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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十九章 失われた王と引き継がれし遺志
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その三 地獄からの帰還

「ここは……」

「随分変わった所ね。この機械は何かしら」

「あまりむやみに触らないことをお勧めするぞ。ここは人体実験を主に行った研究所だからな」


その言葉を聞いてみたことも無い機械からミノルは手を伸ばすのをやめた。

ここもかつての研究者が残した研究所ってことか。

人間を半獣にさせる研究以外にも色々としてたのか?


「それでどうしてこんな所に来たんだよ」

「何って腕を治しに来たに決まってるだろ。左腕は持ってるだろうな」

「ああ、ちゃんと持ってるよ」


俺はしまって居た左腕を取り出す。

自分の腕だがやっぱり腕を持つのは気持ち悪いな。


「じゃあそれ貸して。そしてその左腕をセットして身体状況を打ち込めば……よし、これでいけるぞ」


ブライドは機械に俺の左腕をセットして必要な情報を機械に入力していくと、機械が動き出し始めた。


「それじゃあ、和也はこの機械に入って。そうすれば一時間後には無くなった腕が元通りになってるから」

「この機械の中に入るのか?」


何か細い針が付いた機械の手やはさみのような手とか沢山あって怖いんだけど。

むしろ拷問の機械にしか見えないんだけど。


「かつ今更何ビビってるの。腕なんか普通ならないんだから贅沢言っちゃ駄目よ」

「分かってるよ。それじゃあお邪魔します」


俺は手術台の上に横になると拘束具で手足を拘束された。

その時右腕に何か針が突き刺さる


「っ!な、何だ今の」

「睡眠薬だよ。かつはこれから眠りに落ちるから起きた時には全てが終わってるよ」

「そうか、じゃあ俺は何もせずに治るのを祈ってるよ」


するとミノルが俺の元にゆっくりと近付いて来る。


「次に目が覚めたら教えるね。私が試練で何を知ったのか」

「え?それって……どう、いう……」


自分の意思に反した眠気が体中に襲い掛かり、そして俺はそのまま意識を手放した。


————————————————


「これでかつの腕は治るのよね」

「ああ、最新の技術を終結させたこの装置なら腕の欠損の修復もたやすいぞ。お前のその耳も直してやろうか。元は半獣だったんだろ」

「別に大丈夫。私はそれを選んだから」

「そうか、でもお前は運が良いかもしれないな。なんせ半獣は皆殺しと決まってるからな」


ブライドと言う男は機械の装置を動かしながらミノルに話しかける。

奇妙な機械の手はかつの左腕を完璧に修復する為に液体を傷口にかけたり糸を細かな動きで通したりしている。


「あなたは一体何者なの?かつを助けたって言ってたけど、今の口ぶりからして味方とは思えないんだけど」

「俺は俺の使命を果たすために動きだけさ。不満なら俺を止めればいい」

「それならどうしてかつを助けるの?」


その言葉にブライドは先程まで流暢に発していた言葉を少し止める。

そして少しの間モニターを見ながら操作している音だけが響いた。

だがその沈黙を破ったのは先程の質問を受けたブライドだった。


「あいつは特別だからだ。確証はないけどあいつは俺が守らなければいけない気がする。確証はないけどな」

「確証が無いのに助けるの。それはかつをあなたは昔から知ってるってこと」

「いや知らないぞ。会ったのは初めてだ、これは確実に言えることね」

「それじゃあ何で」

「運命って奴かな」


ブライドはそれだけ言うともうミノルの質問に答えることはなかった。

そして淡々と作業は続いて行った。

作業開始から約三十分が過ぎた時、それは突然起こった。


「っ!!?何!今の物音」

「……まさかあいつ。嗅ぎつけてきやがったか」

「あいつ?今の衝撃を出した人が分かるの?」

「ああ、ここは地下の研究室だ。そこまで衝撃が響くほどの一撃を出すのは並大抵の魔法使いじゃないと無理だな。それに明らかな殺意が上乗せしてるなら答えは一つだ。ガイスが邪魔者を消しに来たみたいだね」

「ガイスって、ガルア様の前の王よね。え?確か死んだんじゃ」

「実際生きてるんだから生きてたってことだよ。そんな事よりもこれは中々まずいぞ。俺はこの場から動けない。つまりに戦いに行けないという事だ」


ブライドは目の前の機械を弄る手を止めずに答える。


「もしかしてそれを動かさないといけないから手を止められないってこと。自動で動かすとか出来ないの」

「もとはそう言う機能もあったが、あいにくこれ一度壊れてるんだよ。それを直せから手動でしか動かせなくなったの。ていうかお前早く逃げた方が良いぞ。無力な人間にこの場をどうこう出来るわけないからな」

「いや、かつを置いて逃げれるわけがないわ!」


するとまた一つ大きな衝撃音が研究所を揺らす。

それは徐々に大きくなっていき、そのガイスが近づいてきているのが分かる。


「あと数秒であいつはここにたどり着くぞ。そうすればお前は死ぬ。かつがそれを望んでいるのか。良いから大人しくテレポートで逃げろ」

「絶対に嫌だ」

「あのなあ、正直言うとお前は邪魔なんだよ。この状態で守りながらの戦いなんかできるわけが無いし、自分の事で手一杯何だよ。俺とかつの為にもさっさと逃げて——————」


だがその願いは叶うことなく強力な一撃が天井を砕くと、上から一人の男が不敵な笑みを浮かべて現れた。


「先程ぶりだな、ブライド。久しぶりの島の観光は楽しめたか」

「正直言うとまだ半分も楽しめてないな」

「そうかそれは残念だ。お前はもうこの先楽しむことはないだろうな。そこの奴と共に死ぬがいい」

「それはお断りだな」


その禍々しいほどの殺意はブライドのみならずその場に居た全員に向けられていた。

ミノルもそれを感じ取り思わず足がすくむ。


(これがガイス……前王の風格。これは私が魔法を使えるか使えない以前に殺される。何も抵抗できずに)


「三秒後にテレポートを展開させる。お前は何もするな」


ブライドはミノルの耳元でそんなことを呟いた。

だがミノルはそれを気にする余裕が無く、ただ目の前の男を注視していた。


「随分と大変そうだな。その男の左腕を治しているのか。だがなぜお前がそこまでする。そんなカスに救う価値が無いはずだ」

「カスかどうかはお前が決める事じゃねえだろ」

「そうよ!かつはカスなんかじゃない。少なくともあなたみたいに人を傷つけるような人じゃないから」

「おいおい、勇敢すぎるだろ。動くなって言ったのに、死ぬぞ」


ミノルはガイスに臆することなく詰め寄る。

それに対してガイスは冷ややかな視線を送った。


「ただの人間が、いや半獣だった奴が俺に意見をするな。不快だ、極めて腹立たしい。俺に対して意見を出来る奴は俺以外居ないんだよ」


それはほんの数秒の出来事だった。

魔法陣が展開されてから放たれるまでほぼ1秒弱、ミノルはただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。

それに反応出来たのはブライド、そしてもう一人居た。


「デビルオンインパクト!!」

「っ!?」


2つの魔法は完全に勢いを殺され、ミノルはその風圧で体が吹き飛ばされた。


「なぜ、ここに地獄の者が居るんだ」

「決まっておるじゃろ。妾の仲間を助けに来たんじゃ」


漆黒の髪に留めた黒のバラと立派な角が印象的なその女性はそう言って牙を光らせた。



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