プロローグ 労働宣言
「それで今回お前が来たのは借金を減らして欲しいってことか」
「いや、まあそう言う事だな」
俺達は手紙の中で見た借金の金額を見て、ガルアの城に金額について相談しに来た。
するとガルアはあきれたようにため息を放つ。
「この金額はお前が放った魔法で起きた被害額だ。手紙にもそう書いて合っただろ」
「それは分かってるけど、それでもこの金額は‥‥‥」
「倒壊した建物の修繕費、モンスターを討伐に参加した魔法使いたちの人件費、負傷者を手当てした医療費、諸々含めた金額がこれだ!これでもかなり譲歩したぞ。それでもお前は減らしてくれと頼むのか」
「そ、それは‥‥‥」
ぐうの音も出ねえ。
明らかにこっちが悪いよな。
「お前も当事者だ。それなりの処罰は免れない。牢獄に入る代わりに頑張って金を稼げ、安心しろ。仕事は色々と紹介してやる。額が額だからな」
「分かった、頑張るよ」
俺はこれ以上は無駄だと思い、何も言わずに受け入れた。
「そうだ、ハイトに言われた通りにしておいたぞ」
「え?何がだ?」
ハイトは何か言っていたのだろうか。
すると、ガルアが新聞を取り出して俺に渡してくる。
そこにはサキン村の事について書かれていた。
「これって、サキン村の事件がモンスターの事故として処理されたのか?」
「あいつがそうしてくれと言ったからな。サキン村の歴史を悲惨なものにしたくないと言ってな」
「そっか、確かにそれが一番だな」
「後は直接本人から聞け。お前も色々大変だったみたいだがな」
ガルアは俺の方を見てじろじろと見てくる。
「な、何だよ」
「お前面白い事になってるな」
「何がだよ」
「何でもない。仕事頑張って来いよ!」
「はあ‥‥‥」
俺は新聞を置いて部屋から出る。
これからすべきことは何となく分かった。
問題なのはその難しさがどれほどかってことだ。
「仕事を紹介すると言っていたが、何の仕事を紹介されるんだ」
まさかモンスター討伐か、いやそんな単純なことじゃないんだろうな。
俺は不安を抱えながらミノルが居る部屋のドアを開ける。
「ミノル―終わったぞ」
「あっかつお兄ちゃん!」
そう言っていつも通り元気いっぱいの声が聞こえてくる。
「ラミア、ミノルと遊んで楽しかったか」
「うん、ミノルと折り紙づくりをしてたの。ほら、見て!」
するとラミアはしわしわの折り鶴を俺に見せる。
「まだ、上手くできないけど。綺麗に作れるようになったら上げるね!」
「本当か?ありがとな、ラミア!」
俺はラミアの頭を優しくなでる。
「この姿を見てると本当の兄弟みたいよね」
「私はかつお兄ちゃんの妹ですよ。もちろん、ガルアお兄様の妹です」
「2人の妹ってことだよな」
「それは欲張りすぎじゃない?それなら、私の妹にもなってくれる?」
「おいちょっと待て。それは許さないぞ。妹ストレージはもう一杯だ!これ以上は増やせないぞ!」
俺はラミアの前に立ち防御する姿勢に入る。
「ちょっとかつ邪魔しないでよ。ほら、ラミアおねえちゃんて言ってみて?」
「ラミア!そんな言葉を言う必要はないぞ!拒否するんだ!」
「えっと、えっと‥‥‥」
ラミアはこの状況をどうして良いか分からずに、口ごもってしまう。
だが、ミノルの言って欲しいと言う圧がラミアに伝わり、ラミアは折れてしまった。
「み、ミノルおねえちゃん‥‥‥」
「――――――っ!可愛い!!お姉ちゃんになる―!」
「ひゃっ!抱きしめないでください!恥ずかしいです!」
「おいちょっと待て!お前キャラ崩壊してんじゃねえかよ!ていうか、今まで遠慮してたのに急にどうした!」
「私だって妹が欲しかったのよ。ありがとね、ラミア。困らせちゃってごめんなさい」
そういってラミアを話して優しく微笑む。
「全然そんなことないです!私もお姉ちゃん欲しかったですし」
ラミアは恥ずかしそうに髪をいじくりながらもそんな事を言う。
「天使だわ!かつ、ここに天使が居るわ!」
「分かったからもう行くぞ。邪魔したな、ラミア!またな」
「はい、また」
「ちょっとかつ!最後にラミアを抱かせてよ!」
俺は駄々をこねるミノルを無理矢理引っ張って部屋から出る。
「騒がしいな」
「あっハイトか。どうしたんだよ」
「お前らに話が合ってな。ちょっといいか?」
俺達はハイトに連れられて人気のない部屋に入る。
「よし、ここなら話しても大丈夫か」
「そう言えばガルアから聞いたよ。サキン村の事件を事故に変えたんだろ」
「え?そうだったの?」
「まあな、これ以上悲惨な歴史を後世に残したくてなくてな。サキン村は俺達だけが覚えてればそれでいい」
「そうだな」
ん、待てよ。そう言えばさっきの新聞に。
「なあ、さっきの新聞で今回起きた騒動は、全部モンスター同士の争いが肥大化し過ぎたことによる事故ってことになってるけど、これお前がしてくれたのか?」
「え?まさか私達の事を守ってくれたの?」
「そんなんじゃねえ。ただ今回の事でお前らにはお世話になった。その礼みたいなものだ」
するとハイトは思い出したかのように話し始める。
「そう言えば、さっきリドルが訪ねて来たんだが。今別行動してるのか?」
「ああ、あいつなりのケジメをつけたいって言っててさ。全部が終わったら帰って来るって約束したんだ」
「なるほどな。それじゃあ、お前らもう帰れ。仕事が山積みだぞ」
「え?仕事って何。そう言えばかつ、お金は減らしてもらったの?」
「えっと‥‥‥」
俺は罪悪感から思わずミノルから目を逸らす。
すると涙目で俺のローブを掴んで揺らし始める。
「無理よあんな大金!ただでさえ、仲間も少ないのに!払えきれるわけいわ!」
「分かってるよ!俺だって頑張ったんだよ!ていうか、ローブ切れるから離してくれ!」
「はははっ諦めろ。これでもかなり妥協したんだぞ。壊したものを直すのはそれなりの金がかかる。だけど、今回一番の被害はモンスターだ。誰も空からモンスターが来るとは思ってなかったからな。対応も遅れてそれなりに暴れられたからな」
その言葉を聞いて俺達は口が出せなくなってしまう。
「まあ、そう言われると何も言えないけど‥‥‥」
「だろ、潔く諦めるしかない」
「それじゃあ、頑張れよ」
そう言ってハイトは部屋を出て行った。
「それじゃあ、ミノル明日から労働生活頑張るか」
「そうね、頑張りましょう」




