その十三 エクストラ魔法
俺達は新種のモンスターを探す為現在森をさまよっていた。
「そういえばミノルは何で俺が来たって分かったんだ」
「え?別にかつが来たことなんて知らなかったわよ」
「じゃあ何でこっちに来たんだよ」
「それはデッカイ音が聞こえたから気になってきただけよ」
「そういうことか」
俺の事が気になってきた訳じゃないのか。
ま、そりゃそうだよな、だいたいミノルは俺にクエストをやらせたくなかった訳だしここにいるなんて分かるわけないよな。
いや別に全然気にしてないぞそんな事。
「それでかつは新種見つかったの?」
「え?ああ、まだ見つけてないぞ。ミノルもなのか」
「そうね、まだ見つけてないわね。それだったら手分けして探して見る?」
「手分けか……」
確かにそれなら効率はいいけどせっかく会えたんだしもうちょっと一緒にいたいな。
でも待てよもしかしてミノルは俺の事をひとりでも大丈夫って思ってくれてるのか。
「確かにそれなら効率がいいな。よしそれで行こう!」
「妙に嬉しそうね。そんなに私と離れたかったの」
「ち、違う!そうじゃなくてあれだよ……自分ひとりで戦ってみたかったからさ。ほら今の自分の強さとか見てみたいし」
「確かにかつ変わったわね。だってそんなローブ付けてなかったし」
「ああこれか!そうなんだよ最近買ったんだよ。どうだ?だいぶ魔法使いらしくなっただろう」
俺はミノルに見せつけるようにローブをヒラヒラさせた。
「確かに魔法使いらしくなったわね。じゃあ新しい魔法とか取得してないの」
「そう言えば最近見てないな」
俺はポケットから魔法許可証出して魔法閲覧を見た。
ん?何だこれ……
「なあ、このエクストラ魔法って何だ?」
エクストラ魔法と言う見知らぬ文字の下にはインパクトと書かれていた。
「どれどれ………さあ、聞いたことないわね。唱えてみたら」
「え〜なんかやだな。知らない魔法唱えるなんて」
その時後ろから息の荒い牛が出てきた。
「あの牛また出やがったな」
「ちょうどいいじゃない。あのウシに1発ぶちかましなさいよ」
「たしかにそれもそうだ……てっお前今あいつのことなんて言った」
「え?ウシって言ったけど」
まさかのそのまんまなのかよ。
まあ言いやすくていいんだけどな。
「ほらウシが突撃体制に入ったわよ」
「分かったわかったって、えっとインパクトって言えばいいんだな」
「ほら来たわよ!」
「分かったって!ていうかミノル!もしこの魔法が攻撃魔法じゃなかった時は助けてくれよ!」
「分かってるわよ」
俺は覚悟を決めて突撃してくるウシに向かって。
「行くぞ!インパクト!」
その瞬間物凄い衝撃が全身に伝わって俺は思わず吹き飛んだ。
「きゃ!す……すごいなんて威力。あのウシが跡形も無く吹き飛んだわよ。ねぇかつ!今の――――」
「うっうぐっ!」
「かつ……?」
俺はあまりの激痛でその場でうずくまっていた。
「かつ!ちょっとどうしたの!?」
「いっ痛い……!」
「痛い?どうして」
ミノルが心配そうな顔でうずくまっている俺の顔を覗いている。
ミノルには心配をあまりかけたくないけどこれは流石に我慢出来ない。
「なんか腕が……焼けるように……痛い」
「どれ見せてみて―――」
そう言ってミノルが俺の腕を持ち上げようと触れた瞬間、ものすごい激痛が体を駆け巡った。
「イテーーーー!!!」
「え、あ、ごめん」
「痛っ!バッ、急に下ろすな!」
「ごめんごめん!でも本当に焼けたあとみたいに赤くなってるわね」
ミノルは俺の腕をまじまじと見ながら腕の状況を教えてくれた。
正直痛すぎてミノルの言葉が耳に入ってこない。
「…………ねえかつ。焼けるように痛いのよね」
「ああ……」
「腕だけ集中的に?」
「そう……だな……なんで分かるんだ」
「ふーんなるほどねえ〜」
「お、おい!何だよ、ひとりで納得するな――――イッツーーー!!」
ちょっと動かしただけでこの痛みなんてどんだけやばい魔法だったんだ!
