」
その声でギリギリのところで警備員の手がピタリと止まった。
何だ?何が起きた。
「あなた……何でここにいるの?メイ」
「え……」
「誰?」
「分かんない~」
聞き慣れた名前そして声、俺は誰だかすぐに分かった。
「メイ……何でここに……それにお母様って」
「かつっち絶体絶命って感じだね」
「笑い事じゃねぇよ」
でも心の奥底では、安心した自分がいる。
「メイ何しに来たの?まさかそのゴミ虫と話をしに来ただけってことはないわよね」
「さすがお母様、これを」
するとメイは金持ちそうなおばさんに髪を渡した。
それを読んでいるうちに顔がどんどん引きつってきている。
なんかやばい内容なのか。
「これは本当なの」
「はい、約束を破ったらこれだと」
メイは指を首に当てて横に動かした。
死ぬって意味か?
いやここでは違う表現なのかも。
どっちにしろ何やら危機的状況なのだろう。
額から汗が出てるのが何よりの証拠だ。
「少々問題が生じました。ですけど気にしないで下さい」
「お母様!」
「あなたは下がっていなさい!」
くそ!なんの内容が書かれてたんだ。
「何がどうなってるのかイマイチ分からないけど、何か結構やばいことが起きたんじゃないの?」
ミノルは金持ちのおばさんが動揺してる隙を見逃さず、その事について言及する。
「部外者は引っ込んでなさい」
「あなたはどうしてそこまでするの?」
「罪人は罰するのが普通でしょう」
「裁判なんて今までやったことないのに、急にやるのは何か理由があるのかしら」
裁判をやった事が無い?
てことは今回が初めてってことか。
なるほど通りで裁判長に決定権が無いわけだ。
「裁判は最重要罪人を罰する時のみ行うものだからよ。あのゴミ虫は黒の魔法使いと言う危険思想を持った、極悪集団の仲間の可能性があるからこうやって裁判で裁くのよ。分かったらとっとと引っ込んでなさい」
「さっきからかつは黒の魔法使いの仲間じゃないと言ってるのが分からない?」
「耳が悪いのかしら引っ込んでろって言ってるのが分からないの?」
「罪のない人が、罰されのを止めるのが普通じゃないの」
かなりバチバチして来たな。
ミノルがここまでしてくれるのはありがたいけどこのままだとミノルも罰を受けてしまう。
「ミノル!もういい!分かったから」
「かつ、何言ってんのよ!諦めちゃ駄目よ!」
「どうしたの〜いきなり、弱気になって〜」
「これ以上皆に迷惑をかけるわけにはいかない。だから」
「かつ、それは違うわ。私達は好きでやってるの。それにかつは私のパーティーメンバーで、リーダー何だから死なせるわけには行かないの!」
「ミノル……でも!」
「かつっちを助ける方法があるよ」
俺達はその発言をしたメイに視線が集まった。
「本当か、メイ!」
「そうだよね、お母様」
「そんなもの――――!」
「お母様?」
「……………今回は特別中の特別よ。あなたには5億の借金があるようね」
「はい……」
「一時的に判決は見送るわ。その代わりこの1週間で借金1億ガルアを返しなさい。そしたら無罪にしてあげる」
「な!?1週間で1億!?無理だろ」
「そこで捕まってるミノルと協力して返しなさい。もし返せないなら、有罪で処刑よ」
たしかにこの状況でこの提案は魅力的だ。
でも厳しすぎないか。
「分かったわ。その条件飲むわ」
「ミノル!?」
「それじゃあ1週間後楽しみにしてるわ。行くわよメイ」
「はいお母様」
厳しすぎるけどここで断ったら処刑だししょうがないか。
俺は何とか処刑台から解放されて、キツい体勢だった体をほぐす。
救ってくれたメイに礼を言わないとな。
俺はお礼を言うためメイを呼び止めた。
「メイ!ありがとな!」
メイはそのまま笑顔でピースをした。
そしてそのままお母様らしき人と馬車みたいのに乗って行ってしまった。
「これより終了する!」
ガンっと木槌を鳴らし皆解散していった。
「かつ誰だったのあの子?」
「俺の大切な友達だ」




