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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第四章 地獄の一週間
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その五 野球拳

「おはよう絶対かつ」

「おはようございます。今日もまた無駄な尋問やるんですね」


正直もう帰りたいんだけど。


「無駄って言うな!俺たちだって必死にやってんだぞ」

「必死にやってたって進まなきゃ意味ないでしょ」


はぁ……俺は一体何してんだろ。

こんなの早く終わらせて牢屋に戻ってあいつと……あれ?なんで今俺あいつと遊びたいって思ったんだ。

いやいやそれはおかしいだろ、あいつにはいつも振り回されてるし、あいつと遊ぶんだったら尋問受けたほうがマシって思ってたはずだ。


「そうだ、多分疲れてるんだ俺。昨日は色々あったしなうん、そうに違いない」

「何ブツブツ言ってんだお前?俺の話ちゃんと聞いてたか」

「え、あ、聞いてませんでした」


そう言うと呆れたような顔で俺を見てきた。

しょうがないだろ考え事してたんだから。


「お前さ、自分が黒の魔法使いと繋がっているって疑われてる自覚あるのか」

「自覚って…俺別に繋がってませんし」


ていうか早くその証明をしてくれよ。

いつまでここに居なきゃいけないんだよ。


「分かった。それじゃあもう終わりだ。もう帰っていいぞ」

「え?もう終わり」


ちょっと待て冗談じゃないぞ!

こんなに長いこと居るのに何でいつもいつもちょっとした話だけど終わるんだ!


「これは流石に終わるの早すぎませんか。適当に話して終わりで俺について何も質問しないで終わって、これじゃあまるで俺の事をここから出したくないみたい……だ」


何かおかしいな。

何で俺はこんな所にいる。

それはこの人が確信をつく質問しないからだ。

だったら何でしない。

もしかしたら俺をここから出したくない、もしくは質問できない理由があるのか。


「っっ!かつ分かった!そうだな流石に早く終わり過ぎたな。それじゃあもうちょっとやるか」

「いえもう大丈夫です。あれさえ出してくれれば」


そう俺が答えを言えばいいことなんだ。

これですべて分かるはずだ。


「あ、あれって?」

「誤魔化さないでください。嘘発見器ですよ。メットさんが持ってるでしょ」

「………分かった。メット!」


メットの方に向かって人差し指を2回動かした。

こっちによこせって指示したのか。


「……すみません。ただいま故障中でして現在嘘発見器が使えないんですよ」

「え!?」

「そ、そうなのかメット!だったら仕方ないな。お前の証言が正しいかわからない以上尋問は続けられないな」


やっぱりおかしい。

普通尋問をするにあたって、相手の証言の嘘が本当か分かるためにも嘘発見器は最初から準備しとくはずだ。

しかも故障中だったら予め直しておくのも普通だろ。

もしくは予備を用意するとか、でもそれを全くせず今日も無駄話で終わった。


「これ早めに脱出したほうがいいかもな」


もしかしたら一生出られないかもしれない。


「かつっちお帰りー。遊びに来たぞ」

「こいついたんだったー」


これじゃあ脱出できないじゃんか。


「どうしたのうずくまって?何なに?もしかしてなんかいたの。虫とかもしかしてモンスターの赤ちゃんとか!?」


はあ……こいついつも元気だな。

こっちは借金背負ったり、疑われてたりで精神ズタボロだって言うのに。


「羨ましい」

「へ?」


しまった!

声に出してたか。

結構ため息混じりの声なのに聞こえたのか。


「ねーねー、私のどこが羨ましいの?」

「え、いや、別に気にしなくても」

「いいから教えて!」


何だこいつ、何でこんなに喰い付いてくるんだ。

まあ、言い出しっぺは俺だしちゃんと答えるか。


「お前の元気なところが羨ましいって思った」

「元気なところ?私そんなに元気見える」

「誰がどう見ても元気だろ。こっちが疲れるくらいに」

「そうか……」


何だこいつなんかいきなり元気がなくなった気がするな。


「どうした、俺的には褒めたつもりなんだけど」

「ううん!何でもなーい何でもなーいよ!そんな事より遊ぼう!」


俺の気のせいかな。


「で、今日は何するんだ」

「スゴロクなのだ!」

「スゴロク!?ちょっと待て、流石に2人でスゴロクはちょっとつまらなくないか」

「だいじょーぶ!その分マスは少なくしてるから」


ホントだ。

マスは2人用に結構少なくなってる。

これなら5分くらいで終わるだろう。


「それじゃあジャンケンで先行決めるか」

「いいよ!それじゃあ行くよ」

「「最初はグー!ジャンケン!ポン!」」


俺が出した手はパー、メイの方は……


「グッチョッパで、私の勝ち〜」

「ちょっっっと待て!流石にそれはなしだろ」

「えー別にいいじゃん。かつっちはたかがジャンケンでムキになり過ぎ」


たかがジャンケン?

