その十六 逃げない気持ち
すごい体が軽くなった気がする。
今まで背負ってた重荷が一気に全部降りたみたいな感じがする。
特に腕あたりが軽くなった気がするな。
「楽しくなってきたな!さあ殺ろうぜ!」
するとトガが手に魔力を込め始めた。
俺もそれに応えるかのように魔力を込め始めた。
あの魔力の量は多分真っ向勝負を挑む気だな。
だけど俺が魔力を上げたのはその為じゃない。
俺は逃げないと決めたけどそれはただ無謀に突っ込むってことじゃない。
ちゃんと勝つ算段は考えてある。
「行くぞかつ!」
すると先程よりも魔力量が一気に跳ね上がった。
魔力を使ってくれるのは好都合だ。
もしかしたらこれで魔力抵抗が少しはなくなるかも知れない。
いや分かんないけど。
「グランド―――――」
俺はそのままトガに向かって走った。
「ファイヤーー!!」
グランドファイヤ、たしかにすごい魔法だけどスピードも炎の範囲も2回目だったら避けようと思えば避けられる。
俺は体に手を当て。
「ウィンドウ!」
強い風が体に当たり俺は左に一回転した。
かなり勢いよく回転しながら避けたのでバランスを崩すかも知れないと思ったが案外転ばなかった。
俺は勢いを止めずそのままの勢いでトガに突っ込んだ。
トガはまさか避けるとは思っていなかったのだろう未だ状況が理解できずに棒立ちしている。
俺はそのまま突っ込みトガの腹に手を当てた。
「インパクト!」
「―――――――!!!?」
その瞬間強い衝撃波で俺は地面に転がった。
直撃したトガもものすごいスピードで吹っ飛んで行った。
「イッテー……流石に受け身を取るのは無理か。でも手は全く痛く無かったぞ!」
正直また手が痛くなると思ったけどミノルの言うとおり耐性が付いたのか。
「それにしてもかなり遠くまで飛んでったな。何か岩に当たった音もしたし、結構ダメージはあると思うけどな」
ホントに結構なダメージいったよな。
肉眼では衝撃波が強くて目が開けられず瞑ってたけど俺が転がってる間の数秒で既に岩に当たった音がしたよな。
てことはそこまでのスピードが出るほどの威力があったんだよな。
そこにさらに岩に当たったダメージもあるしな。
インパクトの威力+岩の衝撃=……死
「もしかして死んじゃった?………いやいやちょっと待て!確かにものすごい威力だったけど魔力抵抗があるだろ」
そうそれも計算に入れて。
インパクトの威力+岩の衝撃−魔力抵抗=死
「死んじゃったよ!いや自分で考えてるから何も言えないけど、どう考えても死に結んでしまう!」
そうだ実際に確かめればいいんだ。
そうすればすぐに答えは出る。
「よし行こう。大丈夫だ。最低でも気絶は絶対してるはずだ。だから大丈夫」
俺はそう自分に言い聞かせながら向かった。
すると遠くから岩が崩れ落ちたような音が聞こえた。
「え?嘘だろ……まさかな」
でも何かものすごい嫌な予感がする。
これは早めに逃げるのが吉だな。
俺はすぐに後ろを向いて走ろうとした時ものすごい怒号が聞こえた。
「絶対かつ!!!!!」
「ウッサ!元気百倍かよ!」
これは本当にやばいぞ。
「どこに行くんだよ!まだ終わってねぇぞ!!」
段々と近づいて来てトガの姿が見えてきた。
その姿を見て俺は動揺した。
「な……何で無傷なんだ……」
トガの体は服以外まるで何もされてないほど全くの無傷だった。
「おかしいだろ!流石に無傷はありえないだろ!」
「何言ってんだよ。俺とお前の魔力レベルの差がどれだけあると思ってんだ?俺は魔力レベル10だぞ!」
「じゅっ、10!?それって1番強いってことだよな、数値だと」
「そう言うことだ!つまり俺とお前の魔力差は圧倒的ってことだよ!だからお前の魔法なんて聞かねぇ」
確かに魔力差はかなりあるがだけどここまでくらわないものなのか。
だとしたら完全に勝ち目は無いぞ。
これは逃げるしか。
「どこ行く気だ絶対かつ!これからが面白くなる所だろ!!グランドファイヤ!!」
「ちょ―――――!?」
やばい!撃ってくるなんて思って無かったから避けられない!
当たる――――――
「アブソリュートフリーズ!!」
その瞬間目の前に迫って来た炎が一瞬で凍りついた。
「この魔法……来たか!」
「大きい音がしたから何かと思って来て見たらアンタだったのねトガ」
その時のミノルは今まで見せてきた表情とは全く違う怒りや憎しみが込められた表情をしていた。
「アンタはここで倒す!」
「やってみろよ!ミノル!いや白銀の魔女!」




