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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第二十一章 八つの源魔石の行方
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その二十 裸の語り合い

「ムラキ様、住民の安全を確保の後無事に家に帰したよ。門の修理も粗方終わった」

「うむ、苦しゅうないぞサラ」


ムラキは一時的に王の城として使っている結婚式場で椅子にムラキがふんぞり返っていた。

すでに俺達は避難民と町の人々と協力して門を修理して、一日で起きた奇襲事件の復興を行った。

ザックとニュートが再び奇襲する前にも復興を行っていたが、それは城だった為一旦それを中止して門に集中したため城は未だにボロボロだ。

そして門の修理が終わった時には既に日が昇りつつあった。

その時ピンカがムラキを見て不満そうな顔をする。


「何をあれ、急に偉そうにして。前まで泣きながら逃げてたじゃない。ちょっと頑張ったからって調子乗りすぎじゃない」

「ムラキ様はムラキ様で色々あると思うよ。それに偉そうにしてるけど、顔は以前にも増して大人っぽくなったし」


そう言ってマイトが満足そうに頷く。

その時見回りを終えたサザミ達が帰って来る。


「安全確認完了だ。もう他に仲間の姿は見られない」

「がっはっは!城の外も見てみたが敵らしき姿は見られなかったぜ。完全に逃げたようだな」

「ですがあの人達は大丈夫なんですか?私、心配です」


あの人というのは恐らく奴隷として戦わらせた奴らのことを言ってるのだろう。

ちなみにそいつらは全てブライドが連れて行った。

どうやら奴隷の印を消す方法を模索中らしくその為に実際になった人たちを調べる事で解明を急いでるらしい。

人体実験はしないから安心しろとブライドは言っていたが大丈夫なのだろうか。


「今日は一日中働いたし魔力もそこを尽きてるだろう。敵がまだ来ないという確証も無い、復興はある程度終わったし今の内に体を休めよう。それでどうだ?」


ガルアの提案にみんなそれぞれ顔を合わせる。

そして初めにピンカが噴き出し、それに続いて笑みを見せる。


「な、何で笑ってるんだ」

「笑いもするわよ。あんたどんだけビビってんのよ」

「怒られないように顔色を窺って話してるみたいだ。昔のガルア様からしたら考えられないね」

「色々あったんだ、昔のようにはいかないだろう」

「確かにそれはそうだ。だが現時点では協力すると言ったのにそう一線を引かれてはやりづらさはある」

「ガルア様……いつも通り……して」

「だってよ。俺も遠慮する必要はねえと思うぜ」

「そうか、それならいつも俺で行かせてもらう。早急に休みを取れ。じゃねえといざと言う時戦えないしな」

「偉そうにするとそれはそれでムカつくわね」

「ピンカ……」


その時ミノルが俺の肩を叩いて来る。


「ん?どうしたんだミノル」

「どうしたじゃないわよ。さっきからムラキがすごいこっちを見て来てしつこいんだけど」

「ああ、そりゃあお前のおかげでムラキは勇気を振り絞ったしな。それに適当に流しとけばいいじゃねえか」

「そう言う訳にもいかないでしょ。また泣かれてどっかいかれたら面倒だし」

「おーい、ミノル―!」


その時ムラキがこちらにまっすぐ走って来る。


「噂をすればだな」

「はあ、全くもう」

「おい、ミノル!俺はここに宣言しよう。さらに立派な王となり必ず妃として迎えに行くとな」

「おい、ちょっと待て。それはさすがに聞き捨てならない」

「またお前か絶対かつ。いつも俺の邪魔をしやがって。さっきも偉そうなこと言ってミノルは譲らんぞ!」

「そもそもなあ!ミノルは俺の……」

「ん?俺の何だよ。お前らはただの仲間だろ!」

「お、俺の彼女だ!!」


言ってしまった。

ていうかめちゃくちゃはずいなこれ。

するとミノルも恥ずかしそうに顔を染めて俯いている。

ムラキは口を開けたままミノルの方を見ると、その態度を見て何かを感じ取ったのかそのまま俺の方を見る。


「こ、この泥棒猫!」

「何がだよ!」

「俺は絶対に認めないからなあ!」


そう言ってムラキがそのまま走り出してしまう。


「かつさん、少し大人げないんじゃないですか。子供相手にムキになるのは」

「う、うるせえな」

「おい、ミノルいつまで恥ずかしがっておるのじゃ。恋人らしくもっと堂々とするのじゃ」

「もう、分かったから顔を近づけないで!」


ミノルは恥ずかしそうにデビの顔を遠ざける。


「おい、そこの能天気連中。勝手にそこで話をしてるな」

「能天気って、何か重要な話でもしてたのか」

「これから休憩を取る。寝る場所はここだ」

「ここで!宿屋とかないのか?」

「宿屋は避難民が使ってるから、俺達は使えないんだ」

「そうよ、文句ばっか言ってないで受け入れなさい。私だって堅い床に寝るのは嫌なのよ!」

