その九 リツとミノルの出会い
「黒魔法時代の話って、黒の魔法使いの頃の話か?」
「そうだよ~ぜっちゃんはまだちゃんとその頃の話~聞いてないでしょ~」
「言われてみれば確かに」
ミノルがあいつらと関わっていることそしてミノルも黒の魔法使いとして一時期、活動をしていたことぐらいしか分からないな。
すると、リツは扉を開ける。
「早く出て~店を閉めなきゃいけないから~」
「あ、ああごめん」
俺はすぐにリツの店を出る。
リツは忘れ物がないか確認した後すぐに扉に鍵を掛けた。
「それじゃあ~行っか~」
そう言ってリツは先頭を歩く。
あれはその後を黙ってついて行った。
「私とミノルが出会ったのは~今から10年前くらいかな~あの時のミッちゃんは今とは全然違う、まるで別人だった~」
―――――――――――
「おい、リツこっちに来い。新しいメンバーを紹介する、おい」
クラガに呼び出された私はそこで新しいメンバー紹介された。
その人は私よりも背の低い女の子だった。
「こいつが新しく俺達の仲間になった、自己紹介しろ」
「ミノルです」
それだけ言い終えるとミノルという少女は黙り込んでしまった。
「こいつが貴様のパートナーだ。ミノル、分からないことがあればリツに聞け。それでは仕事に戻るぞ」
無駄なことは一つもせずに端的に会議が終わった。
ミノルの第一印象は機械だった。
目には生気を持たず無機質な目をしていた。
表情も変化せずに感情を表に出すことも無かった。
その後私は裏方としてミノルをサポートして、任務を実行していた。
ミノルは本当に機械のように言われた任務を堅実にこなし、人を殺すのにも躊躇いがなかった。
そして一度も目を合わせてくれなかった、目はこちらに向いているのにずっと遠くを見つめてるようなまるで目の前の出来事に興味がないような、そんな気がした。
正直、恐怖を覚えていた、こんな子と任務以外ではあまり関わりたくないなって思った。
一緒に隣に居るだけでも嫌だった、だから私は任務以外は極力接さないようにしてた。
だけどそんなある日、ミノルが居る部屋から悲鳴が聞こえた。
「あああああ!ああああああああ!!」
「ミノル!?」
私は急いでミノルの部屋に向かった。
ミノルが基本的に言葉を発さない、そんなミノルが大声で叫ぶほどの異常事態が起きてると思ってすぐに部屋の中に入った。
「み、ミノル!」
ミノルは苦しそうにうずくまって居た。
そして何度も何度も頭を殴ったり地面に頭をぶつけてた。
「な、何してるの!?やめてよ!」
私はすぐにミノルの体を抑え込んだ。
だけど、ミノルは自分の頭を叩きつけるのをやめようとしなかった。
「ああああああ、頭があああああああいたいいいいいいいい!!!」
「落ち着いて!ミノル、静かにして!!」
「っ!?離して!私に触らないで!いやだ、いやだ!!」
「ミノルミノル!お願いだから落ち着いて!」
「帰りたいおうちに!いやだよ、助けて――――――」
その瞬間、突然ミノルがだらんと無気力になった。
「え?どうしたの、まさか死んで――――――」
「落ち着け、リツ」
すると、扉の前にはクラガが立っていた。
「騒がしいから来てみたが、やはりミノルだったか。大方薬が切れたのだろう。次はもっと強力な薬を投与しなければな」
「それってどういう‥‥‥」
「貴様には関係ない。ミノルをこっちに渡せ」
その時、ミノルが弱々しく私の手の指を握った。
「た…けて」
「え?」
「何をしている。こちらに渡せと言ってるんだ」
「何か喋ってるんです。聞いてあげないと」
「知らん。早く渡せ」
「仲間の言葉も聞いてあげないんですか!」
「こいつは仲間じゃない、連れて行くぞ」
クラガは無理矢理私からミノルを奪うと、ある紙を渡してきた。
「次の標的だ。ドリー盗賊団という連中だ。ここ最近俺達の事を嗅ぎまわってるらしい、ミノルが治ったらすぐに現場に行け、分かったか」
「は、はい‥‥‥」
クラガはそのままミノルを担いで部屋を出て行った。
「もう、嫌だ‥‥‥」
私はその時先程の言葉を思い出す。
『た…けて』
「あれって助けてってこと?助けを求めてたの?」
結局この日は精神的にも疲労し切っていたため、眠りについた。
そして朝起きるとそこにはミノルの姿が合った。
「ミノル!?もう、大丈夫なの?」
「行きましょう」
「へ?」
「依頼を実行しに行きましょう」
そう何事もなかったようにその日は迅速に依頼が行われた。
「お願いです、必ずあなた方の役に立ちます!ですからどうか、命だけは!」
「いいよ、ミノルも殺すのはやめて。こいつは使えるから」
するとミノルは一瞬にして周りの人を風の魔法で切り刻んだ。
「ミノル!」
「リーダーだけで十分、他はいらない」
「ひい!」
「とりあえず、この事は報告しとくからね」
するとミノルはそのまま居なくなってしまった。
今のミノルは今まで通り目に生気を宿してはいない、でもあの時のミノルの目は生きていた。
どれが本当のあなたなの?
「そうか、それなら止めを刺しておけ」
「え?でも!」
「必要かどうかは俺で決める。貴様が勝手に決めるな」
「でも――――――」
「俺の指示に従えないのか?」
「っ!分かりました」
部屋に戻るとミノルはずっと天井を見ていた。
いつもの光景だが昨日の事を思い出し、思わず声を掛けてしまった。
「ミノルってどこから来たの?」
「‥‥‥」
「お父さんとお母さんは居ないの?」
「‥‥‥」
「‥‥‥助けてってどういう事?」
「‥‥‥」
無反応、やっぱり何も答えない。
ミノルから何かを聞き出すのは無理だと思った時、水が落ちる音が聞こえた。
「え?ミノル、泣いてるの?」
「‥‥‥」
ミノルは一言も喋らなかったけどその時の涙がミノルの本心なんだって、私と同じここに残るしかない人、可哀そうな人なんだって。
「ねえ、ちょっと」
私はすぐにドリーが捕らわれている牢屋に向かった。
「な、何でございましょう」
「あなた、調べる事や盗みは得意何でしょ」
「そ、そうですけど」
「それじゃあ、私に協力して」




