その十九 託した想い
「それから私はもうあんな辛い思いをしたくない一心で、必死に努力した。体を壊すくらい努力はしたけど、結局強くはなれなかった。私はレインに合わせる顔がない」
サクラから語られた辛い過去は皆の表情を曇らせた。
サクラに昔仲が良かった友達が居たことは、ダリ師匠から知っていた。
だけど、まさかサキン村と関わりが合った何て。
「私じゃなかったら、レインは死んでなかったかもしれない。もし他の人がレインを見つけたら、モンスターを倒してすぐに傷の手当てが出来ていき―――――――」
「やめろ!!」
するとハイトがサクラの言葉を遮るように声を荒げる。
それに驚いてサクラは言葉を失ってしまう。
「もしも何ていくらでも言える。後悔何ていくらでもすればいい。だがな、あいつの言葉まで否定することは許さないぞ」
「っ!」
「レインはずっとサクラお嬢ちゃんの話ばかりしてたぞ。町に面白い女の子が居るってね」
「お前に助けられてレインが後悔したと思うか。あいつはそんな奴じゃない。長年一緒に居る俺が言うんだ。最後までお前に生きてて欲しいと思ったから、守ったんだよ」
サクラはその言葉を聞いて涙を流す。
「私は‥‥‥もっと強くなりたい。そう思って生きて来たけど、もう強くなる必要ないのかな?強くなることが償いだと思ってた」
その言葉に先程険しい顔をしていたハイトの表情が緩む。
「レインはサクラに最後に頑張れって言ったんだろ。それは頑張って強くなれって意味じゃない。頑張って生きろってことだ。サクラ、生きてるだけでレインは天国で笑ってるよ」
「うん、うんそうだよね。ありがとう」
そう言ってサクラは涙を流しながら感謝する。
「なあ、サクラお前が良ければ一緒にリドルを止めに行くか?」
「ありがとう、かつ。でも私はレインと友達なだけで、サキン村に直接関わってるわけじゃないから。それにレインの友達に会えたからそれで充分」
「そうか」
何かすごい素直になったな。
いつも嫌味や馬鹿にされることが多かったから、こう素直にお礼を言われると調子が狂うな。
するとサクラが何故か俺の顔をじっと見る。
「今、変なこと考えてたでしょ」
「え?いや、そんなわけ」
「泣いてる私を見てざまあみろって憐れんでるんでしょ」
「いやいや、そんなわけないだろ!」
「別にそう思っていいわよ」
「え?」
「あんたには馬鹿にされた方がまだマシよ。同情されるのが一番ムカつくし」
何だよそれ。
馬鹿にされた方がマシって一体どういう意味だ。
「それじゃあ~メンバーも集まったことだし~いよいよ向かおっか~」
「そうだな、ミノルはリドルと争う気が無くてもあっちがやる気満々だからな。もしかしたらもう戦い始めてるかもしれないし」
「その前に写真見てみませんか?」
「写真?そんなものがあるのかな?」
そう言ってハムスはいつも通りマッスルポーズをする。
「私がサクラさんの部屋にしん、じゃなくてお邪魔した時に見つけたんですよ」
「侵入したこと知ってるから、私まだその事許してないからね。とりあえずこれがレインの懐に入ってた写真」
そう言って額縁にから写真を抜いてテーブルに置く。
「確かにこれは紛れもなくレインだな」
「ふっふ~ん、この笑顔懐かしいな!」
「これが、レインか。ん?ここってどこで撮ったんだ」
あまり見たことがない場所だな。
後ろは建物だけど普通の建物とは違って木材じゃなくて、人工的な素材みたいだ。
「ここはレインとよく修行に使ってた秘密の場所。今はもう行けないけどね」
「行けない?封鎖されたのか?」
「まあそんな感じ。にしても久しぶりに見たな。最近は見ないようにしてたから」
「だから倒してたんですね」
その言葉を聞いてサクラが若干不機嫌そうにするが、マキノはすぐにごめんなさいと会釈する。
「この時はまさかあんなことになるなんて思わなかったな。ね、ハイト」
「そうだな。よし、行くぞかつ。これ以上は待てない」
そう言ってハイトは玄関の扉を開けて外に出る。
「ふっふ~ん、俺も早速向かうとするか!」
それに続いてハムスも玄関を出る。
「おい、ちょっと待てよ!そうだ、ありがとなサクラ」
「別にお礼を言われることはしてないわよ」
「何言ってんだよ。お前のおかげでより一層この事件の真実をリドルに伝えたくなった、ありがとな」
「っ!?わ、分かったから早く行きなさいよ。私が昔の話をすることなんて早々ないんだから、必ず連れて戻りなさいよ。失敗したら許さないから」
「任せろ、師匠によろしくな!」
そう言って俺はリドルの元に向かうために玄関を出る。
「ちょっと待ってくださいよ!」
「それじゃあね~サッちゃん~」
突然外に飛び出していく皆をサクラは手を振って見送る。
「さてとそういえばおじいちゃんどこに行ったんだろう」
外を飛び出した俺達は早速サキン村が合った場所に向かう。
「かつ、あいつらが居るのはサキン村で合ってるんだよな」
「ああ、確かにリドルがそこで待ってるって言ってた」
「いよいよ決着の時だな。筋肉がうなるな!」
「分かったので筋肉を見せつけるのはやめてください」
「ミッちゃ~ん、今行くよ~」
あの日の決着を付けるために俺達はリドルとミノルが待つ、サキン村跡地に向かった。




