その二十五 村の破壊者
「こっちだ!」
俺達は走り去ってしまった女の子を追いかけながら森の中を走っていた。
だが木々が多く何度も見失いそうになる。
と言うかほとんど女の子の姿が見えない。
だから今は勘で進んでいることになる。
「っ!かつ何か臭わないか?」
「え?臭い……本当だ何か焼けたような臭いがしてくる。もしかして山火事か!」
そう言えば女の子が一人でこの森に居るとは考えずらい、もしかしたら森の近くに村があるのかもしれない。
もしかしてその村で何か起きたのかだから女の子は怯えてた。
「デビ!空から近くに村がないか調べてくれないか!」
「分かったのじゃ!」
デビはすぐに翼を羽ばたかせ空から周りを見渡す。
俺はそのまま臭いが強くなる方向へと走り出す。
すると上空からデビの声が聞こえてきた。
「そのまま森を抜けると村があるのじゃ!じゃがかなり危険な状態じゃぞ!」
「分かった!」
目的地が分かれば本気で走れる。
俺は思いっきり地面を蹴って一気に森を抜けて行った。
そして見晴らしがよくなった瞬間、強烈な熱気と煙が村を飲み込んでいた。
「こ、これって!」
沢山の叫び声と鳴き声が聞こえてくる。
地面に倒れている者、そしてその者たちを抱えて泣いている者、そこはまさしく地獄のような光景だった。
しかもこの声もしかして。
「グアアアアアアア!」
そこにはモンスターの姿が見えた。
まさかモンスターがいきなり村を襲ったのか。
くそ、どちらにしろ早く助けないと!
「デビルオン――――――」
「待てデビ!攻撃しちゃ駄目だ!」
上空からデビの魔法を放つ声が聞こえて来て俺はすぐに攻撃をやめさせた。
「何でじゃ!このままだと大勢死ぬぞ!」
「お前の馬鹿みたいな火力の魔法を放ったら周りに居る人が巻き込まれる!先ずは避難をさせるのが優先だ!」
せめて火は消火しないと、でも俺の水の魔法じゃ一気に消火することは出来ない。
モンスターも暴れているし、村の中に閉じ込められている人もいるかもしれない。
くそ、せめて一気に火を消化することが出来れば周りを巻き込まずにモンスターだけを倒せるのに。
「レベル魔法ウォーターブレイクトレント!」
「っ!」
突然魔法陣が空中に現れ激流がまるで生きているかのように燃えている箇所だけに向かっていく。
そして一瞬にして村の火が消えた。
すると新たな声が聞こえてくる。
「ロックスピア!」
するとモンスターの上に魔法陣が出現して鋭い岩がモンスターの頭を貫いた。
それによりモンスターは絶命しその魔法を放った男は刺さった岩の上に乗っていた。
何だあの男。
「助かりました、ありがとうございますザック様!ニュート様!」
すると一人の老人がその2人にお礼を言った。
貫禄からしてここの村長か、それにしてもこいつら誰だ。
「いえいえ、俺達は警備できただけですから」
「そうっす!守ることが俺達の役目っす!当然事をしたまでっすから!」
「あなた方が警備に来てくれなかったらどうなっていた事か。本当にありがとうございます」
そう言って周りの人達は次々とその2人にお礼を言う。
どうやら悪い人ではなさそうだな。
するとデビが上空から降り立つ。
「何じゃ何じゃ、あっという間に片付いたが誰がやったのじゃ」
「っ!おいそこのお前ら何者だ!」
するとデビの姿を見たザックとニュートはこちらに近づいて来る。
「お前ら何者だこの村の人じゃないだろ」
「もしかして今回の村襲撃の首謀者っすか?そうなったら容赦しねえすよ」
「ちょっと待て!俺達は迷っている女の子が心配で探してたらこの村にたどり着いたんだ。俺が来た時にはもう既にこうなっていた。だよなデビ」
「そうじゃな。妾の一撃で殺してやろうと思っていたが村の人々を巻き込むわけには行かなかったのじゃ」
ナイスだデビ、そう言えば俺達がすぐに助けなかった理由にもなる。
たしかにこの状況じゃ疑われるのは無理はない、なるべく怪しむ行動はしないで置かないと。
「あっかつさん!」
「え?あっリドル!何処に行ってたんだよ!」
声が聞こえた方に振り向くとそこにはリドルたちの姿があった。
だがリドルたちは大きな荷物を乗せた台車を引いていた。
「それなんだよ」
「ああ、これはですね」
「ちょっとまったーーーー!!」
