その四 おままごと
「た、ただいま〜」
「あらあなたおかえり」
最初はどうやって進めんのか不安だったが、まさか台本があるなんてな。
結構本気でやるのか。
「お風呂にするご飯にするそ・れ・と・も」
この流れは帰宅後にする定番のあれか。
「死ぬ?」
「へ?」
するとメイは持っている人形を投げ捨て、俺に迫って来た瞬間包丁を突きつけられた。
「え?……メイ、持ってる人形捨てたら意味無いんじゃ……」
「私知ってるのあなたの正体」
「俺の正体?」
まさか俺が人間ってことがバレたのか!?
「あなたが殺し屋ってことを!」
「あ、そっちか」
人形投げ捨てて来るから、リアルの方かと思った。
「えっと、なっなぜその事を知っている!?」
「私聞いちゃったのあなたがわんぱくわくわく公園で、揺れるぞうに話しかけているのを!」
何やってんだよ俺!
いや誰と会話してんだよ俺、コミュ障なのかこの暗殺者は。
「もうやめて!こんなこと!あなたが人を殺してるとこなんて見たくない」
「だけどこうでもしなきゃ借金を返せないだろ」
なるほどこいつは借金を返す為に仕方なくやってるってことか。
俺も借金してるから妙な親近感があるな。
「今どれくらいの借金なんだ」
「言ったら怒らない?」
「何で俺が怒ると思うんだよ。俺達家族だろ」
「ありがとう。それじゃあ言うね………今の借金は1000ガルアくらい……」
めちゃくちゃ安いじゃねぇかよ!
こんなの10秒で入金できるよ!
「しかもそれに利子も付いちゃって」
そうか利子か!
利子がかなりいってるんだな。
「利子はどれくらいついてるんだ」
「これも言いにくいんだけど……10ガルア」
うま○棒1本分じゃん!
「合わせて1010ガルア払わなきゃいけないの!」
それもううま○棒101個借金取りにあげれば済む話だろ。
……いや普通に渡してやろう、それはただの地獄だ。
ていうかこの設定かなり無茶あるだろ。
「おい、メイ。さすがにこれは―――――」
「ギロっ!」
「ひっ!」
なっ何だ急に睨みつけてきて。
もしかして台本と違うからか、そこまで忠実にしなきゃいけないのか!?
「そんな大金この仕事以外じゃ払えないだろ!」
そんなわけ無いけどな。
「大丈夫、私にあてがあるの」
そう言ってメイはナイフをしまいチラシのような物を出して来た。
「これは?」
「先日出来たばかりの遊楽があるのよ。そこでなら借金を返せるわ」
「いやそれって……」
ギャンブルじゃね。
十中八九ギャンブルじゃね。
「駄目だ!それじゃあ借金が増えるぞ!」
「止めないで!じゃなきゃ私死ぬ」
いや自分勝手すぎだろ!
まずいなこのあとの展開は……あれ?何も書いていない、もしかしてこれで終わり?
もしかして死んで終わりってことか。
いやそれじゃあ後味悪すぎだろ。
いくらおままごとだからってこんな終わり方納得いかない。
「まて!早まるな!」
こうなったらアドリブで行くしかねぇ。
「俺が何とかする!だから死なないでくれ!俺にはお前しかいないんだ!だからいなくならないでくれ!」
「あなた……」
「奥さん話がちょいと違うんじゃないですか」
「あなたは!」
何!?ここで新キャラ!?
「あなたは突然変異したブタ!」
「ボンジュール、マドモアゼル」
「いや誰だよ!というか何故フランス語」
ん?ちょっと待てよ確かこれも俺の配役に含まれてたな。
でも俺は何もやっていないじゃあ誰が――――
「ん、何だお前こっち見るな役になりきれ」
警備員じゃん!
何やってんだこの人は!?
ちゃんと警備の仕事しろよ!
