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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十九章 失われた王と引き継がれし遺志
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その十五 記憶の中の歴史

「それじゃあ、さっきの話に戻るけどリドルはこの島で何が起きたのか。思い出したんだよな」

「はい、それでは皆さんに僕が知る限りの情報をお伝えします」


その言葉を聞いてその場の空気に緊張が走る。

これから話す話は俺がずっと疑問に思っていたことを全て解決するかもしれない。

そんな期待が自然と拳を握りしめていた。


「まず、僕はこの島の人間ではありません。別の島で生まれた普通の人間でした。ですが人間としては普通でしたが環境としては普通ではありませんでした。僕の両親は僕が四才の時に家事により死亡。僕の記憶ではたしか放火によるものだったと思います。僕はその後孤児院に移り、あっ孤児院と言うのは僕と同じ何らかの理由で親を失ったりして一人で生きていけない子供を保護する場所なんですけど、僕はそこで2年位居たと思います」

「2年てまだ6歳くらいだろ。その年齢で孤児院から出られるのか」

「引き取る親が見つかったそうです。ですがそれは家族になるという意味ではなく、僕が売られたという意味だったんです。どうやらその孤児院は俗にいう裏社会の人間とつながりがあったようで、表向きは身寄りのない子を引き取る善良な施設を装い裏では高値で子供を売っている非常識な施設でもあったんです。当然僕はその事にも気付かずに何の疑問も持たずにその引き取り人の人に着いて行ってしまった。それが地獄の始まりでした」


リドルはその日の光景を思い出しているのか手が震えだし、冷や汗をかいている。

普段のリドルからは想像も出来ないような怯えっぷりだ。

よほど辛かったのだろう。


「車に乗り込もうとした時に突然ガスのような物を嗅がされました。それで気絶してしまい、目が覚めると見知らぬ場所で妙な浮遊感と共に揺られながら、真っ暗い場所に閉じ込められていました。そしてそこに人の気配を感じ取り、自分以外に大勢いると分かりました。手足は縛られていて動く事すら出来ませんでした。しばらくしてドアが開くと光がその場所を照らし、そこに居た人は大人や子供、年齢もバラバラな様々な人間がそこに閉じ込められていたことが分かりました。中に入って来た人は僕達の足の拘束を取ると部屋から出るように言われました。その時体がだるく思うように動かなかったのを覚えています。もしかしたら暴れない様に薬か何かを入れられていたのかもしれません。外に出ると自分たちが居た場所が船の中だと分かり、そして目の前には見知らぬ島が広がっていました」

「それがこの島だったのか」

「はい、まずこの島は元々は人もいない生物だけが残っている無人島でした。潮の流れによって流されて辿り着くのは不可能で嵐が多くここまで来るのには入念な準備と強靭な船が無ければ辿り着けない島でした。そこでその人達は施設を作り、実験島として利用してたみたいです。そこに運び込まれた人たちはその実験たいみたいです。話を聞く限り運び込まれた人は身寄りのない人やホームレス犯罪者など居ても居なくてもどうでもいい世間にとっては無関心な人たちが集められていました」

「リドル……」

「大丈夫ですミノルさん。あの時の僕はそう言う環境に居ましたから、今はそう思っていませんよ」


そう言う人達が集められたってことはこの島にいる人間も半獣もそう言う環境で育ってたってことだよな。

本当にこの島の人達は悲しい過去を持っているんだな。


「話を戻します。僕はそこで様々な人体実験を受けました。君の悪い液体を注入されたり薬を飲まされたり何かを移植されたり、本当に死ぬ方が楽だと思う程のひどい物でした。当然の脱出を考えた人もいます。だが施設から出ても安全な場所など何処にもありません。そう言った人達は2度と戻ってきませんでした。殺されたか別の場所に移されたか、どちらにしろ良い結末を迎えることはないでしょう。もちろんそんな過激な実験をしているのですから、死人も出ます。その度羨ましいと何度も感じました。自殺を出来ないように何も置かれてない殺風景な部屋で1人でした。ご飯を食べなくても直接体に栄養剤を注入され餓死することも出来ませんでした。一生をそこで生きていくことを覚悟した僕は今が何年かすら分からない事です。ある日一人の人間から獣の耳が生えました。感覚的には何年か経ってると思います。それが実験の成功を意味していたのには研究者たちの歓喜の声で容易に理解出来ました。その現象は次々と他の人にも現れて行って僕にも獣の耳と尻尾が生えました」

「それが半獣なのか?」

「はい、半獣と言うのはモンスターと人間が組み合わさった姿です。それを知った時僕は三日三晩吐き気に見舞われました」

「半獣が人間とモンスターの合成生物!?」


たしかに半獣は作られた生物だとは知ってたけどまさかモンスターが組み合わさった姿だなんて。

この耳も尻尾も元々はモンスターの物なのか。


「実験の敵は眠らされることが多かったです。いえ、正確には気絶するが正しいですね。なので自分の体に何が起きてるのか分からなかったんです。半獣に体が変化する前にも激しい頭痛やめまい激痛が全身を襲い、寝ることも出来ず何度も吐き吐く者が無くなっても体が何かを出そうとしていました。その過程が今の姿と力です」


