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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十七章 さよなら、ミノル
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その六 それは終わらない

「おーい、今帰ったぞー!」


かつは元気よく玄関の扉を開ける。

飴により全身ずぶぬれの為、玄関で濡れた服を縛る。


「おかえりんねてんせーいってかつっちずぶ濡れじゃん!」

「ちょっと雨が降ってな、それよりお客さんだぞ。入っていいぞ」


私はかつに入るように言われて、家の中に入る。

そこには懐かしくもあり、暖かくもある仲間たちが居た。


「ど、どうも」

「何じゃお主は!まさか妾達の家に泥棒しに来たのか!そうはいかないのじゃ!ぎゃっ!」


その時、かつは濡れたローブをデビにぶつける。


「客だって言ってんだろ!ごめん、ミノルこいつ空気読めなくて」

「ぜ、全然大丈夫。気にしてないわ」


なんか変な感じに他人のように扱われるのは。

ここは私だけが居ないパーティーなのよね、ワタシだけが居ない場所‥‥‥


「どうした?」

「っ!な、何でもないわ。ちょっとぼーっとしちゃって」

「もしかして風邪でも引いたんじゃないか。リドル!お風呂沸いてるか!」

「いつでも大丈夫ですよ!料理ももうすぐできますから、先に入っててください!」


そう言って厨房からリドルの声が聞こえてくる。

このやり取りも今となっては懐かしいな。


「だってさ、ミノル先に入ってきなよ」

「え?でも」

「お客さんをずぶ濡れのままにするわけには行かないだろ。遠慮しなくていいからさ」

「‥‥‥それじゃあ、お言葉に甘えようかしら」


私は迷いなくお風呂場に向かう。


「すごいね、ミノッち!始めて来たのにお風呂場分かっちゃったんだ!」

「え?」

「おい、メイ!ミノルがビックリしてるだろ!」

「あれ?驚かせちゃった?ごめんね、私メイ!よろしくー!」


そう言って元気いっぱいに挨拶すると握手を求めてくる。

この感じ変わらないな。


「うん、よろしくね――――――ひゃ!」

「それじゃあ、初めましてのギュー!」


メイはいきなり私の体を自分の方に引き寄せて抱きしめてくる。

だが、ずぶ濡れになった体を抱きしめたことでメイも触れてしまった。


「あ、やっちゃった」

「やっちゃったじゃねえよ!何自分から濡れに言ってんだよ!」

「えへへ、ごめんちゃい!」

「メイはどうしようもないのう。その点妾はこんな失態を犯しはしないぞ」

「お前、今日のこと忘れたわけじゃないだろうな」

「さて、ご飯はまだかのう。リドル妾も手伝うぞ~」


そう言って逃げるようにリドルの元に行く。


「その気持ちだけで結構ですので、何もしないでください」


だがすぐに追い返されて、デビがリドルと喧嘩している。

この騒がしい感じ懐かしいな。

これって現実なのかな、それとも夢なの。


――――――――

お風呂から上がると、皆があわただしく机に料理を並べていた。


「うはー!上手そうなのじゃ!早く食べよう!」

「待てデビ!皆が席に座ってからだ」

「あっ!ミノッちお風呂から上がったんだね!ほらこっちに来て!ここに座ってね!」


メイはお風呂から上がった私を捕まえて席に座らせる。

この匂いそしてみんなで食卓を囲む感じも懐かしい。

最近は働いてる場所でご飯を食べることが多かったし、少し嬉しいかも。


「よし、皆座ったな!それじゃあ、いただきます!」

「「「「いただきます!!!!」」」」


その後、食事を済ませて私はリドルに入れてもらった紅茶を飲んでいた。


「なあなあ、お主今日は泊まるのか?」

「へ?」


そう言えば考えてなかった。

そもそもここに来たのも今の現状を確認するだけだったし。


「もう夜遅いし、泊って行けよ。空き部屋があるからそこで寝られるし」


空き部屋?

この人数で空き部屋が出るはずないんだけど。


「それいいね!ミノッチ、泊ってきなよ!もっといっぱいお話ししよ!」

「待て待て、ミノルは妾と話すのじゃ!空き部屋とは言わずに今日は妾の部屋で寝るとよい。」

「えーずっるーい!私もミノッチと一緒に寝たいー」


そう言ってメイは頬膨らませながらデビの頭を突っつく。


「ええい!やめんか、うざったいのじゃ!それにお主はかつと一緒に寝るんじゃからいいじゃろ!」

「え?」


その瞬間、持っていたコップを落としてしまう。


「おい、大丈夫か!?」

「ご、ごめんなさい私!」

「大丈夫ですよ。僕が片付けときますから」


リドルは瞬時に割れた破片を回収していく。


「そうだ、私何か拭く物持ってくるわ」


私は急いで台所からタオルを持って来る。

そして触れた床を乾いたタオルで拭き取る。

濡れた場所を全て拭き取り、紅茶で濡れたタオルを絞るために台所に行く。


「ねえねえ、かつっち。一緒にお風呂入ろうよ」

「っ!?」

「昨日も一緒に入ったじゃねえか。しょうがねえな」

「やったー!かつっち大好きー!」

「っ!!?」

「ミノル!お主絞りすぎて、タオルブチ切れとるぞ!」


私はデビの声でハッと我に返りタオルを見る。

それは見事に引きちぎれていた。


「はっ!ご、ごめん!つい‥‥‥」

「お主ついでタオルを引きちぎるのか。意外と恐ろしい奴じゃのう」


どういうこと!?

