その六 謝罪
「お久しぶりです。どうですか、証拠は集まりましたか」
ここは私達が秘密を話す場所。
人に聞かれたくない時や情報交換をする時に集まる。
「安心しろ、もうすでに証拠は揃った。それよりそっちはどうだ」
「まあこっちは特に問題ありませんが、かつが少しこちらを疑い始めてますね」
やっぱりか、想定の範囲内だ。
「まあしょうがない。こんだけ尋問をしているのに、全く進展しないのだから疑うのも無理はない」
「ホント全く勘弁してくださいよ。俺尋問したことないんですから、いつもヒヤヒヤですよ」
そう言うながらもあまり嫌そうな顔を見せていない所尋問が嫌いというわけではないのか。
「大丈夫だ。もう尋問をする必要はない。明日、全てを終わらせる」
「分かりました。失敗できませんからね。こっちはあの人のお陰で働けてるみたいなもんですし」
「ああ……そうだな」
準備はもう出来ている。
あとは当日を待つだけだ。
その後ふたりはそれぞれやることを終わらせるため暗闇に消えて行った。
―――――――――――――
「じ、尋問無しってどういうことですか!?」
「それは知らん。とりあえず今日は無しだ」
そう言ってカチャカチャと鎧を鳴らしながら警備員は持ち場に戻って行った。
「無しってマジかよ……」
最近は特に尋問が雑になってると思ったら遂にやらないというところまで来てしまった。
「これ俺出られないぞ。やっぱり脱出したほうがいいんじゃ」
いやでも知らない罪を被ったまま逃げるのはなんか嫌だな。
ちゃんと無実を証明してからじゃないと。
「て、それができないから苦労してるんだよなぁ」
いっその事嘘発見器を使って無理やり無実を証明するか。
「そしたら先ずこの檻をどうにかしないとな。まあこの檻を吹き飛ばすほどの威力を持った魔法持ってないんだけどな」
いや、待てよあるじゃねえか!
飛びっきりの威力の高い魔法が!
インパクトならこんな檻吹き飛ばせる!
「よし!それなら善は急げだ。インパ―――――」
「かつっち来たよー!」
「っっ!?びっくりした……いきなり大声出して来るなよ」
こいつのいきなり登場して来るのはまだあんまり慣れないな。
ていうか、こいつが居るせいでインパクト使えないじゃねえか。
「そんなことより遊ぼ!」
「そ、そうだな」
え、何だこのいつもと変わらない会話は。
昨日あんなことがあったのに……もしかして無かった事にしてるのか?
いや、たしかに気まずい空気にならないためにもなかったことにするのはいいと思うけど、ホントにいいのか。
いや駄目だろ、メイとは数日間の出会いだけど一緒に遊んだ仲だ。
お互い気持ちがスッキリしないままじゃ後味悪い。
それに本にも書いてあった、親しき中にも礼儀あり、こいつとは友達?かは分からないが相手が傷つくようなことしてしまった時は謝ると教えられた。
「どうしたのぼーっとして?」
メイには悪いがちゃんとけじめをつけなきゃ。
「メイ……その……あの……昨日はごめん!興奮してて我を忘れてたとはいえ酷いことをしてしまった。俺はサイテーなやつだ、お前は気にしてないとか言うかもしれないでも!それじゃあ俺の気が晴れない。だから、殴りたいなら殴っていいし、怒声を浴びせてもいいし、お前の気が済むまで何してもいい。ほんとにごめん!」
俺は深々と下げた頭はそのままに目だけチラッと上を向いた。
するとメイはキョトンとした顔をしていた。
「えっと……なんで何も喋らないんだ。何?もしかして放置のバツか。それはちょっと辛いんだけど。いや辛いからバツなのか」
「かつっちさっきから何言ってるの?」
未だにキョトンとしているメイを見て流石の俺も違和感には気付いた。
「え?もしかしてホントに忘れたのか!?」
「いや覚えてるよ。でも何で謝るのかなっと思って」
「そりゃお前を傷つける行為をしちゃったから」
「私全然平気だよ!まあちょっとは驚いたけど、あれは私が負けたのがいけないんだし次は絶対勝つよ!」
そう言って笑顔で勝つ宣言をしてきた。
こいつホントに気にしてないのか。
いや多分気を使ってんだ。
俺に責任を感じさせないために。
何やってんだ俺は、逆にあいつに助けられて男として情けない。
「それにね、私かつっちだったら見られても平気だし」
「え?それってどう言う―――」
「だってかつっち完全に草食系じゃん。だからこういう展開になっても襲って来ないだろうなと思って」
「な!?それは褒められてるのか、貶されてるのかどっちだ」
「どっちもかな!」
「どっちもって……」
まああいつもそう言ってんだし俺がうだうだ言っててもしょうがないか。
「分かった。じゃあせめて今日はお前の遊びにとことん付き合ってやる!」
「やったー!ついにかつっちが自分から遊んでくれたー!」
こいつはほんとに純粋だな。
「でも今日は他に用事があるから遊べないのだ。あーあせっかくかつっちが遊びに誘ってくれたのになー」
「大丈夫だろ。また明日もあるんだから」
「そうだね。じゃあまた明日!じゃあねかつっち」
そう言って元気よく手を振っているメイを見ながら俺も手を振り返した。
ちょっとだけこの生活も楽しいかもな。
「また明日か……もう少しだけここにいてもいいかもな」
俺はそのまま眠りについた。
――――――――――
「おいかつおきろ!」
ん?もう朝か、結構寝ちまったな。
「ほら早く立て!」
はいはい分かってますよ。
「ん、んんん。ふわぁ〜……」
俺は背伸びをして、眠りから覚める。
するとなにも言わずにいきなり牢屋から出されて、前に進むように言われる。
「ほら早く進め」
その言葉通り急かすように後ろから押される。
何だ尋問にしては早くないか。
寝起きで朦朧とする意識のなか押されながらも前に進んでいく。
「ほら着いたぞ」
尋問部屋にしてはちょっと長く歩いた気がするけどな。
すると急に目に光が差し込んだ。
「うわ!?まぶし!」
俺はたまらず手で目を隠した。
「これより絶対かつの裁判を行う!」
「え?」




