プロローグ 姉だろ?
「はあ、はあ、はあ……みんなー生きてるかー!」
何処かも分からない場所で俺達はその場で横たわっていた。
俺の掛け声に反応する様に倒れていた人たちが起き上がって行く。
「ギリギリな……」
「もうブライド、無茶しすぎよ。死ぬかと思ったじゃない」
「ガルア、お前も——————」
「おい、何してんだお前!」
何だ、何か騒がしいな。
ピンカとハイト?
何で口論してるんだ。
俺は何とか体を叩きあげて二人の元に向かう。
「離しなさいよ!あんたには関係ないでしょ!」
「テレポートでどこ行く気だ!まさかシアラルスに戻るとか言うんじゃねだろうな!」
「うるさいわね!イナミを助けに行くに決まってるでしょ!」
「馬鹿かお前!一人で言っても死にに行くだけだぞ!」
「おいハイト、一旦落ち着け。それとピンカも——————」
「弟を置いて逃げる姉がどこに居るのよ!」
「落ち着け……え?」
「「えええええええー!!?」」
今こいつイナミの事弟って言ったか。
するとピンカは興奮気味に話し始めた。
「思い出したの。私はイナミの姉でそして母親はシンラ様よ」
「シンラ様ってお前らの王だったよな。マジかよ、シンラはその事知ってたのか?」
「王は記憶を失ってはいない様子だった。恐らく分かっていたんだろうな。分かったうえでピンカとイナミを自分の十二魔導士として側に置いたんだ」
「だから私は助けに行くの。一人で構わないわ。もしイナミが死んだら、私も死ぬ!」
その瞬間、ピンカは魔法陣を展開させる。
俺はとっさにピンカの腕を掴んでそれを阻止した。
「何すんのよ、かつ!離して!」
「それは出来ない。今から死にに行くと言ってるやつを大人しく行かせられない」
「何なんのよ一体!あんたに関係ないでしょ!」
「関係ないわけないだろ!俺達仲間なんだから!」
「っ!な、仲間って……」
「行くなら俺も行く。イナミを放っておけない」
「っ!い、いいわよこれは私の問題だから。あんたが付いて来ても邪魔なだけだし」
「お前じゃなくて俺達の問題だ。そうだろハイト」
するとハイトは諦めたようにため息を吐く。
「仕方ねえな。俺も助けに行くよ」
「お、お節介なのよ!あんたたちの力何てなくたって私一人で……分かったわよ。そんなに行きたいのなら連れて行ってあげてもいいわよ」
「相変わらず素直じゃないなあ。そこは普通にありがとうっていたっ!何で殴るんだよ」
「ムカつくから」
「ああ、そうかよ。分かりやすい理由ありがとう」
するとガルアが突然手を上げる。
それを見て俺達の視線はガルアに集まった。
「盛り上がってるところ悪いがそれはやめた方が良いと思う。言っても意味がない」
「ガルア!そもそもあんた敵でしょ!寝返ったのか知らないけどあんたの言う事なんて聞くと思う!」
「これはお前たちの為に言ってるんだ。本来あの状況でこうして五体満足で逃げれた方が奇跡だ。それに行ったところでもうイナミはっ!」
「それ以上言ったら殺す」
ガルアに向けられた明らかな殺意はピンカの怒りを表していた。
だがガルアは一切引くことなく言葉を発する。
「それでも俺はお前らを行かせない」
「このっ!」
「俺も賛成だ」
ブライドが手を上げるとクリシナが体を支えてピンカの元に近づく。
「お前ら自らの命をどぶに捨てるつもりか。良いから大人しくしてろ」
「あんた、イナミを助けるのはどぶに命を捨てる行為って言いたいの」
「そう言う事だ」
「話にならない!行くわよ、元々こいつらは関係ないし命令される筋合いも無い」
「すべきことが違うんじゃねえのかって言ってるんだよ」
「何ですって?」
「そいつが自力でテレポートをしてその場からすでに逃げていると思え、じゃないとそいつの生存率はゼロに等しい。分かったら大人しくしてろ」
「そんなの分かんないでしょ!今も隠れてるかもしれないし——————」
「信じてやれって言ってんだよ!姉なんだろ?だったら信じて待ってろ」
「……くっ!」
ピンカは近くにあった壁に思いっきり拳をぶつける。
そしてもう魔法陣を展開しようとはしなくなった。
「さてと、そろそろ本題に入りましょうか。ねえ、ブライド」
「そうだな、正直言うと今の状況はよろしくない。ていうかピンチだ、絶賛な。だからこそ提案がある」
「なんだ?」
「俺達と手を組まないか?」




