その十六 日記の秘密
「本当にそんな魔法があるのか?」
「名前は俺が勝手に付けたが、その魔法の存在は確かだ。そして、この魔法を知っている者はこの島の秘密を知っている者」
「つまり、王たちが知ってるってことか」
「おっお前もだんだん分かって来たな。俺がこの数年で得た情報は隠された魔法がある、島の秘密は王たちで隠されている、そして最後に秘密の施設がある」
風間は指を三つ立てて自分が得た情報を数える。
そして俺は最後の情報に引っかかった。
「施設って妙に文明が進んだ場所か?」
「ああ、機械的なものがいくつかある場所だ。この島には合わない機材や道具がそこには置いてあった。その口ぶりだとお前も見たことがあるのか」
「ついさっき見つけたんだよ。確か名前は……さる山だったかな。そこには拷問器具とか檻が合ったから多分実験施設だと思う」
俺の話を聞いて風間は口に手をあてて考え始める。
「あそこか……確かその山には凶暴なモンスターが住処にしていると聞いたが。まさかその傷、そいつらと戦ってきたのか?」
「ああ、シントに試練を出されてそれをクリアすればもう関わらないって約束したんだ」
「シント?聞かない名だな。その約束は黒の魔法使いとしたんじゃないのか?」
「シントは黒の魔法使いのリーダーだよ」
その言葉を聞いた瞬間、風間は血相を変えて俺の肩を揺さぶって来た。
「お前それどういう事だ!黒の魔法使いにはまだ仲間が居たのか!?」
「ちょっ!いてえよ!離せこの馬鹿!殺す気か」
俺はすぐに風間を振りほどく。
こいつはマジでムカつくな。
「それで、その話本当なんだろうな」
「本当に決まってんだろ。何で嘘を付かなきゃいけないんだよ。ていうか、今の謝れよ」
「なるほどな。黒の魔法使いを作った奴は別にいるのか。そうなると、まだ表に出てない組織が居る可能性もあるな」
「おい、俺の話聞いてんのか!謝れよ!」
俺は風間の胸ぐらを掴む。
だが、風間は動揺することなく平然としている。
「やめとけ、今のお前の体じゃ俺に指一本触れられない。対して俺は素手で倒せる」
「ふざけんなよ!今の俺は昔とは違うんだよ。何なら決着を付けてもいいぞ」
俺は風間を睨みつけるが風間はこちらを見ようとしない。
俺はばかばかしくなり、風間から乱暴に手を離した。
「懸命だな」
「うるせえ。お前と話してたら頭が痛くなる。実際に今痛いし」
俺は頭に痛みを感じてその場に座る。
「まずはお前は傷を治せ。じゃないとただの足手まといだから」
「あ?どういう意味だよ。今からどこか行くのか?」
「決まってんだろ。ガルアの城に行くんだよ」
「が、ガルアの城ってまさか!」
「ああ、いよいよ知る時が来たんだよ。この島の秘密をな」
「それははや――――――ぐっ!」
俺は立ち上がろうとすると強烈な痛みが頭に響く。
「ああ……痛い……」
「おいおい、死ぬんじゃないぞ。お前にはまだ働いてもらうんだから。それに俺を待たせた罪を償ってもらうぞ」
「ふざけ……うっああ」
やばい、これは意識が遠くなって……
「おい、かつ?おま、おい!寝るなかつ!」
―――――――――
「……ここは」
「起きたか。お前重症だったらそう言えよ」
こいつ、俺の姿を見て重傷だと思わなかったのかよ。
ていうか、ここは俺の部屋か、こいつ勝手に入りやがって。
「何やってんだよ」
「興味深そうな本があったからな。今それを呼んでる」
「お前かってに読んでんじゃねえよ」
「いいだろ。減るもんじゃねえし。しかし、この本どこで手に入れたんだ」
風間が呼んでるのは魔法陣が手書きされた本か。
「ああ、その本はこの家に置いてあったんだよ」
「この家?この家はどうやって手に入れたんだ?」
「魔法協会で依頼をクリアして手に入れたんだよ。大変だったんだぞ、中にモンスターが住み着いてて」
「それはどうでもいいが。この本に手を加えてないだろうな」
こいつ俺に聞いといてなんて自分勝手な奴だ。
まっ今に始まった事じゃないか。
「加えてねえよ。その日本語は最初からだ」
「これは日本人じゃないな」
「俺もそう思う」
「ほぉその理由は?」
「まずはお前からだ」
こいつは俺から情報を搾り取るつもりだ。
そんなわけには行かない、俺は家族の為にもこの島の秘密を知らなければならない。
「まあいいだろう。俺はこれを見つけて確信した」
そう言って風間は袋に入った紙切れを出してこちらに渡してきた。
それはほんの小さな紙切れだったがそこには一文字だけ、日本語でIと書かれていた。
「これって何だよ」
「さっき言った施設で見つけて物だ。三つほど見つけたがこれしかなかった。だがそれは決定的な証拠だ」
「これがか?」
たった一文字、焼け焦げた紙に刻まれたIという文字。
これで何が分かるんだ。
「もしそれがただの日本語なら日本人がたまたまこの施設に入り、その時に紙を落とした可能性もある。だがそのIという文字は普通紙には書かない。日本人なら日本語で書く」