「風呂に入るぞ!!」


突然ブライドが中に入って来るなりそんなことを言って来た。


「びっくりしたな。いきなり何を言ってるんだ」

「お前ら一日中戦いっぱなしで体中汚れてるだろ。そんな汚い体で寝るつもりか!不潔だぞ!」

「そうよ、一日の疲れはお風呂に入って流す物。それをせずに寝ることは疲れを溜めるって言う事なの。それはとっても良くないわ」

「という事で風呂入るぞ」


またそのことを言って俺達を強引に風呂に入れようとする。

それをサザミが抵抗する。


「おい、ブライド何を言っている。そもそも風呂に入れる場所がないはずだ」

「宿屋があるだろ。ここは高級そうな建物も立ち並んでるし、風呂も大層広いんだろ。露天風呂とか公共の風呂屋はないのか。それがあるんだったらいいが」

「というか俺もここで寝るのか!」

「ムラキ様には専用の宿屋を用意してあるよ。ん?そう言えばムラキ様の宿屋はかなりの広さを持っていたね」

「本当か、サラ!ならそこで風呂に入るぞ!ムラキ、邪魔させてもらうぞ」

「なぜお前が勝手に決める!というか様を付けろ!」


ブライドにとっては王とか関係なのかもしれないな。

そもそもムラキが子供だからというのもあるが。


「でも私お風呂入りたいかも。体汗でべとべとだし、だいぶ汚れちゃってるからね。アイラもお風呂に入りたいでしょ」

「私はほとんど戦えてないし、汚れは少ないけど入りたいかも」

「確かにそうですね!私達は女の子ですし、肌のケアは大切ですよ。ねっお姉さま」

「そうね」

「よし、満場一致ってことで!それじゃあお風呂にレッツゴー!」


何故かテンションを高めなブライドを先頭にして宿屋に向かう事となった。

まあ俺も体はべとべとで気持ち悪かったしいい機会か。


——————————————————

高級宿屋、大浴場


「うおーすげえー!」


そこには大人数が入っても大丈夫な大浴場が広がっていた。

流石高級宿屋、風呂のデカさも一級品だな。


「懐かしい。お城のお風呂もこんな感じだったっけ」

「確かに、俺も広々とした風呂を使っていたからいつも寂しさを感じていたよ。こう言った風呂はやっぱりみんなで入るべきだね」


そういやこいつらは城住みか。

俺とは違ってこれが日常だったんだな。

少し差を感じてしまう。

その時ブライドが俺の肩を叩いて来る。


「やっぱり男は裸で語り合ってこそ友情が生まれるもんだ。背中流してやろうか」

「おーいいな!俺も流してくれよ!」

「がっはっは!なら俺が豪快に流してやろう!」

「くだらないな」

「そんなこと言うなよ。こう言った機会はめったにないだろう」

「イナミ、君の背中を洗ってあげようか」

「マイト!そんなわざわざいいよ」

「さすがは大浴場ですね。広さが他とは違います」

「なるほど、これが皆で風呂に入る感覚か。悪くないな」

「何達観してんだよ。ガルア、ほら背中向けろよ。流してやるから」


俺はガルアをシャワーの近くに座らせると泡を立てる。


「まさかお前とこうして一緒に風呂に入るとは思わなかったぜ。初めはまだ壁があったもんな」

「王としての立場もあったしな。それにあの時はまだ人には話せない秘密を抱えてたし、お前がこの世界の奴じゃないと薄々思っていたからな」

「なるほどなあ、たしかにお前の警戒ぶりと執念はすさまじかったよな。腕切断されたし」

「悪かったよ。あの時は本気で願ってたんだ。お父様が俺の願いを叶えてくれることを。まっもうそれも敵わねえけどな」


俺は洗った背中をシャワーで流す。

すると俺の背中も洗うと言って立ち位置を変える。

ガルアの泡立った手が俺の背中を洗ってくれる。

その時騒がしい声が聞こえてきた。


「背中洗ってやるって言ってんだろ!」

「必要ないって言っている!」

「良いぞガイ!そいつを押さえつけろ!俺が洗ってやるぜ!」

「ブライド!いくらお前が強くても俺は戦うぞ!」

「相変わらずの騒がしさだね」

「そうですね。まあこうなることは予想は出来ましたが」

「でもこれはこれで俺は好きだな」


すでにマイトとイナミそしてリドルはお風呂に浸かり暴れている奴らを傍観する。


「かつ、変わったな。昔のお前とは違って体に色々と苦労の後が残ってる」

「まあ色々あったしな。それにまだこれからもあるし」

「俺は正直言うと最初は利用すると目的でお前に接触した。だがかつは本気で俺を友達だと思ってくれた。ありがとな」

「何言ってんだよ。俺は最初から友達だと思ってたし、感謝される必要はねえよ」

「それがお前か。物のついでに言っておくが妹に溺愛されていたお前を俺は嫌いだった」

「あーそれは何か薄々気づいていた」


俺はお互い顔を見合わせて笑いあった。

そして洗い終えたのか泡を水で流す。


「たまにはこういうのもいいもんだな」

「ああ、そうだな」




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