こいつジャンケンをバカにしたな。


「ふふふ、ふふふふ、ふはははははは!!」

「どうしたのかつっち!?頭おかしくなっちゃったの?ネジ取れちゃった?あ、それは元々か」

「取れてねぇよ!メイお前はジャンケンをなめすぎだ」

「ジャンケン何て舐めないよ。汚いし」

「その舐めるじゃねえよ!そうじゃなくて下に見てるってことつまりジャンケンなんて本気でやんなくてもいいって思ってることだ」


こいつはジャンケンをなめている。

だったら俺が思い知らせてやる、ジャンケンの恐怖を。


「分かったよ。メイ今回はスゴロク無しだ。今日は俺が遊ぶものを用意する」

「えー!まあかつっちと遊べるんだったら何でもいいか」

「言ったな!後悔するなよ!今回やるゲームはジャンケンの上位互換いや、最上位互換の野球拳で勝負じゃぁぁぁい!」


あまりの興奮と野球拳という言葉に流石のメイもちょっと引き気味だ。


「ええええ!?ちょ、ちょっと待って、それってあれでしょ、踊って歌ってやるやつでしょ」

「そんなルール知らん!野球拳のルールはただ1つ負けたら脱ぐ、以上!」

「すっごい完結!じゃなくて、本気でやるの」

「やるに決まってんだろ」


ジャンケンは負けたら終わりのデスゲーム!