「その人が英語を使ってる人の可能性もあるだろ」
「外国人を連れてきたことはないと言っていた」
風間は確認したのか、そう言えばアキサさんに最近会ってないな。
「外国人でもなく英語を使っているところを見ると、ここの研究情報を書いていたんだろうな。そしてもし日本人だとしてもここまでたどり着きここで研究するには十年以上はかかる。それに、そこまで行った奴はいない。十中八九この島の者だ。そしてこれを見て明らかになった事実はこの島の言語は外とは違うという事だ」
「っ!待て待て、今さらっととてつもなく重要なことを言わなかったか!」
「次はお前だ。何で日本人じゃないと思った」
くそ、こいつはまじで自分で仕切らない時が済まないのかよ。
「俺はある人の日記を見たんだよ。その日記には明らかにこの島ではないところで生きていた内容が書かれてた。だからこの島の外に日本語が使える人がいるんじゃないかと思った」
「その日記を見せて見ろ」
「ふざけんな、お前みたいな奴に大切な日記を見せるわけないだろ」
「それじゃあ、日記の文字は何で書かれてた」
「え?それはこの島の言語だったけど」
すると風間が何か考え始める。
こいつは何処に引っかかってるんだ。
「それは本当に持ち主が書いたものか?」
「そりゃそうだろ。本人じゃないって証拠がどこにあるんだよ」
「その日記よく見て見ろ。消された跡がないか?」
「そんな注意深く見たことねえよ。そんな何回も見る内容じゃないし」
「良いから見ろ」
俺は風間に言われた通りもう一度日記をじっくり見る。
だが消された跡らしきものはなく、自然に書かれていた。
ん、何かここ少しおかしくないか?
いや気のせいか、書いた日も違うし変わることもあるよな。
「何か気になったことがあるんだろ。隠さず言えよ。それが重要な証拠になるんだから」
「文字の書き方が少し変わったなと思って。子供の頃と今の頃に書いたもので少しだけ差があるんだよ。でも文字の書き方なんて数年経てば変わるよな」
「……日記の日付は飛んでるのか?」
「ああ、まあな」
「本当に俺が見るのは駄目なのか?」
風間は真剣な表情で日記を見るのを頼む。
情報が欲しいのは分かるが他人の日記をそう簡単に見せるのは駄目だよな。
「普通他人の日記を勝手に見るのは駄目だろ」
「緊急事態でもか?かつ、俺達は少しでも情報を手に入れなければならない。分かるだろ?」
「日記の内容はとても悲惨な物だった。俺だったらこの内容を誰かに見られるのは嫌だ。俺はこの日記の持ち主の人生を勝手に人に見せることは出来ない」
そうだ、これを託してくれたあいつに悪い。
やっぱり見せるのは駄目だ。
「分かったよ。それじゃあいくつか聞きたい事がある。その日記に書かれてる文字は綺麗か」
「文字の練習のために書き始めたから、綺麗とは言えないかもな」
「今の日記の持ち主が書き始めた文字は綺麗なのか」
「子供の頃よりはだいぶ綺麗だな」
「なるほどな、ちなみに子供の頃と現在で書き始めた時間が違うって言ったな。日記を何でまた書き始めたんだ」
「日記の持ち主は記憶を失ってたんだよ。それで昔の事を思い出せるように日記をガルアが渡したんだよ」
俺は日記を読み返してその情報があってるかどうか確かめる。
すると風間が何か分かったように口元をにやりとさせる。
「かつ、やっぱりその日記信憑性が薄いな」
「え?どうしてそう思うんだよ」
「文字を練習する為に書き始めたって言ったよな。それなのに改めて書き始めた時は文字が綺麗になっていた。しかも記憶を無くしている奴が綺麗に文字を掛けると思うか?日記に書いたことを忘れるほどの記憶喪失者が少なくとも記憶をなくす前よりも、きれいに文字を書くのは難しいと思う」
確かにそうだ、ミカは研究所で拷問に近い苦痛を味わっていた。
日に日に文字もまともに書けなくなっていたし、普通に考えてまともに文字を書くのは難しいよな。
もしかしたら記憶をなくした後文字を勉強したかもしれないけど、今の時代に勉強という物が無く魔法で何でもできる時代で、わざわざ文字を書く機会も少ない。
読み方を覚えても書き方を練習する機会は少なかったはず。
「それにガルアがわざわざ渡したのも怪しい。その日記外の世界のことが書かれてるんだろ?ガルアがその日記の中身を確認していないわけがない」
「それじゃあ、これはガルアがわざわざ書いたってことか?どうしてそんなことをするんだよ」
「決まってんだろ。お前をおびき寄せる為だろ。その内容、何も知らない奴が見たらただの妄想で片付くが、知ってるやつが見たら反応する。その反応する奴を対象にしたんだろうな。秘密を知ってるやつをあぶりだすために」
「うそだろ……じゃあこの日記の内容は嘘なのか?」
「それは分からないな。分かるのは本人だけだろ」
この日記は罠だったのか?
