エピローグ 囚われのお姫様
ある山の中にある地下室、誰にも見つかることのない凶悪なモンスターしか生息していないその山で2人に半獣が身を隠していた。
一人はその地下室に閉じ込められてもう一人は食糧を得るためにモンスターを狩っていた。
そして殺したモンスターを魔法で焼いてそのまま食らいつく。
「ふぐ、もぐ、はぐ」
その一部をもう一人の半獣に渡す。
だが半獣はそれを食べようとしない。
がつがつとモンスターの肉に食らいついている半獣を見ながら身をかがめる。
室内は暗く炎の魔法を使わなければ歩くことすら困難だ。
咀嚼音だけが室内にこだまする。
そして半獣は我慢が出来なくなり腹の音を消すために側になるモンスターの肉に食らいつく。
ここに居てから数日が経ち本人たちはどれくらいの月日が経ったのかは分からない。
だがそれでも二人の半獣はここから離れるつもりはない。
いや、一人を除いては。
「ねえ、戻ろうよ」
一人の半獣が言った。
もう一人の半獣はその言葉に耳を傾けずに夢中で食事を続ける。
「ねえってば!」
今度はさらに声を出して半獣は伝える。
するともう一人の半獣は食べるのをやめて半獣の方に視線を向ける。
そして次の瞬間魔法陣を展開させて話しかけてくる半獣を威嚇した。
「黙ってろ、お前は補給だ。口答えをするな」
「どうしてそんなこと言うの……お——————っああ!」
その時半獣が悲痛な叫び声を上げる。
左足には氷の槍が貫いていた。
血が流れ、熱さが込み上げてくる。
そしてもう一人の半獣はその氷を無影やり引き抜く。
半獣はその時にも悲痛の声を上げる。
すると突然もう一人の半獣は涙を流している半獣を優しく抱きしめる。
「可哀そうにね、痛かったでしょ。でもあなたが悪いのよ、私の言う事をちゃんと聞いてればこんなことにはならなかったの」
「うっうう……」
「大丈夫よ、すぐに治るわ。だけどまた反抗するようならお仕置きしないと」
「っしない!しないよ!だからお願いお仕置きしないで」
必死に懇願をする半獣を見てももう一人の半獣は思い通りに動いてることを確信してニヤリと笑う。
「それでいいのね、いい子ね。私の可愛いお人形さん」
そうつぶやくともう一人の半獣は優しく半獣の頭を撫でる。
涙を流しながら半獣はもう一人の半獣の言う事を聞くしかなかった。
その半獣は徐々に心が壊れていることを気が付いていない。
それがもう一人の半獣の目論見だという事も。
そして半獣は心の中でこう思った。
『助けて、お兄ちゃん』




