その十八 互いの矛盾
「今日約束してた風間だがガルアはいるか?」
風間はガルアの城の前で門番と会話している。
俺は木の陰に隠れてその様子を伺っている。
いつかとは思っていたがまさか今日島の秘密について調査することになるなんて、とにかく失敗は出来ないよな。
「分かりました。ガルア様はこの奥でお待ちしています」
風間は門番に導かれてガルアの城に向かっていく、俺はそれを確認するとすぐに移動して侵入経路を確認する。
あそこからが侵入できるんだよな、窓は締まってるみたいだけどワープでなら簡単に侵入できる。
後は見回りが居なくなるのを確認するだけだ。
俺は数分そこで侵入場所が見える場所で待機をしているとついに見回りが動き出した。
「よし」
俺はすぐに動き出して窓に向かう。
今一度周りを確認してから部屋の中を確認する。
「ワープ!」
部屋の中にワープした瞬間
「はあ、本当に疲れ――――――え?」
「え?」
部屋の中で誰かと激突した。
「いってえ……何だ柔らかいものが、あ」
「久しぶりだな絶対かつ」
俺の手は倒れたミレイの胸を鷲掴みしていた。
「ひ、久しぶりミレ――――――ぐはっ!」
「いつまで掴んでんのよ!この変態!!」
ミレイの見事な蹴りは俺の体を数メートル吹き飛ばした。
「相変わらずだな、どれだけ善行を積もうが根っこが変わらないのなら私が粛清してやろう」
「いや、もう粛清されちゃってるんですけど」
蹴られた腹を抑えながら俺は何とか声を縛りだす。
「なぜかつがここに居る。ガルア様に会いに来たのか?」
「いや、俺は……」
まずいな、ここでガルアの護衛であるミレイに会うなんて、変なことは言えないよな。
ここは話題を変えるしかない。
「そう言えば久しぶりだな!何かしてたのか!」
「ああ、ガルア様に仕事を任されてな。この城に帰るのも久しぶりだ」
そう言ってミレイは懐かしむように部屋を見渡す。
「それじゃあもう仕事は終わったのか」
「いや、これからが本番」
「あー大変そうだな」
「そんなことはない。ガルア様に頼られない方が私は嫌だ。ガルア様に尽くすのが私の仕事だからな」
そう言って目を輝かせて力説する。
「相変わらずのガルア好きだな。まっミレイがそれで良いなら俺は何も言わないけど」
「それでかつは何しに来たんだ」
やばい、結局その話に戻るのかよ。
まずいなどう対処しよう。
「ガルア様と会う約束でもしてたのか?いや、今はガルア様は別の客と話をしてたな。なら貴様は何をしに来たんだ?」
やーばーい!完全に疑いの視線を向けられている。
こうなったら俺が考えた言い訳を早速使うしかない。
「ラミアと遊ぶ約束をしてたんだ」
「ラミア様と?貴様、まだラミア様と交友関係になっていたのか。変な事してないだろうな、かつは女を襲う癖があるからな」
「そんなやばい癖を持った覚えはねえよ。とにかくそういう事だから、それじゃあ!」
俺はそう言ってこの部屋から出ようとするとミレイに肩を掴まれる。
「ちょっと待て、私も一緒に行こう。ちょうどラミア様にも挨拶に行こうと思ってたんだ」
「あ、そうなのか。それじゃあ一緒に行くか」
下手に否定するとまた疑われる。
とりあえずミレイと離れたら行動を開始するか。
と言っても時間も無限にあるわけじゃない、あっちの方は今どうなってるんだ?
―――――――
「それで今日は何の話をしに来たんだ」
ガルアは部屋に風間を招き入れると早速話し合いを始める。
「島の今後についてちょっと話し合いたくてな。今のにゃんこ島は大きく変わりつつある。俺自身ももっとこの島をよくしていきたいんだ」
「そんな事か。その議題はわざわざ俺と2人っきりで話す事か?月一の王の会議で話し合った方が有意義な話し合いになると思うけどな」
「みんなの前じゃちょっと話せなくてさ。この島の外の事について話したいんだ」
ガルアは先程まで前向きな姿勢を見せてなかったが、その言葉を聞いた瞬間前のめりになる。
よし、まずはこちらに注意を惹かせることには成功した。
これで数十分は稼げるだろう、マジで成功させろよ絶対かつ。
「島の外の事を聞いてどうするんだ?」
「このままこの島に留まるよりも、島の外に出た方がよりよい環境になると思うんだ。外の世界を知り、他の人話、交流する。そうすれば俺達はさらに文明を発展させることが出来ると思わないか」
これで長丁場の議論をすればさらに時間が稼げる。
こいつがこの事を否定するのは確実、付き合ってもらうぞガルア。
「お前の言う通りだな。俺達がさらなる発展をするにはやっぱり外の世界を知る必要がある。俺もその事については考えていた」
「え?ちょっと待て、本気で言ってるのか?」
「ああ、本気だ?どうした、お前もそれを望んでたんだろ?」
「そ、そうだな」
どういうことだ、何でこいつは俺の意見を肯定的に取ってんだ?
