その十 恥
「きょ、協力ってどういう意味————————」
「良いから!するのしないの!」
「し、します!協力するからどうか命は」
「いいわ。協力してくれるなら命は取らない。作戦を考えるからそれまでは大人しくしてて」
「おい!すぐ出してくれるんじゃねえのかよ!早くここから出せよ!」
「うるさい!今死にたいの!」
「っ!」
「いい、私は魔法を使うのは下手だけど、あんたを殺すくらいは訳ないわよ!こんな所で死にたくなかったら、私の言う事を聞きなさい!!」
「わ、分かったから!言うこと聞くから殺さねえでくれ!」
「はあ、はあ、分かったならいいわ。作戦が決まり次第伝えるから」
待っててねミノル。
私があなたを絶対に助けるから。
「え!?今日の午後ここを出るの!?」
「ああ、急な依頼が入った。貴様らしっかり拠点を守ってろよ」
「何だよ、クラガ!俺にその依頼やらせろよ!暇でしょうがねぇんだよ!」
「何言ってるの馬鹿ゴリラ!リーダーがやるって言ってんだから横取りしようとしてんじゃないわよ!」
「何だと!テメェみてぇなちびガキに言われる筋合いはねぇぞ!」
「あるわよ、トガって馬鹿だから!」
「何だとテメェ!それはどういう意味だ!」
「そのまんまの意味よ!」
「よおーし!ぶっ殺してやるからから逃げんなよ!」
「貴様らいい加減に静かにしろ!」
その言葉にスイとトガはその場で黙り込む。
「この任務は俺にしか出来ない。よって貴様らは大人しく拠点に待機してろ。以上だ解散!」
やった、チャンスが来た!
この日を逃したらいつクラガが居なくなるか分からない。
この日が最後のチャンス!
私はすぐにドリーの元に向かう。
「作戦が決まったわ!」
「ほ、本当ですか!」
「今日午後6時にクラガは任務にためにこの拠点を離れる。その時間が絶好のチャンス、その隙にあなたは制御室に行って実験中のモンスターを解放させて」
「ええ!そんなことしたら俺が食われちまいますよ!」
「ここで死ぬよりはマシでしょ!どっちみちあなたにはこの選択肢しかない。どうするの」
「わ、分かった。やるよ、やらせてもらうよ」
「よし、その前にあなたに鍵を渡すからそれで牢屋から出てさっき言ったことをして。モンスターを解放させるボタンはこの四角い形をした赤いボタンよ」
私はすぐにクラガの元に向かった。
ミノルの脱出計画を実行する為にあと一つ知らなければいけないことがあるから。
クラガの部屋に向かうがそこには肝心のクラガが見当たらなかった。
「あれ?もしかしてもう出かけたの」
それなら今の内に。
「おい!」
「っ!!」
「貴様ここで何やってんだ」
危なかった、まだここを出てなかったのね。
「クラガを探してたの」
「何だ。例の男は処分したのか」
「それより聞きたいことがある。ミノルの薬について」
「それを知ってどうする」
「薬の場所を知っておかないと、またあんなことになった時に対処できないでしょ。それに私はミノルのパートナーだから、管理する権利があるはずよ」
「‥‥‥そうだな。薬は俺の部屋の棚に入っている。薬と書いてあるから分かるだろう。俺はもう行く、薬を手にしたら元の場所に戻しておけ」
「分かったわ。行ってらっしゃい」
私はすぐにクラガの部屋に行き薬を手にした。
この薬があれば何とかミノルが暴走して求められる。
後はこの拠点に残ってる人達を調べないと。
「ふん!ふん!」
トガは筋トレルームで筋トレ中ね。
「おい、スイ!今イカサマしただろ!」
「はあ!?何言ってんのよ!自分が弱い事を私のせいにしないでくれる!」
スイとアルバは2人でゲーム中ね。
「‥‥‥」
サキは相変わらず研究室に籠っている。
そこに居られるとドリーがボタンを押せない。
ここは少し離れてもらうしかない。
「サキ~!」
「何?」
「さっきクラガがモンスターの事について話したいって言ってたよ」
「ん、分かった」
サキは作業をやめて研究所を出る。
よし、これで準備は整った。
「念のためにこれを仕掛けておこう」
私はすぐにドリーの元に向かう。
「おお、来てくれたか、遅かったじゃねえか!」
「これでも急いだのよ。はい鍵」
私はクラガの部屋から手に入れた鍵を牢屋の中に投げ入れる。
「うおおお!本当に鍵じゃねえか!」
「いい、ちゃんとやるべきこと分かってるでしょうね」
「ああ、あんたは命の恩人だ!任せてくれ!」
「それとここの地図よ。このルートで行けば誰にも会わずに目的地に着けるから」
私はすぐにミノルの元に戻る。
「ミノル!行くよ!」
「どこに?」
「任務よ!急に呼び出されたの。早く行くよ」
私は部屋から飛び出し出口に向かう。
出口についてもまだ脱出は出来ない。
監視魔法陣が出口には施されてるから、勝手に出て行ったら警報音がなっちゃう。
まだ、出れない。
だが5分しても、何も起きなかった。
「任務に行かないの?」
「ちょっと待ってて、後もう少しだから」
「何がもう少しなんだ?」
「っ!この声はクラガ!?」
どうして、なぜこの男が居るの!
今は任務で居なくなってるはずじゃあ。
その時後ろから見知った顔の男が出てくる。
「あ、あなたはドリー!」
「いやあ、すみませんね。作戦がバレてたみたいで」
「ふざけないで!たとえ作戦がバレてたとしても、あなたが殺されてないのはおかしいわ!あなた達グルでしょ!」
「あれ?もうバレちまったか。仕方ねぇだろ!あんたについて行っても死ぬのは目に見えてるんだからよ!」
そう言って男はあざ笑うかのようにニヤリと笑う。
「クラガ、依頼も嘘ね。私達をおびき寄せるための罠!最初っから私を疑ってたんでしょ!」
「何を言ってるんだミノル。俺は嘘なんかついてねえよ。現に今依頼を実行しようとしてる」
「何ですって!?」
「裏切り者2人の粛清。これは俺にしか出来ない依頼だろ?」
「っ!?やっぱり最初から疑ってたんじゃない!」
「残念だったなミノル。貴様はもっと利口だと思っていたが、下らん情に施されたか。会って間もないこの男を作戦に組み込むなんてな。すぐに白状したぞこいつは。どうやら貴様よりも世渡りが上手いみたいだな」
「っ!!」
「おいおい、そんな睨むなよ。しょうがねぇじゃねえか。俺だって命が欲しいんだよ」
こんな男を信用するんじゃなかった!
もう終わりだ、脱出は出来ない。
このままクラガに殺される。
「さて、早く依頼を終わらせないとな」
どうせ死ぬなら最後に!
「何だその目は?」
「はあ、はあ、逃げて!ミノル!ここに居てもあなたに未来はない!あなたは元々こんな組織に身を置く必要も無いはず!ここを出て自由に暮らすのよ!あなたの本当の居場所に!」
「‥‥‥」
「本気で俺に挑む気か?」
「じゃなきゃ死ぬだけでしょ!」
ここでこいつを食い止める!
私は間違っていた、こんな所に数年居たことがすでに恥!
「私はもう、自分の気持ちに嘘を付かない!」
「本物の馬鹿だな」
そして私はあっという間にクラガによってボロボロにされた。
そして私は鉄の鎖で体を縛られて独房に入れられた




