その十五 もう一人の協力者
ハイトが出て行ってからすぐの事———————
「行っちまったな。ハイトの奴やけに張り切ってたな。もしかしてガルアにいいとこ見せたかったのかもな」
「あいつはそう言う奴じゃない。おそらく自分も活躍できると思ったからやる気を出してんだろ。そんなことよりも集まった奴らが逃げ出したら決行の合図だ。その間に出来るだけガイスの部屋には誰にも入ってほしくない」
「入ってほしくないってここには普通の人はこれないだろ?あっもしかしてミレイの事を言ってるのか?」
その言葉にガルアは頷いた。
「ミレイは今ではガイスの右腕として活躍している。何かあれば即座にガイスの元に報告しに行くだろう」
「ガイスの右腕ってあいつはガルアを裏切ったのか?」
「俺がそうしてくれって言ったんだ。放っておくと反抗しかねないからな」
「それなら……仲間に出来る……」
突然ツキノがそんなことを言い出した。
あんまり喋らなかったから急に喋るとビックリするな。
「仲間か、たしかにあいつはガルアに対して異常な忠誠心というかなんというか、とにかくガルアの言う事は何でも聞きそうだしな。そこのところどうなんだ?」
「確かにミレイは俺に対して忠誠心を見せている。そうだな、それが一番かもしれない」
「よし、それなら俺がミレイを見つけて説得してみるよ。お前らは作戦が始まったらすぐに行動してくれ。俺が居なかったとしてもな」
「え……それは出来ない……」
俺の言葉を聞いてツキノは不安そうにこちらを見る。
まあ普通に考えてせっかく立てた作戦を正確に決行できないのは不安だろう。
ツキノは強いが相手はそのはるか上を行く、そんな相手に対して作戦通りにいかないのはさらなる失敗を招くだろう。
俺はツキノを不安にさせないように優しく肩に手を置く。
「大丈夫だ、必ず戻って来る。それまではガルアの言う事を聞いてくれ。ガルア、ツキノの事を頼んだぞ」
「それは出来ないな」
「え?どうしてだよ」
「ミレイは俺が説得する。お前らはここに残れ」
ガルアはそう言うとこの部屋から出て行こうとする。
その後ろ姿を思わず呼び止めてしまう。
「ちょっと待てよ、お前は今回の計画のかなめだろ。俺が行くよ」
「駄目だ、それを言うならお前らが居てくれた方が計画を引き延ばせる。俺が居ない間は任せたぞ。それにお前がミレイを説得しに行ったところで話がこじれるだけだ。ここは本人が言った方が良いだろう」
「まあ、あいつと会話して上手い事言った事なんてほとんどないけどさ。分かったよ、それなら早く来てくれよ。トドメはお前がするんだからさ」
「分かってる、それじゃあ任せたぞお前ら」
ガルアはそう言い残して扉を出て行ってしまった。
結局残されたのは俺とツキノだけか。
するとツキノが俺の腕を掴んでくる。
「ツキノ?どうした」
「少し……こうしてたい……」
ツキノの体は震えていた。
やはり今回の作戦で不安な部分が多いのだろうか。
「昔のこと……思い出した……」
「っ!昔の事を?」
まだこの島に来る前の事か。
みんなそれぞれの人生があるんだよな。
「ここに来る前……私の両親は……殺された……」
「っ!そうなのか?」
「泥棒……入られて……そいつが殺した……私は隠れた……怖くて逃げた……そしたら誰も居なくなってた……」
「……それは、辛かったな」
今のツキノにどんな言葉をかけてやればいいか分からなかった。
この島にいる人達は全員が辛い過去を持っている、それはツキノも同じなのか。
「施設に送られて……人形を持ってて……でも取られちゃって……一人ぼっちのまま……ずっと寂しかった……その後知らない人が来て……私を連れ去った……」
つまり施設に預けられたツキノはその施設内でも孤立してたのか。
それでこの島の研究者たちがツキノに目をつけて金を払ったのかツキノを引き渡したのか。
親が居なくなった子供が誰に受け取られようが騒ぎになることも無いだろう。
正統な親の元に行ったと考えるのが妥当だろうな。
「この島に来てからも……一人だった……苦しくても逃げられなかった……研究者が殺されて自由になって……新しく友達や家族が出来てもまた居なくなってしまった……あの日の戦争を今でも許せない……」
戦争?
