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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十一章 八つの源魔石の行方
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その二十三 シアラルスからの帰還者

次の日、ムラキは改めて町の人々にこれからの事や現状の説明を行った。

外の世界は危険なことと日ごろから街の周りの警備や外から来る敵に対しての迎撃処置を検討中の事、そして奴隷の印を付けた物が居た場合は早急に伝える事、そして他の街には行かずすべての問題が終わるまでこの街に留まることなどを街の人々に告げた。

そして一番の問題である食糧の問題はここで作物を育てるかモンスターを討伐して食料にするかで検討していた。


「うーん、食料は何とかなるかもしれないが栄養が偏るなあ。やっぱり畑仕事が出来る奴に任せた方が良いか。まっこの街にはそんな奴いないから他の街から来た人に何とか手伝えるように頼んでみるか」

「かしこまりました、ムラキ様」


マナはムラキに対して一瞥するとそのまま部屋を出て行った。


「はあ、これが王の仕事か。まじめにやるとすごい大変だな。でももう逃げないって決めたしやるしかねえか」


———————————————————

デビは未だ眠りについているクレハの看病をしていた。

そのまま水に付けたタオルを優しくクレハの頭に乗せる。


「すまないのう。約束が遅くなった。本当はもっと早く会いたかったのじゃが、色々あってここに戻って来るのが最悪の形になってしまったのじゃ」


デビはクレハの髪を優しく撫でる。

クレハは足に包帯が巻かれておりそれはシンラが城に攻撃した時に崩れた瓦礫によってけがをした物だった。

デビは足を怪我してその場で倒れているクレアを救出して今に至っていた。

その時扉がノックされる。

それがミノルだと察知したデビはすぐに返事をする。

それを聞いてミノルは料理を手にして部屋の中に入って行った。


「まだ眠ってるのね」

「そうじゃな、足の他にも頭に強い衝撃を受けていたからのう。応急処置は済ましておるから後はクレの回復次第じゃ」

「心配よね。デビちゃんにとっては大切な人何でしょ?」

「うーんそうじゃのう。大切というかこやつは寂しがりなのじゃ。だから誰かが側に居てやらないと駄目なのじゃ」

「そっか、これデビちゃんのご飯ね。お腹空いてるでしょ。昨日から寝てないみたいだし」


ミノルは近くに料理を置く。

それに対してデビは目をキラキラとさせてつばを飲み込む。


「美味そうじゃのう!もしかしてリドルが作ってくれたのか?」

「ふふっそうよ。まあデビちゃんからしたら量が足らないかもしれないけど」

「別にいいのじゃ。あやつの料理は絶品じゃからのう。それにここは病室じゃしごちゃごちゃしすぎるのも悪いしのう」

「デビちゃんて本当に変わったわよね。大人っぽくなっちゃったし、何だか昔のデビちゃんが恋しいわ」

「妾は成長したのじゃ!王としてしっかりしなければならないからのう。それにお主も変わったぞ。耳と尻尾が無くなっておるのじゃ」

「ははっ確かに。デビちゃんが居ない間にも色々とあったからねえ」


ミノルはそう言って感慨にふける。

するとその時クレハの指がかすかに動いた。

その反応を見逃さなかったデビがすぐさまクレハの顔を覗き込む。


「クレ!妾が分かるか!クレ!」

「ん、んんん……デビ?」

「そうじゃ、妾じゃ!デビじゃぞ!」


デビの必死の呼びかけで徐々にクレハの意識が回復していく。

そして完全に目を開いた時大きく息を吸い込んで勢いよく起き上がった。


「デビちゃん!ようやく会えた……」

「そうじゃ!ようやく会えたのうクレハ!」


デビは嬉しさのあまり抱きつこうとするがクレハはその場で硬直してしまう。

そしてデビを人取り見渡して、驚いた顔で


「デビちゃんじゃない!」

「何を言っておるのじゃ。妾はデビじゃぞ。確かに多少ナイスバディにはなっておるが」

「私の知ってるデビちゃんはもっとちっちゃくて可愛らしくて、とにかくデビちゃんじゃない!」

「だから妾じゃと言っておるじゃろう!」


突然の状況に困惑しているミノルは恐る恐る二人の話の間に入る。


「あのークレさん?」

「いえ、私はクレハよ。クレはデビちゃんが私に使う愛称のような物で。あれ?どうしてその呼び方をあなたは知ってるの?」

「だから妾がデビなのじゃ!」

「それでもおかしいわ!そんな急成長するわけないでしょ!」

「色々あってデビちゃんは急成長したんですよ。彼女は本当にデビちゃん何です。その証拠にその呼び方も覚えてますし、それにクレハさんの事も城から救出したんですよ。そして目覚めるまでにずっと看病してくれていたんです」


