その三 厄介な敵
「はあ、はあ、はあっく!」
「ウキャウキャウキャ!」
俺は今ミノルを抱えて、モンスターから逃げている!
この山は間違いない、前にマネギアルを取りに行った山だ。
確かこの猿のモンスターは数がとんでもなく居るんだよな。
しかもミノルを抱えてとなると、なお厳しい。
「ウキャ!」
「うおっ!あぶねえ!」
しかも動きも早い!
この恰好じゃ、俺の動きも半減する。
何とかミノルを安全な場所に。
「ウキャーーーー!!」
まずい!囲まれた!
ワープで逃げるしかない、でもそれじゃあミノルが襲われる。
「くそ!やるしかねえ!」
ミノルが居るからあまり撃ちたくなかったけど、この状況じゃ仕方ない。
俺はミノルが吹き飛ばないようにしっかりと掴んで空中に魔法陣を展開する。
「インパクト!!」
その時、体中から魔力がはじけ飛ぶ感覚に襲われ次の瞬間目の前に居た数十体のモンスターが消滅した。
そして地面はえぐれて、魔法が通った後には何も残らなかった。
「え?えええええ!?」
な、何だこの威力!
明らかにパワーアップしてやがる!
まさか、あの時魔力を無理矢理上げてそれと同時に魔力レベルを上げれたのか。
「ウ、ウキャー!!」
するとサルたちが俺の魔法を怖がって逃げて行く。
「まあ、結果オーライか」
俺はミノルの方を見る。
まだ起きる気配はなく、眠っている。
ミノルも今戦ってるっとことだよな。
「よし、俺も頑張るか」
俺は自分の頬を叩き、気合を入れる。
すると近くにちょうどよさそうなツタを見つける。
俺は木に絡まっているツタを解き引っ張って強度を確かめる。
「よし、これなら大丈夫そうだな」
俺はツタを自分の体に巻き付けてミノルを背中におんぶしてツタで固定する。
「それじゃあ、行く――――――」
「ウキー!ウキー!」
ん、この声さっきのモンスターが帰って来たのか。
ふっあの程度なら何匹来たって余裕‥‥‥
「ウホッウホホっ!」
「ウホホホッ!」
「う、嘘だろ!」
何だあれ、ゴリラか!
サルたちよりも体の大きさも身長も倍以上だ。
あの筋肉が詰まったパンパンの腕が当たった時には俺の体は弾け飛ぶだろ。
しかも、また数が多い。
「ウホー!!」
その瞬間、数十匹のゴリラ型のモンスターが一斉に襲い掛かって来た。
「ウホー!」
「っはや!」
その巨大な体では想像できないようなスピードでこちらに拳を振り下ろしに来る。
だが、ミノルを背中に括り付けたことにより、先程よりも早く動くことが出来、何とか避けることに成功する。
だが、そのままモンスターの拳は地面にヒビを入れた。
「なっ!何て威力だ。当たったら怪我じゃすまないぞ」
パワーもスピードもサルとは比べ物にならない、完全に上位互換。
くそ!あまり長いは出来ない、避けつつ下山しないと。
俺が後ろを下山する方を見た瞬間、その道をゴリラが遮って来た。
「っ!うおっ!」
まさか、分かってるのか、俺が行きたい方向をやりたい事を。
見た目からして茶色の毛色に覆われてるし、黒いモンスターじゃない。
てことは元々賢いモンスターなのか。
「っ!これって‥‥‥」
夢中になって避け続けていたら、いつの間にか囲まれてしまった。
まさか、こうなるように誘ったのか?
だとしたら厄介すぎるだろ。
「ウホー!」
まずい、これはもう避けられない。
ワープも出来ない、仕方ないインパクトを撃つしかない。
でも切り替えじゃ、ミノルに負荷がかかってしまう。
ここは魔法陣で撃つしかない。
「喰らいやがれ!インパクト!」
「ッ!!」
先程と同じ衝撃波がモンスターを襲う。
だが先程とは違いその魔法が通った後には大量のモンスターが居た。
「くそ、やっぱりサルとは違って硬いのか!」
しかもこいつら防御をしたのか。
間違いない、学習能力が半端じゃない。
「ウホー!!」
「くっファイヤーボール10連!」
「ウホー!!」
すると、俺の炎の玉を素手で殴り飛ばした。
「うそ!!」
その瞬間、後ろから攻撃が来る。
俺はすぐに空中に飛ぶ。
だが、それを待ち望んでいたのか一斉に空中に飛んでくる。
「ファイヤートルネード!!」
「フゥー!ホーーー!!」
モンスターは息で炎の竜巻を吹き飛ばした。
「んっ!マジかよ!!」
駄目だ、魔力レベル1の魔法は使い物にならない。
「ウホッホーー!」
まずい、空中じゃ避けられない。
死ぬ、ここで死―――――――
『君たちがこのゲームに負ければ死ぬ』
「っウオーター、アイス!!」
俺は向かってくる、モンスターの拳の片側を凍らせる。
それにより、俺の体に触れた瞬間、氷で滑り威力を抑えることが出来た。
「がはっくっ!」
俺は少し体を持ってかれたが背中から落ちないように、すぐに立て直し構える。
死ねない、ここで死んだらミノルも死ぬことになる。
どちらかが達成しても意味がない、2人とも生き残らなければ意味がないんだ。
「やってやるよ、ミノル負けんなよ。俺も命がけで戦うからよ!」
「ウホー!!」
「インパクト!!」
俺はその瞬間、一気にその場から走り出した。
「はあ、はあ‥‥‥」
あのまま戦っていたら負けていた。
今は勝つことが重要じゃない、生きることが大切だ。
「ウキキキ!!」
「っ!サル!?」
追いかけて来たのか、いや違う!まさかっ
「ウホー!!」
上から声が聞こえたと思ったら、空からモンスターが降って来た。
モンスターを胸を何回か叩くとこちらに拳を振り下ろしてきた。
それを何とか避け、俺は走り出す。
「くそ、あのサルこっちの居場所を教えやがったのか」
「ウキーウキ―!」
「うるさい!ファイヤーボール!」
「ウキャっ!?」
「ウキ―ウキ―ウキ―!!!」
すると大量の猿が鳴きながらこちらに近づいてくる。
やっぱり相手しててもきりがない、ここは放っておくのが良いか。
「ウホー!!」
その瞬間、モンスターが次々と大木を投げつけてくる。
「めんどくさい事してくるな!全部吹き飛べインパ――――――」
「ウホッ」
死角からの攻撃!
俺は魔法を撃つのをやめて体を襲ってきたモンスターの方を向く。
「ウオーター、ソイル!」
「ウゴっ!ウホ!!?」
俺は魔法で泥を作り、それを目にぶつけた。
モンスターは前が見えなくなり腕を振り回す。
その時、偶然モンスターの腕が背中に当たりそうになる。
「しまっ!」
俺はすぐに正面を向くが回避することが出来ずにそのままモンスターによって吹き飛ばされる。
「あ、あああああ!!」