まさか俺をおちょくってる?予想外の言葉を技と言って俺を動揺させようって魂胆か。
だとしたら焦る姿を見せるのはあいつの思うつぼ、ここは普通にする方が一番だ。
「それでお前自身はどうしていきたいんだ?」
「俺自身としてはまずはこの島の王の区分訳を取りやめたい。そしてこの島を一つの国にする。そうすれば外の世界とも交渉できるだろう。先ずはこの島を支える柱づくりから始めるべきだ」
「なるほどな1つの国か。だがそれは必要なことか。それぞれの街を王が管理すれば発展しやすいだろう。その街の王自身に守ってもらうことも出来る」
「だが私物化し過ぎれば全体の管理がしにくくなる。それぞれの特色が出来過ぎていて、足並みを揃えなくなる可能性もある。今はその街の言葉全て町の王に任せているが、何か大きなことをしようとする時はトップに許可を取るようにするべきだ。それが出来ないのならこの島を一人の王が統一させた方が良い」
「なるほどな、確かにその通りだ。だがもしをそれをした場合誰が王になるんだ?この島の人達が決めるとなると、その人が住んでいる町の王を選ぶ可能性が高いと思うが」
「それぞれの王がこれからのにゃんこ島をどうして行こうか、島の人達に宣言をするんだ。そうすれば島の人達が偏りなく選ぶことが出来るだろう。あくまで平等が基本だ」
「なるほど、風間の意見は面白いな。今までにない意見だ、他の王たちは現状に満足していたからな。そう言った意見は新鮮で面白い」
他の王はお前に逆らえないんだろう。
どうせ脅しているに違いない。
「それでどう思う?外の世界に行く前に決めておいた方が良いと思うが、島の代表が居た方が外の島との交渉は捗ると思うが」
「島の外には行ったことがあるか」
「え?な、ないけど」
何だ?どうしていきなりこんな質問をしたんだ。
「そうだな、俺も行ったことがない。誰も行ったことが無いんだよ。つまり外の世界がどうなってるのか、誰にも分からない」
「そうだな、つまり外は危険だと言いたいのか?」
「違う、なぜはお前は島の外に半獣が居ないことを前提に話しているのか聞いてるんだ」
「っ!?」
「島の外の事は誰にも知らない。なのにお前はまるで外の世界には俺達が居ないことを前提に話しを進めてる。それは何故なんだ?」
いきなりのカウンター、まずいな言葉を間違えば一気に疑われ殺される可能性もある。
「それは……島を取り囲んでる装置でそう思った」
「装置か、どうしてだ?」
「島の外に出ようとする者を殺す装置。それは言い方を変えれば島に誰も入れないようにする装置だ。つまりこの島には守るべきものがあるってことだ。守るべきものは考えられるものは2つ魔法か半獣。俺が知っている種族は人間と半獣だけ、島の外にも半獣が居るとしたら装置を止めるか壊すかをするはずだ。閉じ込められている者たちがそれをしないという事は半獣は島の外には居なく、この島で生まれた種族だから、だからこそこの島に居ることが自分たちを守ることにもなる」
「でもそれだと1つ矛盾点があるぞ」
「ああ、そうなると島の歴史がおかしい。この島がただの島ならこんな装置はあり得ない。歴史の戦争も人間か半獣どちらかが最初から住んでいなければ起こらないことだ。そしてもし住んでいたとしたらそんな装置が作られるはずはない」
「違う、俺が言ってる矛盾はそれじゃない」
ガルアの言葉を聞いて俺は一瞬固まる。
「なぜはお前が人間ではなく、半獣の方が外の世界に居ない者だと断定したんだ。なぜ人間がこの島で生まれた者だと言い切るんだ。なぜを人間を基準に話しを進めてるんだ。お前は半獣だろう」
冷や汗が止まらない、心臓が高鳴る。
これはまずい、墓穴を掘ったのか。
「お前もしかして、半獣じゃないのか?」
これは非常にまずい事態だ!




