その十四 何かの始まり
「……っ」
「ん、目が覚めたッキャ」
目を開けると目の前には白い巨大なゴリラと謎の機械が見えた。
「ここは……っ!」
俺は起き上がろうとするが腕に痛みが走り、そのまま倒れる。
「まだ立たない方が良いッキャ。山で取れる薬草でケガは治したが、折れた個所は治ってないッキャ」
「俺はどれくらい寝てたんだ」
「丸二日ッキャ。その怪我にしては早く目覚めたッキャ」
周りを見渡すととても山に居るとは思えない。
ここはどこかの建物の中か?
いや、これはもしかしたら。
「なあ、ここどこなんだ」
「ここは山に隠された場所キャ。山はこの施設を隠すためのものッキャ」
「秘密の場所か!?もしかしてウキャはここがどういうところか知ってるのか!」
もしかしたら一気にこの島の秘密に触れられるかもしれない。
思わぬところでこんな場所に来れるなんて。
「知らないッキャ。ただ、ウキャはシンラにここを守れと言われたッキャ」
「シンラって確か王様だったよな。あのシンラに命令されたのか」
「王様かどうか知らないッキャ。ただ恐ろしく強かった、逆らうことも出来なかったッキャ」
ウキャに任せたってことはウキャの強さを知っていて、任せたってことだよな。
つまりここは重要な場所だってことだ。
調べてみないと。
「何か知りたいなら諦めた方が良いッキャ。ここにある物は何一つ動かないッキャ」
「そうなのか」
灯りの代わりに焚火を炊いているところを見ると、電気も通ってないのか。
でもまず間違いなく、昔には機械を使う文明が合ったんだ。
日本と同じ魔力の代わりに電気を使ってるのか。
てことはわざと文明を発展させない理由があるのか。
こんな隠し方してるんだ、見られたくない知られたくないことが過去にあって、その事を知っている人達が隠した。
そうなると王たち全員がそうなのか。
もしくは一部の人達、それか王様以外にもこの事を知っている人が居る。
例えば、王に近い人、十二魔導士とかか。
「考え込んでどうしたッキャ。ここは絶対かつにとって特別なものッキャ」
「まあ、そんなところだ。にしてもここは何のための施設なんだ?」
俺は炎の魔法で周りを明るくさせる。
目の前には壊れたモニターと謎の機械、パソコンのような物のあった。
そして何かを閉じ込めていた巨大な檻や拷問器具などもあった。
何かを閉じ込めてたのか?もしかしてこの島のモンスターについて調べてたとか?
だとしても隠す理由が分からない、それ以上の何かがあるのか。
これだけじゃなさそうだな、他にもどこかに似たような施設か、それともまた別の施設があるのか。
「ウキャに聞かれても何も知らないッキャ。とりあえず、寝とくッキャ。死にはしないだろうが、傷は治ってから言った方が良いッキャ」
「いや、試練はまだ終わってない。ここが山の中なら早く降りないと」
俺は折れた腕を庇いながら、何とか立ち上がる。
「試練?決闘なら絶対かつの勝ちッキャ」
「そのことじゃない。とにかく俺は山を降りる。ミノルは何処だ?近くに居るんだろ」
「本気キャ?」
「本気だ」
するとウキャは他のモンスターに命令してミノルを連れてくるように言う。
サルたちはミノルを連れてくるが、まだ眠ったままだった。
ミノルの方もまだ試練は終わってないのか。
「ありがとう」
俺はサル達からミノルを受け取り背負うがその時、また痛みが走る。
「っ!……はあ、ありがとう。ウキャのおかげで傷が治ったよ。それじゃあな」
俺はそのまま出口に向かおうとするが場所が分からなかった。
「ウキャ、出口は何処だ?」
「今開けるッキャ」
そう言ってウキャは力任せに扉を開ける。
どうやら電気が通ってないから力任せで開けるしかないのか。
「ありがとう、それじゃあな」
「ちょっと待て、念のため送るッキャ」
「これは俺の試練だ。大丈夫だ」
そう言って俺はウキャのお別れして山を降りて行く。
「ああ、やっぱりまだ傷が治ってないみたいだな」
歩くたびに痛みが走る、激痛と言うほどではないがそれでも歩くのが辛い。
「はあ、大丈夫。大丈夫だ。俺は絶対にやれる」
俺は傷がまぎれるように声を出し励ますことにした。
「大丈夫だ俺は絶対やり遂げる。だから、ミノルいつでも帰って来い。ずっと待ってる、俺はお前を信じてる」
何時間経過しただろう。
だが、後もう少しだ。
俺が試練をクリアすれば、ミノルがまだでも安全な所で休むことが出来る。
俺がはやく試練を突破しないと。
「後、もう少し……もうすこ――――――」
「ん、んん……」
その瞬間、俺の足は止まった。
「ミノル?ミノル!!」
俺はゆっくり下ろしてミノルが起きたか確認する。
「うう……かつ?」
「ああ、俺だよ!よかった、試練を突破出来たんだな!」
俺は思わずミノルを抱きしめる。
そしてミノルも俺を抱きしめ返す。
「うん、うん!私やったよ。試練を突破出来たよ。負けなかったよ」
「ああ、頑張ったな。俺も後もう少しで突破できる。下山まで後もう少しだ。全部終わったら早く言えに帰ろう」
「うん、そうだね。帰ろう、私達の家に」
俺達は立ち上がり、前に進んでいく。
ミノルを俺が怪我をしていることに気付き、肩を貸してくれた。
二人で同じ歩幅で進んでいく。
ああ、後もう少しだ、後もう少しで試練が
「……嘘だろ」
そんなわけがない、そんなはずがない。
だって、試練は後もう少しで達成されるんだ。
後もう少しで終わるのに、どうして。
「久しぶりだな、絶対かつ」
どうして黒の魔法使いが居るんだ!
「すごいね、もう少しで試練達成だ、おめでとう」
「ま、テメエらだったら達成できると思ってたけどな」
「……」
「何しに来たんだお前ら!」
こいつらもしかして俺達の邪魔しに来たのか。
冗談じゃない、後もう少しなのにこんな所で終わってたまるか!
「ミノル下がってろ。お前は試練を突破したんだ。お前が逃げても何も文句はないはずだ」
「俺達は来たのは別に貴様の邪魔をしに来たわけではない」
「いまさらお前の言葉を信じると思ってるのか。邪魔しに来る以外目の前に現れることなんてないだろ!」
絶対に負けない、大丈夫だ。
俺もあの時から強くなった。
自分の身を守るくらいは出来るはずだ。
俺が魔法を放とうとした瞬間、強烈な痛みが首筋に走る。
「っどうして……ミノル?」
「ごめん、かつ」
その言葉を聞いて俺は深い眠りについた。
何時間が経ったのだろう、目が覚めたら外は暗くなっていた。
「ミノル?」
あの後どうなったんだ、俺は何でミノルに眠らされたんだ。
俺は周りを見ると目の前に誰かが居た。
それは、俺が知っていて俺が守りたかった者……
「ミノル!ミノル!!」
ミノルは動かなくなっていた。




