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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十九章 失われた王と引き継がれし遺志
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その十九 風を極めし魔法使い

そいつはそんなとんでもない事を言うと俺の事をじっと睨みつけてきた。


「ちょ、ちょっと待てよ!何が何だかよく分からないんだけど!」

「しらばっくれるなこのゲス野郎が!」

「いやさっきまでクズ野郎だっただろ。ていうかクズ野郎でもゲス野郎でもないぞ」

「うるさい!とにかくカノエ様の命令により絶対かつおよびその他の仲間も捕まえろとのご指示だ」


こいつ強行するつもりか。

このまま捕まるわけには行かない、何とか逃げなければ。

そんな事を考えているとデビが突然俺達の目の前に立った。


「ちょっと待つのじゃ。なぜ妾がその他扱いされてるのじゃ」

「デビちゃん今はそう言う問題じゃないから。と言うか私達はそんなひどい事はしてませんよ」

「それを言うなら僕達は完全に部外者ですけどね」

「え?リドルそれでいいの?」

「静かにしろ!とりあえず、お前らは大人しく俺達に捕まることだな!」


やっぱりこいつらは俺達を捕まえる気か仕方ない、こうなったら無理やりにでもここから逃げるしか。

ん、ちょっと待てよ、まさかあいつ。


「だから何で妾が本命じゃないのじゃ!」

「何なんだお前は!良いから大人しく捕まれと……お前その角は何だ?まさかお前半獣じゃ——————」

「だから言ったじゃろ。妾がこの中で一番地獄に近いんじゃからのう。デビルウィスパー!」

「おわっ!?何をするやめろ!」


周りが黒い霧に包まれると魔法を放たれたことにより目を瞑ってしまう。

そして次に目を開けるとそこにはかつ達が縄に縛られてる姿だった。


「あれ?いつの間に捕まえたんだ?」

「やりましたね!これでカノエ様からの報酬もがっぽりもらえますよ」

「ああ、そうだな。よしこいつらを連れて城に戻るぞー!」


そう言って高笑いを上げながら皿とコップが繋がれて縄を引きずって行った。


「そう言えばお前幻覚魔法が使えたんだっけ」

「当然じゃ。妾は最強じゃからのう」

「そうですね。今のこの世界ではデビさんが最強だと思います。ですが魔力の量は昔よりも変わってませんね」

「当然じゃ。元の魔力で行ったら妾の寿命は減るからのう。適性の魔力量をセーブしているのじゃ」

「とにかく、俺達はもう目を付けられてる。バレるのも時間の問題だし、早くここから出よう。リドル、カルシナシティまでの行き方はすでに考えているのか?」

「そうですね」

「それじゃあ、お前に着いて行くよ。一刻も早くここから出よう」


————————————————

「行き方って歩きかよ!」


俺達はネッパニンスを出て、夏の暑さよりも熱い道をただ歩いていた。


「だってそれしかありませんから。町の移動出来る施設は全て偽カノエの息が掛かってますし。先程の事を見るとそう言った行為をした時罰が返って来るのは目に見えてますからね」

「それは分かるけどよ。知り合いとかに頼めたりしないのかよ。しばらくネッパニンスに滞在してたんだろ」

「知り合いが居たとしてもかつさんの事のようになってしまいますよ」

「リドル、そう言う事はあまり言わない方が良いんじゃないの?」


アイラは周りを気にしたのか、さりげなくリドルに注意する。

その言葉が聞こえたのかミノルはアイラの側に行き、優しく微笑む。


「良いのよアイラ。確かにリドルの言う通りね私達は信用し過ぎたの。でもそれを後悔はしてないし、恨んでも無い。そうでしょ皆?」

「まあそうだな。あいつも色々な事情があったわけだし」

「妾も恨んではおらぬぞ。これで命の借りはチャラと言う事じゃな」

「ね?」


そう言ってアイらの方を見るとアイラは安心したような表情を浮かべる。


「それでもこれ以上の騒ぎは避けるべきですね」

「まあそうだな。今後はちゃんと警戒心を持って行くか。それにしてもここ熱いな、こっからどれくらいかかるんだ?」


火山地帯だからか岩場が多く、森も見えない。

足場も悪いため、余計に体力を消耗されるな。


「俺達は半獣だからいいけどアイラとミノルは人間の肌何だし、ここらへんに長い事滞在するのは危険だろ」

「分かっていますなるべく早くここら辺の地帯は越えたいと思います。早ければ今日中でも。それにアイラには最高級の素材で作られた服を着ているので熱で肌が痛むことはありません」


