その六 どちらが王か
「こっちだ、ツキノ」
「うん……」
俺達は慎重に地下室を移動していた。
しかもこの地下室かなり広い、もう一つの城と言っていい広さだ。
こんな場所がまだ隠されていた何て思わなかったな。
その時大勢の人の話し声が聞こえた。
その声がする方に行ってみると窓があり、そこを見下ろすと大勢の人が広間で集まっていた。
「うわあ、まさかこれ全員ガイスの仲間になりたい奴らか」
仲間にならなくちゃ何されるか分からない恐怖もあるんだろうけど、それでもこの町のほとんどがここに居るんだよな。
でも人間の姿は見えないな、記憶が戻ってもガイスの仲間にはなりたくないってことか。
てことは人間はゼットって言う人についてたってことなのか。
「かつ……あそこ……」
「ん、あれって……行くぞツキノ」
ツキノが指を指した方向にはちょうどハイトの姿が見えた。
俺達はすぐにハイトの後を追う。
するとミレイと共に部屋の中に入って行ってしまった。
「さすがにこの中には入れないな」
「待ってみよ……」
「ああ、そうだな。話しが終われば出て来るだろうし、バレない様に待つか」
俺達はハイトが出て来るまで近くで待つことにした。
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「ガイス様、ガルア様、ハイトを連れてきました」
扉を開けて中に入ると思ぐるしい空気が辺りを包んでいた。
そして一際威圧感を醸し出しているガイスが椅子を回転させてハイトの方を向く。
「ハイト!お前いつの間に帰ってたんだ!無事だったのか」
「はい、すみません心配かけて。ちょっと色々あって帰るのが遅れました」
「そうか、無事でよかった」
「お前がガルアが言っていたハイトか。よくここに戻って来たな」
そう言ってガイスはゆっくりと立ち上がるとそのままハイトに近づく。
それにより妙な緊張感が周りを支配する。
何かが起きるという予感が皆の頭の中によぎる。
「あの——————」
ハイトが口を開くと同時に目の前に魔法陣が展開される。
その魔法が発動されると同時に別の魔法でその魔法を相殺した。
そのあまりの速さにハイトはおろかミレイさえも動くことが出来なかった。
「ガルア、何をしてるん」
「こいつは俺の右腕だ。ハイトをどうするかは俺が決める、お前にはやらせない」
「生意気な口を利くようになったな、ガルア。少し調子に乗りすぎだぞ、この島の王が誰か忘れたわけじゃないだろう。答えろガルア!」
「俺はお父様の駒じゃない」
「まだ分からないのか。王である俺はこの城の王でもある。配下は全員俺に従いどうするかも俺が決める」
「ハイトは俺の仲間だ!お父様の物じゃない!」
そう言い放つとガルアはハイトの手を使い部屋から出ようとする。
「何処へ行く気だガルア!」
「ここじゃない何処かだ!」
「戻れ!」
「嫌だ!」
「俺の言う事が聞けないのか。忘れたわけじゃないだろう、俺が協力を拒めば誰がこの世を去るか」
「っ!」
「よぉく考えることだな、今自分がどんな立場なのかを」
ガイスは冷たくガルアに言い放つとそのままハイトを連れてガルアは部屋を出た。
「ミレイ、そろそろ奴隷集めを打ち切る。準備を進めてくれ」
「分かりました……」
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「っ!出たぞ」
先程の衝撃音で何が起きたのかと思ったけど、2人は特に怪我をしたわけじゃなさそうだな。
だけど何か起きたのは明白だ、2人の表情が深刻な物になっている。
「よし、行こう」
2人が別の部屋に移動したのを見計らい俺達も付いて行った。
「すまなかったなハイト」
「いえ、俺のせいでガイス様の機嫌を損ねて、二人の関係にヒビを付けてしまいました」
「はは、気にすんな。ちょっと今はお互いピリピリしてんだ、それにお父様のやり方は気に食わない」
「それは俺も同意見だぜ」
「っ!かつ!?それにツキノも、なぜお前らがここに居る!」
俺はいち早くガルア達が入った部屋に行き、そしてガルアに話しかける。
「ちょっと色々あってな、お前と同じ気持ちなんだよ」
「俺と同じ気持ち?」
「ああ、ガルア俺と一緒にガイスの計画を潰さないか?」