いや、そんなわけでも嘘の方があいつの人生は救われるのか?
「なあ、風間。お前がこれがガルアが書いたものだって確証したの、別の理由があるだろ。さっき言ってた外の言語と関係があるんじゃないのか」
「バレたか。島の外に付いて書かれてるって聞いた瞬間、それが日本語で書かれてないのは不自然だと思った。この島の言語は恐らくこの島でしか使われてない」
「どうしてそう確定するんだ。日本語はあるかもしれないでも、この島の言語も外で使われてるかもしれないだろ」
「確かにな。でももしそうだとしたら日本語がなぜここまで浸透してないんだ?色んな言語がこの島にあるのなら、複数の言語が書かれた書籍あるいは他言語を使用する人が居てもいいだろ。だがこの島には一つの言語しか使われてない。日本語がマイナーなら日本語で書かれた書籍は存在しないはずだ。だがこれは日本語で書かれている。そしてこの紙切れは英語だ。もう分かるよな」
「この島の言語はこの島だけのもの。日本語と英語こそ外の世界で使われてる言葉。それってまるで俺達が居た世界じゃないか!」
まさかこんなことになるなんて、言語こそこの島の秘密につながる重要な物だったのか。
「確かにそうだが、この世界が俺達といた世界というには少し無理がある」
「え?どうしてだ」
「宇宙のどこかの惑星で同じ言葉を使っている可能性もあるだろ。ここが俺達が居た世界なら変わりすぎてる」
「ま、まあ確かにそうだな。同じ言葉を使ってるだけで同じ場所とは限らないよな」
「まあこれでお互い新しい情報の交換が出来たな。お前の傷が治ったらすぐに出発するぞ」
そう言って風間は俺に回復のポーションを渡してくる。
「それは分かってるけど、俺今借金があってその返済をしないといけないんだよ。その仕事も溜まってるからまずはそれを終わらせないと」
「借金だと?しょうがねえ、俺が払ってやるから何ガルアか言えよ」
「いや、これは俺がちゃんと働いて返さないといけないことだから。そんなずるできねえよ」
「良いから額だけでも言えよ」
俺は少し言うのを躊躇ったが言うだけならと思い、額を言った。
「ろ、6億ガルア……」
「はあ!?6億ってお前何やらかしたんだよ!」
「俺のせいでこの町が被害にあって、家とかも壊れたらしくてその修繕費とか治療費とか人件費とか諸々含めて……」
「お前それガルアに言われたのか」
「そうだけど」
すると風間は頭を手をあてて呆れた顔をする。
「お前露骨に足止めされてんじゃねえか。そんな事でそこまでの額にはならねえよ!」
「え?そうなのか!」
「当たり前だろ。島の一部のちっぽけな街の半分が被害にあった所で百万が妥当だ。その他諸々含めたとしても重要な場所を壊さなきゃせいぜい1億が妥当だな。魔法があるんだから人件費も修理費もそんな掛からねえだろ」
「ま、まじかよ。俺はめられたのか?」
「とにかくお前の傷が治ったらすぐにでも出発だ。覚悟決めろよ。ここから先は死ぬかもしれないぞ。じゃあ、しっかり休めよ」
そう言って風間は部屋を出て行った。