「それでまた一人ぼっちになった時……もうずっと一人だと思ってた時……風間と出会った……」
「っ!風間か……」
風間翔太、俺がこの世で嫌いな奴の一人だ。
あいつは散々俺にひどい事をして来たくせに手紙一つだけでそれらの事を解決させようとして来た。
卑怯でずるがしこい奴だ、俺は今でもあいつの事を許そうとは思えない。
「分かってる……かつは風間が嫌い……でも私にとっては新しい拠り所だった……でもそれを自分の手で壊した……私はもうずっと一人ぼっち……それが私の人生だと思ってた……だけど今度はかつが手を差し伸べてくれた……」
「それは違うよ。ツキノ自身が選んだことだ」
「それでも……救われた……だからもう失いたくない……一人ぼっちにはなりたくない……命を捨てる覚悟はとうに出来てた……でもやっぱり怖い……」
「ツキノ……」
「かつ……生きたいの……もっとずっとみんなと居たい……だから死ぬつもりなんてない……生きるつもりで戦う……それが私の戦う意味だから……」
「ああ、一緒に帰ろう。この戦いは帰るまでが作戦だからな」
「うん……」
言いたい事をいえて覚悟が決まったんだろう。
先程まで不安に押しつぶされそうだったツキノは今は自身に溢れている。
この作戦は百パーセント成功する、その確信はあるが何だろうこの言い表せないような不気味な予感は。
このまま上手く行くのか、そう頭の片隅で思ってしまっている。
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ツキノとかつは心配は要らないだろう。
咄嗟の判断には優れている、なにかトラブルがあれば即座に対応できるだろう。
だが、それは作戦の成功とは直結しない、俺が居なければ百パーセントの成功が実現できなくなる。
その為にも一刻も早くミレイを見つけなければ。
「ミレイどこに居る話があるんだ!」
城の中を徘徊しながらミレイの名前を呼ぶ。
いつもならこれですぐに駆け付けて来る。
どんな所にいようがすぐに現われるはずだが今日に限って中々姿を現さない。
もしかして地下の島の人達が集められてる場所に居るのか。
ガイスに最後の確認をしろと命令されている可能性はあるな。
そうなると城には今はいないか、なら相談室から地下に向かうか。
早速そこに向かおうとしようとした時、あることを思い出す。
そう言えばハイトもそこに向かっているんだったな、もしかしてミレイと鉢合わせになっている?
「そうなっているとまずいな。先程の会話の流れからハイトがかつ側の人間だとは思ってないだろうし、こじれそうだ」
もしそうなったら俺が途中で間に入るしかないか。
暴れられてガイスにでも見つかったら元も子もないからな。
その時、ちょうどハイトが相談室に入って行くのが見えた。
「ん?ハイトか、まずいな。もしかしたらミレイも居るかもしれない、一応様子だけでも見て……その必要はなさそうだな」
城の出口で警備達と話をしていた。
外に居たから俺の声が届かなかったのか。
おそらく仲間として志願してくる人たちが来てないかの最終確認をしていたんだな。
俺はすぐさまミレイの元に向かう、あそこに行かれると困るからな。
「ミレイ!ちょっといいか!」
「っ!ガルア様!それじゃあ、後は頼んだぞ」
ミレイは警備隊に命令をしてからこちらに駆け込んでくる。
「申し訳ありません、他に志願してくるものが居ないか確認をしていたので呼んでいたのに気づきませんでした。私はガルア様の護衛失格ですね」
「いいんだ、ご苦労だったな。少し話をしないか」
「ああ、そうしたいのも山々なのですが、ガイス様からの命で早急にご報告をしなければ行けなくて」
「その必要はない、俺から教えよう。お前はもう休んだ方が良い」
「お心遣い感謝いたします。ですがこれは私の仕事なので、わざわざガルア様の手を和ずらせるわけには」
「ミレイ、俺の言う事を聞け」
中々話を聞かないミレイに対して俺は少し強引に出る。
流石のミレイも気遣いで言ったわけでは無いと気付いたのか真剣な表情になる。
「話があると言ってましたね」
「ああ、話が早くて助かるよ。あっちで話そうか、なるべく人に聞かれたくないんだ」
ミレイは何も言わずに俺の後ろをついて行った。