突然大声が聞こえるとザックがこちらに向かってくる。
いや違う、リドルたちの方に向かっているのか。
「これは何だよ。何を乗せてるっすか」
「いや詳しい事は僕にも分かりません」
ザックはそれを聞くと布で覆いかぶさっていた荷物の元に行くと、その布を一気にめくった。
「グアアアアアアア!」
「うわっ!」
そこには檻の中に閉じ込められているモンスターの姿があった。
しかもそのモンスターは先程村を襲っていたモンスターだった。
「ど、どいう事なのですか!あの者たちはどうしてモンスターを!」
「やっぱりね。そう言う事だろうと思いましたよ。よくやった、ザック。事の顛末はこういう事でしょう、あいつらが用意したモンスターを使って村を襲撃させた。そして大量虐殺をした後金目の物を盗んでとんずらする。飛んだクソ野郎集団だな」
「ちょっと待てよ!俺達がやったって言うのかよ。ていうかリドルはそんな荷物持ってなかっただろう。誰かから受け取ったんだろ」
「そうよ、さっき老人が居てその人が困ってそうだからこの荷台を引くのを手伝ったのよ」
「だったらその老人はどこに居るんだよ!」
俺はすぐにリドルの方を向く、だがリドルは何故か焦った様子を見せる。
どういうことだ、老人の手伝いをしたんじゃないのか。
「いない、あの老人が居ないよ!」
「やっぱり居ませんか」
「居ないってどういうことだよ」
「やっぱり嘘っすか」
「嘘じゃねえよ!俺の仲間が嘘つくはずないだろ!」
「だとしたら見せてくれよ!その老人って奴をよ!」
そう言ってニュートは余裕な笑みを見せて来る。
何なんだこいつまるで俺達を犯人扱いするかのように。
「本当だって俺達は何も関係ない。そもそも俺は女の子を追いかけただけだし、あっあの子だ!」
その時母親らしき人に抱きしめられている女の子を見つける。
あの子なら証言になってくれるはずだ。
だがその子は怯えているのかこちらを見ようともせず母親にぴったりとくっ付いている。
その女の子に向かってニュートゆっくりと近付いて行く。
「大丈夫かい?もう怖い人は居ないよ。だから教えてくれないかな、あの人達は君の事を助けたの?」
「あ、悪魔……」
「っ!」
「悪魔?それは一体誰の事を言っているのかな?」
その女の子は振るえながらもデビの方に指を指した。
「ご協力ありがとう。まさか悪魔がこの世界に居るとは思わなかったよ。単なる比喩表現か、それとも本当なのか。どちらにしろ良い意味ではないよな」
「妾が悪魔じゃと。何を言っておるのじゃ」
そうだデビ否定するんだ、今の状況で余計なことを言えば終わるぞ。
「妾は地獄の王じゃぞ!そこいらの悪魔と一緒にする出ない!」
終わったー!
デビは翼を出現させて高らかにそう叫んだ。
「そうっすか。てことは悪魔を仲間にしている奴らだ。こんな事をするのも納得できるっすね。まあ悪魔の仲間じゃないというのなら、お前らの罪も軽くしてやるよ」
「デビが仲間かだって?そんなの決まってるだろ。こいつは俺達の仲間だ!」
「そうか、それじゃあお前ら全員死刑だな!」
「覚悟するっすよ。犯罪者ども!」
やるか、ここでやるしかないのか!
「かつさん、ここは逃げた方が賢明です!今戦った所で何も解決できない!」
「待てよ、お前絶対かつか!そうか、お前があの犯罪者か!ならこの行為に及ぶのも納得だな!」
「な、何を言ってるんだよ」
「俺達はお前らを捕まえる為にネッパニンスから派遣された者っす。まさかこんな所で会えるとは思わなかったすね」
「ネッパニンス!まさかお前ら!」
「お願いします。俺達をあの犯罪者から守ってください!」
「任せてください。こんな犯罪者集団何て一瞬で倒してやりますよ」
「くそっ!」
「かつさん!戦っては駄目です!」
目の前のザックとニュートは俺が攻撃すればいつでも始められる気でいた。
だけど、俺は怒りを抑えてその場から立ち去る。
「二度と来るんじぇねえ犯罪者ども!」
「捕まえっちゃえ!」
俺達は逃げながらその背に罵声を浴びせられる。
悔しさを噛みしめながら俺は走るスピードを上げて行った。
「先ずは最初の計画完了だな」
「ああ、でもここからだ。あいつらをとことん追い詰めてやろう。地獄の果てまでもな」