「俺知ってるんですよ。あなたの正体を」
「突然変異したブタ、何のこと?」
「奥さんあなたは本当はウシ派じゃ無くてブタ派だということをね!」
「いやどうでもいいだろ。ていうか今その話してないし。お前もなんか言ってやれよ」
「何でその事を知っているの!?」
「え?」
謎に話噛み合ってんじゃん。
「だから俺をずっと熟成してたんだろ!この淫乱女が!」
何故それだけで淫乱なんのだろうか。
「違うのこれには深いわけがあるの!」
そして何故メイはこんなに焦っているのだろうか。
「俺をどうしたいんだ!ええ!焼くのか!焼いて食うのか!」
「やめて!誤解なの!」
誰かこの状況を止めてくれー。
「誰その人達」
「誰だお前!」
「あなたは佐藤さん!」
「また新しいキャラクターかよ!」
こいつは奥さんの不倫相手の佐藤さんか。
たしかメイがやる予定だったけどメイは動かしていないってことは――――
「かつくん今は役に集中して」
ナットさーん!何してんだよ。
ここにいる人たちは暇なのか。
ていうかおままごとしてんの怒れよ!
「そうか俺は捨てられるのか。まあそうだと思ってたけどね」
佐藤さんすごいネガティブだな。
「違うの佐藤さん聞いて!」
「残念だけど奥さんそれは無理な相談だよ。俺はもう決めたんだ」
「ヘいボーイ!何か悩みかい?それなら僕に相談するといいよ。なんせ僕はポークだからね」
だから何だよ。
「俺の友達を殺したお前を絶対に許さない」
「え、俺?」
「おーこれは豚だ展開だな」
「そんな!私の夫がそんなことするわけ無いわ!」
おお!俺のことを庇ってくれたのか!
いや、当たり前かだってそういう設定だもんな。
「奥さんが言うんだったらそうかもね」
「意思弱!それでいいのかよ。友達殺されたんじゃなかったのか」
「いや、改めて思うとそこまで思い出なかったし、てか俺あいつ嫌い」
なっなん何だこいつ。
「じゃあなんでそんな事言ったの」
「いや、友達思いの人は好かれるって聞いたから」
「結局妻狙いかよ」
「これは豚だ失態だな、豚だけに」
「こいつ殺ってもいいですか」
「いいんじゃない」
「ちょっえ、駄目だよ!」
「そうよ、可哀想よ!」
まさか豚を庇うとはちょっと予想外だな。
「体からよりも首からいかなきゃ、苦しんじゃうわ。そんなの可哀想よ」
「そっち!奥さんそっちじゃないよ!」
「そうだな。それじゃあ、よろしく」
佐藤が俺の肩をポンと叩いた。
「俺がやるの?」
「当たり前だろ。お前以外に誰がいるんだ」
「頑張ってあなた♡」
ついさっきまで殺し屋否定派だったろ。
「まあいいや。おい豚ジッとしてろよ」
「きっ君!ちょっと待て!俺の豚ジョーク聞きたくないか。聞きたいだろ!?」
「聞きたくないっ!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」
こいつどんだけ役に入り込んでんだよ。
「今夜は焼き肉だぁ!」
「やったー久しぶりの焼き肉ね」
「こんなクソ野郎の俺なんかが食っていいのだろうか」
なんかいろいろ話ぶっ飛んでるけど本当にこんなんでいいのか。
「やっぱりみんなで一緒が1番よね」
「そうだな」
「こんな俺がみんなの輪に入っていいのだろうか」
横がネガティブでうるさい。
その時時計からチャイムのような音が聞こえた。
「あれ?もうこんな時間!私帰るー」
「てことはもう終わりでいいのか」
「うん!いいよー」
ふぅーやっと終わったか。
てかこれ本当におままごとか、途中から台本なくなったせいで色々おかしくなってたが。
「ありがとね、かつ!遊んでくれて」
「…………」
ま、楽しんでくれたのならいいか。
「じゃあまた明日ねー」
「じゃあな」
よし、俺も寝るか。
「それじゃあ俺はもう警備の仕事に戻るぞ」
「じゃあねかつくん」
「あ、お疲れ様です。あとこの事は他の人には……」
「分かってる。俺達も一緒に遊んだからね。秘密にしとく」
「ありがとうございます。ナットさん」
今日も1日が長かったな。
カオスな1日を送ってしまったと思いながら俺は眠りについた。




