その十九 友の遺作
「失礼します。ラミア様、挨拶に伺いました。それとお客様です」
ミレイは2回扉をノックするとラミアの部屋の扉を開ける。
そこには本を読んでいたラミアの姿が合った。
ラミアは俺達が入ったのを知ってしおりを挟んで本を閉じる。
「ミレイさん、お久しぶりです。それと……かつお兄ちゃん?どうしてここに居るの?」
「え?ミレイ様と約束をしていたと聞いていますが」
まずい、これはラミアに話しを合わせてもらうように伝えないと。
「何言ってんだよラミア!一緒に遊ぶ約束をこの前しただろ!忘れる何てお兄ちゃん寂しいぞ」
そう言って俺はラミアに考えが伝わるようにウインクする。
それを見てラミアは何かに気付いた。
「そうだった、ごめんなさいかつお兄ちゃん。ここ最近忙しくてド忘れしてたの」
「忙しかったのか!それなら仕方がないな。ラミアは頑張り屋だからな」
「ありがとう、かつお兄ちゃん。そういうことだからミレイさん、2人っきりにしてくれませんか?」
「分かりました、それでは何かあればすぐに駆け付けますので」
ミレイはお辞儀をしてから失礼しますと言って部屋を出た。
俺はミレイが居なくなったのを確認して、気を緩める。
「はあ、ありがとな。ラミアのおかげで助かったよ」
「それはいいですけど、急にどうしたんですか?誰かと約束をして来たんじゃないんですか」
さてと、ラミアにはどう説明するか。
ラミアはいい子だし、秘密にしてと言えば秘密に居てくれるとは思うが、だからと言って馬鹿正直に話すのも危険だ。
この子ももしかしたら秘密を知っている可能性があるし少しでも、不安要素は無くすべきだよな。
「実は借金の事でガルアと相談したくてな。話しが終わるまで城の中をふらついてたんだよ」
「そうだったんですね。それならお兄様の話が終わるまで、一緒に遊びませんか。私久しぶりにかつお兄ちゃんと遊びたいです」
うっ何て可愛らしい笑顔と言葉なんだ。
正直遊んでみたい、遊んでみたいのだが時間を無駄にするわけにもいかないし……ん?ちょっと待てよ、良いこと思いついた。
「そうだ、それじゃかくれんぼしようぜ」
「かくれんぼ?それはどういったゲームなんですか?」
「1人がどこかに隠れてもう1人はその人を探すんだよ。そして隠れた人を見つけたら見つけた人の勝ちだ。隠れられる場所はこの城の中、俺が一分数えるからその間にラミアが隠れるんだ」
「面白そうですね!分かりました、それじゃあ隠れてきます!かつお兄ちゃん、私絶対に見つかりませんから!」
ラミアは目を輝かせながら部屋を出て隠れに行った。
よし、これでもし誰かに見つかったとしても遊んでたからと言い訳が出来るな。
ラミアには悪いけど、これも秘密を知るためなんだ。
俺はすぐに部屋を飛び出して、風間から貰った地図を確認する。
いくつかの部屋の怪しい場所にマークが記されている。
ここは確か2階だよな、まずは2階の怪しい場所から行くか。
「っ!」
俺は人の気配を感じ取りすぐに壁に隠れる。
数秒経つと人が通り過ぎて行った。
なるべく人との接触は避けて行きたい、隠れながらだと時間がかかるが怪しまれるよりはマシか。
「よし、行こう!」
―――――――
「どうした?黙ったままじゃ分からないぞ。それともそうだと捉えていいのか?」
俺の言葉からそう結論付けたのか?