「かつもしかしたらあんた魔力暴走にかかってるかもしれないわよ」
「魔力暴走?何だそれ」
俺が頭に疑問符を浮かべているとミノルは話しやすいように寝っ転がって俺と同じ目線で話し始めた。
なんか見つめられて照れくさいな。
「魔力暴走っていうのは魔力が暴走して起こる現象なの。それでその発生条件は魔力が一定量を超えてしまう事それによって魔力が暴走してしまうの」
「それで俺の手がこんなになったのか」
「でもおかしいのよ。魔力暴走はそんな腕の火傷程度じゃなかったはずなのに」
「え?どういう事だ」
この程度じゃすまないってマジかよ。
これでも死ぬほど痛いのにこれよりももっと痛い思いをしたかもしれないってことか。
「本来魔力暴走したら自我を失ってそのまま体が壊れるまま暴れまわるの。まるで制御を失ったロボットみたいに、体が壊れるまであるいは死ぬまで」
その瞬間体から一気に寒気が走った。
死ぬ?嘘だろ、てことは俺はかなり運が良かったってことか。
ふとミノルの顔を見るとまた心配そうな顔で俺を見ていた。
「ごめんなさい。もしかして不安になっちゃった?」
「いや、ありがとう教えてくれて。でもなんかおかしくないか、魔力暴走は魔力の増え過ぎでなるものなんだろ?なのに何で魔法を使ったらこんな事になるんだ」
「それは……」
ミノルはしばらく考えた後確信を持てないのか不安そうな顔で話し始めた。
「もしかしたらだけど、あくまで可能性だけど、もしかしてその魔法自体が魔力暴走をさせてるのかも」
「へ?」
一瞬思考が止まった。
魔力暴走が魔法?
いやそれはおかしいだろ。
魔力暴走は明らかに体に害を及ぼすもの、それを魔法にするなんて頭おかしいだろ。
「それ本気か?」
「それだと説明がつくのよ。体の一部だけが魔力暴走になってる所とか、魔力暴走の影響が少ない所とか」
「確かに説明がつくけど……イッツ!ていうかまずこの腕を治そうぜ」
「治し方分かるの?」
「確かにポケットに回復のポーションが入ってたはずだ。取ってくれないか」
「しょうが無いわね」
面倒くさそうに言いつつすぐ取り出してくれる所ミノルは優しいな。
「ここのポケット?」
「そうそこ、そこの奥にあると思う」
「ん〜、どこ〜、全然取れないんだけど」
「おいミノル早くしてくれ。ちょっとくすぐったい」
「分かってるわよ」
クソ〜早く取り出してくれ。
体が動けないからくすぐったくても動けないし、かといって動いたら腕が痛いしこれはあるしゅの拷問だな。
「よし!やっと取れたわ」
「それをこっちにくれ早く飲んで楽になりたい」
「そんな横たわっててどうやって飲むの?」
「あ、確かに」
そんな事考えてなかったな。
横たわったままだと飲みにくいかと言って体は今動かせないし。
俺が試行錯誤してるとミノルがまさかの発言をした。
「私が口移ししてあげよっか」
「………え?マジ!?」
「じょっ冗談に決まってるじゃない!そんながっつかないでよ」
「で、ですよね〜」
ミノルのやつ変な期待を持たせるようなこと言って今は緊急事態なんだぞ。
ん?なんでミノルはそんなこと言ったんだ?
もしかして……いやそんなわけ無いか。
「しょうがないから私が飲ますの手伝うわよ。ポーション持っててあげるからその間に飲みなさい」
「そうだなそれしかないか」
俺は首を少し上に上げてポーションを飲んだ。
正直首がかなりキツイが腕の痛さに比べてたらまだマシだ。
「プハー!おおすげぇー!腕の痛みが引いた」
俺はすぐに立ち上がり痛かった腕をグルグル回した。
「全然痛くねえ!完璧に治った!むしろ前より良くなったみたいだ」
リツのくれたポーションがこんな効くなんて思わなかった。
今度ちゃんとお礼を言おう。
「まさかポーションで治るなんてね。だとしたら本当に魔法で発動したのね。それでどうする?もう1発撃つ?」
「悪魔かお前、流石に今のは引いたぞ」
「違うわよ!それがちゃんとした魔法ならもうそんな痛みにはならないの」
「ホッホントか?」
「多分初めてだったからなっただけで多分今後その魔法を使っても多分そこまで重症にならないと思うわ」
「おい確証がなさすぎだろ」
「だって私もそんな魔法見たことないしあんまり断定するのもいけないかなと思って」
「ま、まあこの魔法は一旦封印して、絶対に使わなきゃいけない場面で使おう」
「そうね、そうしましょうか」
あぶねぇー危うくもう1発撃たされるところだった。
すると後ろから何かの気配を感じた。
俺はすぐ振り返ったがそこには何もいなかった。
「どうしたのかつ?いきなり後ろ見て」
「いや……何でも無い」
ただの気のせいかな。
「それじゃあかつ、二手に分かれましょうか」
「そうだなじゃあ俺はこっちに行くよ」
そう言って俺は来た道と反対の方を指した。
「それじゃあ私はこっちから行くわ。しばらくしたらここに集合しましょう」
「分かった。気おつけてそれじゃあまた後で」
「かつもね」
そう言って俺らは別々の道を行った。