今の会話は何!?

今の会話まるで‥‥‥まるで!


「そんなわけないよね」

「何がそんなわけない何ですか?」

「うわっ!びっくりさせないでよ!」

「す、すみませんでした」


確かにメイはかつに好意を寄せてた節はある。

最後の最後何てほ、ほっぺたにキスしてたし。

でもでも、さすがにそこまでの関係は。

知りたい、でも知りたくない。


「メイー!早く来いよー!」

「リドル!かつとメイってどういう関係なの!?」

「っ!急に来ましたね。もちろん、薄々気づいて入ると思いますが恋人同士ですよ。よくありますからね。パーティー同士で助け合っていると、いつしか仲間以上の関係になってしまうのは」

「そう」


私はそのままゆっくりと椅子に座る。


「何しておるのじゃ、ミノル」

「何もしてないわよ」

「その割には果物の皮を次々とむしっておるが食べないのか?」

「何もしてないわよ」

「とりあえずデビさん、全部食べてください」


――――――――――

「それじゃあ、何して遊ぶのじゃ!」

「もう寝ましょう。夜も遅いし、うるさくしたらみんなの迷惑になるわよ」

「むーミノルはつまらないのう。それじゃあ、妾の相談に乗ってくれ」

「いいわよ」


デビちゃんが相談なんて珍しいわね。

もしかして私が気付かなかっただけで、仲間同士で不満なことがあったのかしら。


「妾、かつの事が好きなのじゃ」

「え?」


予想外の相談に思わず固まってしまう。


「だけど、あやつメイとくっつきおって悔しいのじゃ。妾の魅力をかつに気付かせて振り向いて欲しいのじゃ。でもどうすればよいか分からないし、しかも妾がやったことがすべて裏目になってしまうし、どうすればいいのじゃミノル?」

「そ、そういう事は仲間に聞いた方が良いと思うけど」

「こんなこと言えるわけないじゃろ。リドルに言っても馬鹿にされるじゃろうし。それに、お主には話しても良いかなと思った。なぜだがお主とは初めて会った気がしないのじゃ」

「デビちゃん‥‥‥」


どうすればいいのか分からない。

今の私にその相談を受ける資格はない。

ましてや、今の私は完全に部外者、余計な口出しをして関係が悪くなったりしたら。


「ごめん、デビちゃん。私にはよく分からなくて」

「そうか、お主にはそう言った経験がないのか、でも妾は諦めないのじゃ!いつの日か振り向かせてみせるのじゃ」


そう言ってデビの体から自信が溢れ出ていた。


「どうして、そこまで頑張れるの?デビちゃんは諦めたりしないの。もう、無理だと思わないの」

「うーん、確かにあやつはメイしか見ておらぬし妾を好きになるのは不可能かもしれん。でも妾はそれでもあやつが好きなのじゃ。この想いが無くならない限りは諦めたりせん!」

「そう、なんだ。強いね、本当に強いよ」


周りの事ばかり気にして、言えなかった。

でもかつがメイと付き合ったと知った時、胸が締め付けられるくらい苦しかった。

でも今はまだこの気持ちを抑えておこうと思ってた。

だって私は1人じゃないから、仲間が居るから。


「ごめん、デビちゃん。水飲んでくる」


気持ちを落ち着かせるために水を飲みに行った。


「ごくごく‥‥‥ぷはぁ‥‥‥ふう」


この世界は私が知っているような世界じゃない。

でも、これが現実なの。


「頭が痛い、疲れたし寝よう」


そうだ、明日になったら何関わるかもしれない。

私はデビの部屋に向かって階段を上る。


「っ?何の音?」


何か声が聞こえてくる、誰かの息遣い。

その音に向かって私は歩く。


「かつの部屋?」


この音はかつの部屋から聞こえてくる。

何かがきしむ音、そして何かを打ち付ける音。

私は恐る恐る扉に耳を当てる。


「っ!!」


その瞬間、私はすぐに走り出して家から飛び出した。


「はあはあはあはあはあ!!」


走って走って走りまくった。

肺が避ける位、足が棒になるくらい走った。

そして、止まった。


「はあはあはあはあはあ」


ありえないこれが現実?

これが現実―――――――


「違う!これは夢よ!絶対の夢のはず!早く覚めて覚めて覚めて覚めて覚めて!!」


何度も何度も頬つねり、何度も何度も腕を叩く。

だが残ったのは痛みと虚無感だけだった。


「何で痛いの?何で苦しいの?何でこんなに‥‥‥空が綺麗なの?」


これは間違いなく夢、終わらない悪夢。



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