その壮絶な過去は決して言葉なんかで慰められるものではなかった。

俺が想像を出来るよりも何倍もつらい経験をしたんだ。


「でも、たしかリドルは母親が居たって言ったよな」

「あの人は僕の母親です。それは間違いありません、血が繋がってなくても僕達は家族でした」


そう言う事か、リドルの半獣になった後の家族か。


「一番の問題はその後です。僕はすっかり勘違いをしていました。いやそう言う風に記憶を書き換えられていたが正しいですね。実際の歴史はそんな単純な物では無かったです」

「教えてくれるか?」

「分かってます。先ず人間と半獣の争いはありませんでした。王なんか存在しません。ある日2人の半獣が反旗を翻し、その力を使って島中の研究者を皆殺しにしました。最初はその2人でしたが次第にそれに同調する形で段々とその勢力を伸ばしていき、結果的に残ったのは島にはびこるモンスターとまだ実験されていなかった人間と半獣だけでした。当然研究者たちは全員殺された為復讐を果たせた半獣たちは大喜び、人間も助けられたと思う喜んでいました。僕はただ見ているだけでしたけど、同様に喜んだと思います。人間達はこの島を出ようとしてましたが、研究者たちの最後の悪あがきで船は全て爆破されてました」

「だからこの島には人間が残っていたのか」

「船を作ることにもなったけど普通の船だと嵐に巻き込まれるし、そもそも潮の流れとかを正確に読めたり船を運転する技術の人がいなければ無理でした。だからこそそこにいる人達はこの島で生きていくことを決めたんです。最初の頃は上手くやっていました。僕も新しい家族が出来ました。それがあの時の家族です。半獣になった副作用からか身体的成長が遅くなり、その分寿命が普通の人間よりも長い事を知りました。それが僕の唯一の救いだったのかもしれません。この幸せな時間が長く続くことが出来るので」

「だけど、事はそう上手く行かなかった」

「はい、次第に不満が溜まって行ったんです。最初に言いましたよね。反旗を翻した半獣が居ると。その2人は特に英雄扱いされていて周りから尊敬されていました。その人達の名はガイスさんとゼットさんです」


ガイスとゼット、どこかで聞いたことのある名前だ。


「その一人ガイスさんが自由を求めるようになりました。自分たちが島の外にも出られずにここに閉じ込められているのは理不尽だと、少なからずそう思っていた人も居たんでしょう。その想いは同調していき同じ考えを持つ人は増えて行きました。ですが簡単には出ることは出来ません。島の外には外的要因を防ぐために無断で島の外に侵入や出ようとする人を排除する柱が島の周りに建てられていました。その機能を無効にするためには電力を停止させる必要がありましたが、そうした場合住める環境にするために機能している機械も停止することになり、島での生活もままならなくなってしまいます。だからこそもう1人の英雄であるゼットさんは島に留まることを訴え次第にそれに同調す人が増えました。次第にその亀裂ははっきりしていき自由を求めるガイス派と平和を求めるゼット派で完全に真っ二つになりました」

「それが戦争の火種になったのかしら」

「はい、うっ!」


その時急にリドルが頭を抱え始める。


「どうしたんだ!」

「すみません、記憶が戻ったばかりなのか。昔の事を思い出そうとすると頭が痛くなると気が合って、そうだ……僕のお父さんもその戦争に参加していたんです。それで死んでしまったんだ。あっすみませんこれは個人的なことでしたね。話を戻すとその戦争は約2年続きました。そしてそれが終わったのは突然です。僕はそこに立ち会っていなかったから詳しい事は分かりませんが、島に残ると決めた方たちの大半の人達が消えてしまったと、そしてゼットさんも消えてしまい、ガイスさんは命に関わる重傷を負ったと、おそらくそこから魔法によって記憶を書き換えられたと思います。これが僕が知りうるこの島の真実です」


リドルは語り終えると俺達は思わず黙ってしまった。

それがあまりにも最初に知らされた歴史と違く、とても残酷な真実だったからだ。

だが一番最初に口を開いたのはこの歴史に全く関わりのない人物だった。


「それは興味深いのう」

「え?どういうことだ」

「お主らの歴史は妾には関係のない事じゃ。その歴史の結末はお主らが付ければよい。妾にそれに関わる権利はないからのう。じゃがその研究は気になる。お主らのその力はその研究によって手に入れたみたいじゃな」

「そうですね」

「ならばそいつらは人体実験以外の研究もしたことになる。魔法と言う力を得るのが目的なら人体実験よりもその力の研究をすべきじゃからのう。お主らは人体実験のみで魔法を使う研究はしなかったのじゃろ」

「その研究の目的は僕は知りません。どうせろくでもないことだとは思いますが」


まてよ、もしかしてデビが言いたい事って。


「デビお前が気にしてるのは魔法が出来た由来か?」

「妾はそれについて疑問を抱いていた。まあほんの些細な興味じゃがのう」


たしかにこの不思議な力は気になることではある。

研究者たちがこの力を求めていたのだとしたら魔法を使わないのはかなり不自然だな。

と言う事はこの力を得ることは目的ではなかったのか。


「偶然手に入れた力とか?」

「それにその力の基盤は妾の——————」


その瞬間部屋中にお腹が鳴る音が響き渡った。

その出所はいつもお腹を空かしているデビだった。


「腹が減ったのじゃ!妾に飯を食わせろ」

「そう言えば皆さんはまだご飯を食べていないんでしたっけ」

「まあ、私もお腹すいちゃってるしこの町の料理を気になってたから」

「それじゃあ、しかたない。飯にするか」

「それじゃあ僕はアイラを呼びに行きますね」


そう言ってリドルは先に部屋を出て行ってしまった。


「あいつ本当にアイラが好きみたいだな」

「え?」

「いやだっていつも誰かを呼ぶときさん付けなのにアイラだけは呼び捨てだろ。まさかあいつが露骨に好意を見せてくる奴だったとは」

「そうね、たしかにすごいわね」

「妾もお主に露骨に好意を寄せておるぞ」

「ばか、抱き着いて来るんじゃねえよ!」


その時突如アイラを呼びに行ったはずのリドルが血相を変えて戻って来た。


「大変です!アイラの姿が見えません!」


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