そう言えばアイラの服無駄に素材が良いな。

高そうな装飾品も付けてるし、革も厚いなマジで高そうだ。

するとそれを羨ましそうにミノルがじっと見ている。


「何だお前、まさか欲しいのか?」

「別に大丈夫よ。そもそももう町から出たから買えないでしょ」

「まあそうだな。でも欲しいなら欲しいって言えば買ったぞ」

「いいの、私はそれが気に入ってるし」

「何じゃ何じゃ、熱いのか?なら脱げばよかろう」

「デビここで脱いだら肌が焼かれちまうんだよ」


まっこいつは地獄で生きて来たんだし、肌も俺達よりも何倍も頑丈なんだろうな。


「それでもやっぱりアイラの肌が心配なのは変わらない。そうですよね、かつさん」

「え?」

「だからこうするんです、よっと」

「え、うわああ!」


リドルはアイラの懐に潜り込むと足を掴んで一気に持ち上げた。

突然の事で驚いたのかアイラは変な声を上げて、リドルの背で暴れている。


「なるほどな、そういうことか。それなら……」

「ちょ、ちょっと、何でこっちに来るのよ。私は別にきゃああ!」


俺は素早くミノルの懐に潜り込んでミノルをおんぶした。


「これならすぐに移動出来るな」

「もう、恥ずかしいから下ろしてよ!」

「ミノルの言う通りよ。子供じゃないんだから下ろしてよ」

「良いじゃないですか、しっかり捕まってくださいよ」

「きゃ!」


そう言ってリドルは走り出した。

背中に乗っているアイラも何だかんだ言って楽しそうだ。


「それじゃあ、俺達も早速ってうわ!?」

「どうじゃ、かつ楽しいか!」


その瞬間、俺の体は急に持ち上げられて気が付けばデビにおんぶされていた。


「ちょっと待て危ないってデビ!」

「かつ下ろして!すごい不安定だから!」

「今下ろしたら頭からぶつかるぞ!」

「どうじゃかつ楽しいか!」

「いや楽しくないから!おろしてくれー!」

「何してるんですか。かつさん遊んでないで早く——————」

「ゴギャアアア!!」


突然不気味な咆哮が聞こえたと思った時岩崖にくっつく形で四足歩行のモンスターが現れた。

モンスター久しぶりに出会った気がする。


「デビ下ろしてくれ、すぐに倒すぞ」

「いや、その心配はなさそうじゃぞ」

「え?デビちゃんどういうこと?」

「僕が倒すという事です」


いつの間にかリドルはアイラを背中から下ろして目の前のモンスターと対峙していた。

まさかリドルが一人でやるつもりなのか?


「おいリドル無茶するなよ!見た目からして普通のモンスターじゃないぞ!」

「あのモンスターはゴウガンサイと言う岩を主食としているここら辺ではよく見かけるモンスターです。その為外骨格が非常に硬く皮膚も岩並みの頑丈さなので生半可な魔法では傷一つ付けられません。有効な手段としては貫通力の高い魔法が一番です」

「え?あ、ああそうだな」


リドルは一通り説明を終えると魔法陣を展開する。

リドルの言う通りなら貫通力のあるアグレッシブフルートが一番だよな、リドルの得意魔法の風の魔法でもあるんだし。

でも今目の前に展開されてる魔法陣は……


「ゴガアアアアア!」

「キルトルネード!」

「えっ」


目の前に現れた魔法を見てミノルはそんな言葉を零す。

気持ちは分かる今の説明を聞く限りアグレッシブフルートを撃つのが得策、それなのに鋭い風の刃が周囲を巻き込んで切り刻むキルトルネードを選ぶなんて。

強力な風の渦巻きはゴウガサイに近づいて行く。

だけど体が硬い皮膚で覆われているゴウガサイには効くはずがない。

はずがないのに、どうして


「ごっ———————っ!?」

「うそ!?」

「切り刻んだ……」


目の前のゴウガサイはリドルの魔法により駒切りにされた。


「僕は全ての風の魔法の熟練度を極めました」

「すべての風の魔法を!?」

「はい、僕が誰の元で修業したと思ってるんですか。それもこれもかつさんの為にですよ」

「俺の為に……」

「かつさんがいなければ僕はこのままミノルさんを殺していたと思います。そうなれば僕の人生は憎しみのまま終わっていました。真実を知ることもなく、一生を棒に振るとこでした。かつさんは僕にとって仲間でもあり、恩人でもあります。かつさんの為になら僕はどんな敵も倒して見せますよ」


そう言ってリドルは力強く拳を握りしめた。



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