その二 情報屋
「なあ、ルルさん。ここにサキトって人が来なかったか?」
俺は情報収集のために魔法協会に来ていた。
サキトを探すことである人を見つける為だ。
その為にも情報収集を生業としているサキトに話がしたかったのだ。
「サキトさんですか?うーん、すみません私は知りませんね」
「そうですか」
サキトなら色んな場所に顔を出していると思っていたが、そうでもなかったのか。
とりあえず、次の魔法協会で話を聞くか。
ここから近いのはカルシナシティだな。
「あの、大丈夫ですか?」
「え?」
「いや、随分と思い詰めた表情をしてたので。ここ最近皆さんと一緒の姿も見かけませんし」
ルルさんは心配そうに俺の顔を伺う。
本当に心配してくれてるんだろうな。
優しい人だな、だからこそ心配かけさせたくない。
「全然大丈夫です。またみんなでクエストを受けに来ますので、おすすめのクエスト取っといてくださいよ」
「はい!お待ちしていますね」
俺はルルさんに精一杯の笑顔を見せると、魔法協会を出ようとする。
その時俺は突然肩を掴まれた。
「よう少年、久しぶり元気にしてたかな」
「アカリか、久しぶり。ごめん、俺急いでるからさ」
そう言って俺はアカリの腕を振り払おうとするがアカリは何故か離そうとしなかった。
「少年、顔つきが変わったね。何かを覚悟した顔をしてるよ。そう言う顔は若者には似合わないよ」
「何言って……」
「サキトを探してるんだって。さっき盗み聞きしちゃったんだ。それと、その人の場所知ってるよ」
「本当か!今どこに居るんだ!」
俺は思わず声を上げてアカリに迫った。
アカリは尚も冷静に言葉を発する。
「もちろん教えてあげるよ。でも、約束をして欲しいんだ」
「約束?」
「うん、少年。君は色んな人から愛されてる。だからこそその人達を悲しませるような決断はしちゃ駄目だよ。お姉さんとの約束だ」
「分かった、約束する」
俺はアカリと確かな約束を結び、場所を教えてもらった。
その場所は酒場で一日中酒を飲んでいるという事だった。
俺はすぐに酒場に向かい、サキトを探す。
相変わらず酒場の中は昼間なのにも関わらず、沢山の人が飲みまくって居た。
「すみません、サキトって人いませんか。ここで飲む約束してて」
「ん?サキト?客の名前何ていちいち覚えちゃいねえよ。だが、朝からずっと飲んでる奴ならいるけどな」
店主はそう言うとカウンターで一人で飲んでいる男を指差す。
それは明らかにサキトだった。
「サキト!よかった!お前に会いたかったんだよ!」
「んだよ!きゅうにだきちゅいてくるんじゃへえよ!」
「お前に聞きたい事があるんだ!情報屋だから知ってるだろ!」
「るせー!今はじょうふうややってねえんだよ!どっきゃいけや!」
「しっかりサキト!!真剣な話なんだよ!」
俺は両手でサキトの頬をビンタする。
すると半開きになっていた眼がカッと見開いた。
「うえ!?お前、絶対かつじゃねえか!」
「よかった正気を取り戻したか!実はお前に聞きたい事が合って」
「ちょ、ちょっと待て……うっ!」
「え?ちょ、お前!」
その後ひと騒動終えると俺達は酒場から出てベンチに座って涼んでいた。
「いやあ、すまねえな。さすがに飲みすぎちまったぜ」
「まあ、正気に戻ってよかったよ。早速で悪いがお前に聞きたい事があるんだ」
「お、情報提供か?どういう系統が聞きたいんだ?」
「人探しをしてるんだ」
「人探しか。まあ、普段なら知りたい人によって情報料が変わるが、友達割引きで社会無料にしてやるよ。で、誰を探してるんだ?」
「ハイとローを探してるんだ」
その名前を聞いた瞬間、サキトはニヤリと笑みを浮かべる。
「はは、おいおいまさかかつ、そいつら捕まえてがっぽり稼ぐつもりだろ」
「そんなことしない。こいつらとは知り合いなんだ」
その言葉を聞いた瞬間、サキトは心底驚いた顔をする。
「まじかよ!今金持ちから恐れられてる義賊とかいう怪盗団だぞ!」
「あいつら今そんな風になってるのか。それでどこに居るんだ?」
「奴らは神出鬼没で姿を捉えにくいんだ。だが金に困ることのない貴族どもの館に侵入することが多いと聞くな。貴族どもが集まっているキンメキラタウンには出現するだろう」
「キンメキラタウンか。分かった、ありがとな」
俺が早速キンメキラタウンに向かうために立ち上がると、サキトがそれを止める。
「まあ待て。今までの情報は一般的な情報屋が知っている情報だ。俺はそこらの情報屋とはわけが違うんだよ」
「本当か!さすがサキト!」
俺は再び椅子に座り直す。
するとサキトが嬉しそうに情報を話す。
「実はハイガスという貴族に一通の手紙が届いたみたいだ。そこには今日の夜にお宝を盗むという、内容が書かれていたみたいだ。恐らくハイ&ローの予告状だろう」
「ハイガスの屋敷か。よし、分かったありがとう!!」
俺はサキトに礼を言うと目的の場所までワープで移動していった。
「ふう、あいつも見ない間に色々とあったみたいだな。よし、飲み直すか!」