いや、こいつは元々俺は半獣じゃないことを疑っていたはずだ。
これを機に白黒つけようとしてるのか。
「俺はどっからどう見ても半獣だろ何を言ってるんだ」
「半獣だったらなぜ人間優先で話を進める。何も考えずに発言したのなら、より一層怪しいけどな」
「半獣は魔法が使えて、人間は魔法が使えない。半獣の方が貴重な存在だと仮定したからこその発言だ」
「だとしても言い切るのはおかしいんじゃないのか?」
「過程だと話が進まない気がしたからだ。一旦人間が外の世界に沢山いると断定して話した方が、良いと思った」
「それがお前の答えか?」
まずい、これはもう終わったか?
こうなったら最終手段を使うしか。
「まっそう思ったのなら納得だ。確かにお前の結論は面白いな。俺は外に出てない分からないが、もしかしたらそういう世界なのかもしれない」
「分かってくれたのならよかった」
「そういう人間だけが居る世界って何て言うんだろうな?人間島?人島?いや、日本って言うのか」
「っ!?」
「日本、良い名前だな。自分で言ってみたけど何かしっくりくるな、風間」
何でこいつがその名前を知ってるんだ。
いや、こいつは最初から知ってたんだ、最初から分かってて俺を王にしたのか?
全部分かってたのか?
「どうした?そんな睨みつけて、顔色も悪いし体調でも悪いのか」
「いつから気付いてたんだ」
「何のことだ?」
「気付かないふりをするな。もう分かってるんだろ、俺の正体をいつ知ったんだよ」
「お前が王になった時だ」
その言葉を聞いて俺は拳を握る。
「お前の噂は色々聞いてた。カルシナシティーで実績を積み王の護衛に付くことに成功して、お前は長い護衛期間を経て王が居なくなった時を見て見事に王になった。あまりにも早すぎる。偶然王が辞めたとしてもこの短期間で王になるのは、初めからそれを狙って行動しなければならない。そんな奴が今まで無名なのはおかしいだろ?」
「それが俺を疑った根拠なのか」
「それはきっかけに過ぎない。そもそも俺は日本人を知っていた」
こいつ、どうして日本人を知っているんだ!?
「はは、どうして知ってるのって顔だな。実は数年前、日本人と名乗る男と会った事がある。そいつは支離滅裂なことを言って、混乱した様子で暴れていた。俺はそいつの言っていることが何一つ理解できず、島の外から来た可能性があると見て死刑にした。それが2回ほどあった。そんなに日本という言葉が出てくるんだ、気に留めておくのが普通だろ」
「俺の行動を見て、日本人じゃないかって疑ったのか」
「他の奴らよりもお前は冷静みたいだったが、周りの人に話しを聞くとまるで別の世界から来た者だと思うかのような喋り方をしてたと」
ちっやっぱり誰かれ構わず話しかけるんじゃなかった。
「それからお前の街の発展の仕方は他の奴らよりも変わっていた。先ずアイディアが他の奴らよりも柔軟だった。見事お前の街は娯楽の街として輝いた。それは日本で得た知識か?」
「ああ、そうだ」
「だろうな、まあお前がどうしてこの世界に来たのか。そして日本がどこにあるのかは俺には見当もつかないが、少なくともお前は裏切り者だ」
「裏切り者?日本人だが別にガルアを裏切ったつもりはないぞ」
その時ガルアは拳銃を取り出し風間の方に向ける。
それを見て俺は驚きのあまり声を失う。
「なんだよ、それ」
「お前のお友達が作ってくれたものだ」
「お前まさか、浜崎を!?」
「ご想像に任せる」
あいつ、利用されただけかよ。
結局駄目なんだな、俺達がいくら知恵を絞っても子供に何か出来るわけないんだ。
「なあ、この際だからぶっちゃけるけどよ。カルシナシティーの王ってあんたが消したんだろ」
「開き直ったのか?その質問に俺が答えるとでも?」
「答えてくれないのか……そりゃ答えられないか。そいつ生きてるだろ?」
「何でそう思う?」
「教えるわけないだろ。ばーか!」
「そうか」
その瞬間、引き金が引かれた。




