その十四 謎の写真
「また人違い!ここにハムスは居ないんですか!?」
出てくる人すべてが違う人で思わずイラつく。
早く連れて行かないと怒られてしまう。
ここに居ると聞いてましたけど、別の場所に移動した方がよさそう。
「居ないんだったらここには用はないので。それでは、失礼しました」
早くハムスを見つけなければ、こうなったら手当たり次第に声をかけまくるしかない。
そう思い、その場から離れようとするとダリが話しかけて来た。
「ちょっと待ちなさい。わしはまだ一言も知らないとは言っとらんぞ」
「え?てことは知ってるんですか?」
「中に入れ、ちょうど来ておる」
そう言ってダリは中に私を招待する。
居るならちょうどいい、でも何で出てこなかったんだろう。
そんなことを思いながら中に入った。
「おじゃましますって何か男臭い。それに蒸し暑い気も‥‥‥」
「お主が求めているハムスはこの奥に居る。くれぐれも逃げるなよ」
「え?それってどういう――――――」
扉がダリの手で広がるとそこには漢の国が合った。
「おお!ダリさん!その子は誰だい、もしかしてお客さんかな!君も一緒に筋肉を鍛えないか!」
そう言って目の前の巨大な筋肉がポーズを決めて近づいてくる。
「ぎゃあああ!!!」
目の前の光景に頭が付いて行かず叫び声を上げる。
「無理!汗臭くて男臭いんですけど!生理的に無理です!ていうか、ここ蒸し暑!何でこんなに暑いんですか!?」
「それは俺達のスペシャル筋肉トレーニングの結果です。トレーニング終わりはいつもこんな風に体から蒸気が出ます」
「きも!生理的に無理何で近づかないでください」
私は鼻をつまみながら離れる。
「ふっふ~ん、中々手厳しいお嬢ちゃんだ!鍛えがいがありそうだな」
「トレーニング終わりました!次は何しましょうか!俺まだまだいけますよ!」
やばいこの空間とこの一体のノリ、早く離れたいていうか帰りたい。
「あの、とりあえずハムスが誰か教えてくれませんか」
「俺がハムスだ!もしかして君の魔法筋肉道(仮)に入りたいのかな?」
「そんなむさ苦しい道場は死んでもお断りですね。そんなどうでもいい事ではなくハムスさんに絶対さんが用事があるみたいです」
「絶対さん?あの少年の事か。もしかしてまた修行をしたいのかな?」
「いや、サキン村の事件について話がしたいとか言ってましたけど」
「っ!?サキン村、なぜそのことを」
その時明らかに先程までニコニコしていたハムスの表情が強張る。
やっぱりこの人も関わってるってことですか。
「とにかく一緒に来てください。いや、やっぱりシャワーを浴びてから来てくれません?」
「なるほど、了解した。待っていろすぐに体を洗ってくる。行くぞ!」
「「はい、師匠!!」」
そう言って筋肉たちは体を洗いに出て行った。
にしてもこのご時世に筋肉を鍛えるなんてよほど暇なんですね。
筋肉よりも魔法を鍛えた方が絶対効率的だと思いますけど。
「話は終わったのか?」
「あ、はい今帰りを待っています」
「お主はかつとは友達なのか?あ奴は元気にしておるか?」
「友達ではなくビジネスパートナーです。絶対さんなら元気にしてましたよ。ダリさんは絶対さんの知り合い何ですか?」
「少しの間弟子として育てていただけだ。そうか、元気か。それならよかった」
そう言ってダリは腰をゆっくり下ろして、机の上のお茶をすする。
「へえ、絶対さんが弟子だったんですか。でもこの道場あんまり門下生居ないですよね。人気ないんじゃないですか」
「お主は遠慮を知らないのう。まあたしかにその通りじゃ。ここの門下生は今の所ゼロじゃな」
「あの筋肉は門下生じゃないんですか?」
「あやつらはただ勝手に住み着いてるだけじゃ。機材だけ置いているだけで基本的には森で暮らしておる」
「へえ、そうなんですか」
「お主聞いた割には興味なさそうだな。まあ、よいわしはサクラを探してくる。お主はハムスが来るまで好きなだけ待つが良い」
そう言いながら腰に手を置きながら立ち上がり玄関に向かう。
「ふう、暇ですね」
そう思い、暇つぶしに何かないか道場の中を探索することにした。
だがボロボロの道場なだけに特に目立ったものは置いてはいない。
基本的な生活感のある部屋なので面白味も無い。
「うーん、あっ2階がある」
2階を発見してすぐに階段を上る。
2階は特に広くなく部屋が2つあるだけだった。
1つ目の部屋は特に何もない空き部屋でもう1つは‥‥‥
「ん、妙に女の子らしい部屋ですね。まさかさっきの妙に騒がしい人の部屋ですか?」
これはもしかすると面白い物が見つかるかもしれない。
ちょっと見る位だったら大丈夫ですよね。
見つかる前に戻ればいいだけだし、よし入ろう。
「おじゃましまーす」
中に入ってみると意外と何にもない部屋だった。
いい意味できちんと整頓された部屋悪い意味でつまらない部屋ですね。
「これじゃあ特に暇もつぶせないし、見つかる前に出ますか」
そう思って部屋を出ようとした時棚の上にある物に気が付く。
「これは‥‥‥」
四角い板のような物が棚に倒れた状態で置いてある。
明らかに後ろに立てるためのスタンドが付いてるのに何で倒してるんだろう。
「怪しいですね。これは何かあるに違いない、少しだけ見てもバレませんよね」
私は周りを見渡して人が居ないことを確認して、早速それを手に取る。
「え?これって写真とかいう奴だった気が‥‥‥でもそれを取るにはカメラが必要のはず。まさかあの人がカメラを?」
いや、この道場の状況を見るととてもそんな高価なもの買える状況じゃないはず。
買えたとしてもカメラ何て日常では特に必要のない物、金持ちの娯楽とも言われてるくらいですし、それはなさそう。
「しかもこの写真サクラさんと男の子?」
子供の頃の写真だろうか、でもこの場所は見たことがない。
野原で青空が広がっているその奥には何かの建物が見える。
そして子供のサクラさんはその男の子と嬉しそうに指をチョキにして撮っている。
「よく分かりませんが思い出の写真とかですかね。とりあえず、戻りますか」
私は写真を元の位置に戻して部屋を出た。