その言葉を聞いてクレハは思わずはっとする。

自分の状況と直前まで自分の身に何が起きていたのかを頭の中で思い出し、現状をこの目で見る。

そして再びデビの方に視線を向ける。


「本当にデビちゃんなの?」


声を震わせて滲んだ瞳でデビに問う。


「また会うって約束したからのう。かなり遅くなってしまったけど」

「デビちゃん……デビちゃん!」


そして溢れ出る感情を止めることなくクレハはデビに抱き着いた。

そしてデビもクレハを優しく抱きしめる。


「本当に大きくなったのね。本当に見違えちゃった」

「大人の女になったじゃろ。お主の好みとは違くなってしまったが」

「いいの、デビちゃんに会えただけで私は十分だから」


二人の再会をミノルは黙って見守り続けた。


————————————————————

「えーっと確か他所の街から来た人の泊る宿はここら辺だったよな」


俺はミノルから貰った住所を頼りにキンメキラタウンの宿街に来ていた。

観光名所が多い街ではない為よどの数こそ少ないが広さは断トツの為、複数人が同じ部屋に泊まることも可能だった。

宿屋に泊る人などの配置はサザミとサラが決めている。

基本的には男女別に泊まっている、何かが起きても困るしそれが普通だけどむさ苦しい男しか止まっていない宿屋は行きたくはないな。


「ここの宿かな?」


俺は高級そうな宿の前で立ち止まる。

ここにはシアラルスの人々が泊っている。

当然この宿に泊まっているのは女のみだ。

ミノルの話によるとあいつらはこの宿に泊まっているはずだが、これ無断で中に入るわけには行かないよな。


「うーん、誰かに呼んでここまで来てもらうか」


俺はどうあいつらを呼んでこようか悩んでいると背後から突然抱きつかれる。


「うわっ!な、何だ!」

「ぜっちゃ~ん、ひさしぶり~元気そうでよかったよ~」


後ろから抱きついて来たのはリツだった。

後ろを振り向くとリツ以外にもマキノや魔法協会で働いていたルル達そしてサキトの姿があった。


「お久しぶりですね。昨日はかなり大変な状況で心配しましたよ」

「よう少年!君は相変わらず悪運が強いな」

「それをいうなら私達もだろ。ようかつ、無事で何よりだぜ」

「ちょっとー本当にここって安全なんですか!昨日から街が襲われ続けて私すっごく怖いんですけど!警備は本当に万全ですか!」

「マキノ、そんなに心配する事ないだろう。俺の経験上あいつらが居ればこの街は安全だ」


どうやらみんな無事で元気のようだ。

正直シアラルスが壊滅したと聞いた時は無理だと思ったけど、サザミ達のおかげだな。


「みんな無事でよかったよ。ミノルたちとはもう話したんだろ」

「そうだよ~みっちゃんから~色々と話は聞いたよ~」

「おいかつ、これからガイスと戦うのか?勝てるのかお前ら」

「まだ詳しいことは分からないんだ。これからみんなで作戦を練って行くつもりだ」

「俺が出来る事があったら何でも言えよ。情報屋としてはこの現状で活躍できるかは分からないが、精一杯やるつもりだぜ」

「私も何か出来る事がありましたら行ってくださいね。もう魔法協会は機能しなくなってしまいましたが」

「本当だぜ。あのガイスって王無茶苦茶だな。私達の大切な仕事場を奪う何て」

「まあ少年らがまたこの島を取り戻してくれたら、仕事に戻れるさ。そうだろ少年」


皆内心では不安でいっぱいなんだろうな。

ここはびしっと俺が安心させてやらないとな。


「大丈夫だ!昨日ムラキも言ってただろ、この街は俺達が守るよ。そしてこの島もまたいつも通りに戻るさ」

「かつさん……そうですよね。最近色々あって気持ちが沈んでいたみたいです。もちろんかつさん達が何とかしてくれるとは思ってましたよ」

「そうだよ~私達はぜっちゃんたちを信じてるから~そうだよね~サッちゃん」

「ああ、俺の経験上何も心配は要らないぜ。だが風の噂でこの街の外でまた何か起きてるらしいぞ。やっぱり島の外に行くのは今はやめた方が良いな」

「そうは言うけどよ。私達もずっとここに居るわけには行かない。食料や仕事もないし、どうやって生きて行けばいいんだよ」

「あーそうか、たしかにそうだな。食糧問題や仕事の問題もあるよな。でも今の環境じゃ満足に出来ないだろ」


この街で仕事をするにしても今は復興作業がメインだろうか。

街の復興に必要な材料も他の街から取り寄せることも出来ないし、今は自らの街でかき集めてはいるがそう何度も町が襲われたら復興も厳しいな。


「今の現状って相当厄介ですよね。私無職にはなりたくないんですけど。日ごろから無職に対して当たり強く言ってるので」

「無職にも優しくしてやれよ」

「かつさん王様はそう言った所も考えてくれてるんですが?」

「うーん、どうだろうな。俺はそう言った政治的なことには口を出してないし、関わってないから分からないとしか言えないな。まあでもあいつはやれば出来る奴だし、優秀な側近も付いてるから大丈夫だろ」

「俺は仕事よりもこれが何日続くのかが心配だぜ。何の面白みもない毎日を過ごし続けるのは退屈で死にそうだ」

「そうか、毎日新たな刺客が襲い掛かって来ると考えるとそれは刺激的じゃないか?」

「アカリ、怖いこと言うなよ」


その時リツが俺の方に歩み寄って来た。


「そういえば~私達これから~お茶会しようとしてたんだ~ぜっちゃんも来る~?」

「へ?お茶会?」


よく見てみるとリツやルルさんの手には食材が入った袋が握られていた。


「ついさっき買って来たんだけど、さすがセレブの街って言われるだけあるな。売ってる茶葉がどれも高級でこれだけでもかなり金が掛かったぜ」

「物価が高いですからね。このままだと資金もすぐにそこを尽きてしまいますよ」


そう言えばこの街は物価高いんだったな。

やっぱり仕事品とこれからの生活も出来ないよな。

一日に食う飯も満足に食えなくなるし、ムラキにこのことを言うべきだな。


「どうしたの~?」

「いや、何でもない。すまん、俺は一旦宿屋に帰って話し合わないといけないんだ。お茶会は今度参加するよ。仲間たちも連れてさ」

「そっか~それじゃあいつでも待ってるよ~」


俺はそう言ってみんなと別れて宿屋へと戻って行った。



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