その戦いにこいつは禁断のグッチョッパを使いやがった。

それは許されざることだ。

だから野球拳で思い知らせてやる、ジャンケンの怖さを。


「わ、分かったよ。勝てば脱がなくていいしね。私ジャンケン結構強いんだよ」

「決まりだな。グー、チョキ、パー以外は出すなよ」

「分かってるよ。私だって真面目に出来るんだからね」

「よしそれじゃあ始めるぞ」


まずは小手調べだ。


「「やーきゅうーすーるなーらーこーいうーぐーあいーに!アウト!セーフ!よっよいーのよい!」」


俺が出した手は、パーだ、メイは……


「グー負けた…」

「まずは1勝だな。ほら早く脱げ」

「分かってるよ。まあまだ1回出しこれからだよ!」


そう言って胸元のリボンを取って投げ捨てた。

まあ最初はそこを行くだろうな。


「それじゃあ2回戦やるぞ」

「来い!」

「「やーきゅうーすーるなーらーこーいうーぐーあいーに!アウト!セーフ!よっよいーのよい!」」


俺はグー、あいつは……


「チョキ……負け……」

「また俺の勝ちだな。それじゃあはよ脱げ」

「わ、分かってる!」


そう言ってメイは、ブーツをすっと脱ぎ同じように投げ捨てた。

まだ余裕だな、そりゃそうかまだブーツももう一足あるし、上着もあるからなじゃあそこまで飛ばすか。


「よっよいーのよい!よっよいーのよい!よっよいーのよい!」

「はい俺の勝ちー」

「何で!何で勝てないのー!」


こいつ自分の弱点気付いてないのか。


「それじゃあ脱いでもらおうか」

「うう……分かったよ」


先程の勢いはどこえやら、ゆっくりとブーツ、髪留め、そして上着を丁寧に脱いでいった。

脱ぎ終わったあとシャツが少し汗で濡れていて何かが透けて見える。


「どうした。余裕がなくなってきたんじゃないか」

「ま、まだ大丈夫、だいじょーぶ!」


メイは自分の頬をペチンと両手で叩き気合を入れ直した。


「よし、来い!」

「「よっよいーのよい!よっよいーのよい!」」

「はい、勝利と」

「おかしいよー!ズルだズル!」

「ジャンケンにズルもクソもあるか。早く脱げ」

「そんなのおかしいよ」


なんかブツブツ言ってるがそんなもの俺の耳には届かないぞ。

ベルトを外しシャツのボタンをゆっくりと1つ1つ恥ずかしそうに外した。

そして全部外したあと一瞬脱ぐのをためらったが俺の顔を見て観念したのかすっと脱いだ。


「……ピンクか」

「言わなくていいから!もう絶対負けないから」


恥ずかしそうに胸を手で隠しながら言っても説得力無いぞ。

ていうか手で胸を隠してるつもりが胸がデカイので溢れてしまっている。

上はブラで下はスカートってなんかちょっとマニアックな気がする。

とりあえずこのままじゃ、ジャンケンできないし手をどけてもらうか。


「それじゃあやるぞ。おい片手でやるな両手をちゃんと出せ」

「うう……分かってるよ」


観念したのか隠すのをやめて両手を前に出した。

なんかファイティングポーズなのがちょっと気になるがまあいいか。


「それじゃあ行くぞ」

「よっよい以下略」


俺が出した手は、パー、メイは……


「チョキ……か、勝った!勝ったよ私」

「おいまだ1勝だぞ。勝負はこれからだ」


お手並み拝見と行くか。


「よっよいーのよい!よっよいーのよい!」

「やったーまた勝ったー!」

「う、嘘だろ!」


あっという間に上半身裸になってしまった。


「へっへーんだ!やっぱり私が1番強いんだよ!本気出さなくても、勝てるもん」


本気出さなくても勝てる?

やっぱりこいつは……


「おいメイ。次負けた奴が全裸ってのはどうだ」

「え!?そ、それはちょっと……」

「何だ怖いのか。しょせんお前はその程度だったということか」

「わ、分かった!やってやる!勝てばいいんだもんね」


よし乗ったな!

お前は気付いてないかもしれないが、この勝負俺の勝ちはすでにもう決まっている。


「いくぞ!」

「以下略よっよいーのよい!」


くらえ、俺の怒りの鉄槌を!


「グーだ!お前は?」

「チョキ……負けた!」

「はい俺の勝ちー!」

「おかしいおかしい!なんで負けたの!」


こいつ本当に気づいてないのか。


「お前さっきからグー、チョキ、パーの順番でしか出してないだろ」

「ほえ?そうなの」


こいつやっぱりバカだ。


「で、でも私勝ったよ!あれは何だったの」

「あれはテストしてたんだよ。お前がちゃんとジャンケンを真剣にやるかどうかを。そしたら予想通りお前はボロを出してまたジャンケンをバカにしたな」


ちゃんとテストして正解だった。

もしこのまま俺が勝ってたらこいつはまたジャンケンをバカにするだろうな。


「ま、いいやとりあえず脱げ」

「くぅ〜〜……」


悔しそうに下唇を噛みながらスカートのチャックを外した。

ストンとスカートは落ちて行き隠していた物が姿を現した。


「おまえ……ホントにピンク好きだな」

「うるひゃい!声に出すな」


悔しさと恥ずかしさで顔がもう真っ赤だな。

でもまだ終わりじゃない。


「それじゃあ早く残りも脱げ」

「かつっちって絶対前世悪魔だ」

「ジャンケンを侮辱した当然の報いだ」

「うぅ……こんなの屈辱だよ……」


何かを諦めたような顔でこちらを見つめ背中の後ろに手を回した。

顔は赤く額からは汗を垂らしながらこちらを見つめながら。

まあここまで来て何だが俺はこいつの全裸を見るつもりはない。

あいつがブラを外した瞬間をウィンドで落ちないようにするつもりだ。

そもそも俺はジャンケンを侮辱したあいつを懲らしめるのが目的であって、見るのが目的ではない。

今は頭に昇った血もだいぶ落ち着い……


「うわぁぁぁぁ!」

「ど、どうしたのかつっち!?」

「な、なんでもない」


な、何してんだ俺は!

さっきまでは興奮してて下着なんか見てもどうでも良かったが今はもう冷静だ。

女の子を自分から脱がせてそれを見て喜ぶなんてサイテーなやつだ。

これ見られたら終わるよな、早くやめさせなきゃ!


「メ、メイ……もう気が済んだからやめて―――」

「え?今なんて――」


パチッ!

あ、取れちゃ―――じゃなくてウィンドを早くしなきゃ!


「おいさっきから騒がしいぞ!何やって――――ほぎゃ!」

「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁ!!」

「ちょ、見える!ウィンド!」


俺はすぐにウィンドで服を飛ばし隠した。


「だ、大丈夫か?メイ。ほらローブ貸してやる」

「も、もうお嫁に行けないぃぃぃ!」

「ああちょ、どこ行く!――――やっちまった」

「おいまて!どこに行く!」


一瞬だけ見てはいけない物を見てしまったような。

それに一瞬だけだが警備員が来た時残念そうな顔をしたような。

俺は走り去って行く警備員を見ながらそんな事を思った。



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