その六 ツキノの策略
「あれ?ミノル居ないな。買出しに出かけたのか?」
家に入ると電機は付いておらず真っ暗だった。
「たしかに食材のストックが少なくなってきましたからね」
そう言いながらリドルは家の電気をつける。
「それじゃあ、ミノルが来るまで先に風呂には行っちゃ様かな」
「それが良いですよ。僕はご飯の準備をしておきますね」
そう言ってリドルは機械に魔力を注いでご飯を炊く準備をする。
「そういえば風呂沸いておいたっけな」
俺は風呂が沸いてあるか風呂場に行って確認する。
「おっばっちり沸いてあるじゃん。もう荷物置いて入るか」
俺は脱衣所で服や荷物を全部置いて早速風呂に入る。
シャワーで全身を洗ってから俺はゆっくり湯船に浸かる。
「ふぅ~極楽極楽」
やっぱり一日の疲れを風呂で流すのは気持ちがいいな。
それにしても今日は思ってたのと違う一日になっちまったな。
風間とは会えなかったし、浜口には置き返されるし今日は何一つ進展しなかったな。
まあ、マキノの手伝いをしたから無駄な一日で終わらずに済んだけど。
ツキノ達はちゃんと風間に今日の事言ってくれたかな?
明日マキノの用事を終わらせたらまた風間の元に行くか。
それにしてもあの風間があんなに慕われてた何てな、十二魔導士が無くなっても側に居るってことはそれだけ尊敬されてるってことだよな。
あんなクソ野郎でもこの世界では良い奴って思われてるんだよな。
それって俺にだけいじめ行為をしてるってことか。
そうなって来るとますますムカついてくるな。
「あーくそ!やっぱり風間に直接会うしかないな」
俺は風呂から出て最後にシャワーを浴びてから浴場を出る。
「ふう、さっぱりした。あれ?」
服が入った籠を見ると新しい服がキレイに畳まれた状態で置かれていた。
「リドルー!新しい服置いてくれたのかー!」
「そうですよー!裸で家を歩き回るつもりですかー」
「いや、男同士なんだし裸でも大丈夫だろ」
俺はタオルで体を拭いてから下をタオルで撒いて風呂上がりの牛乳を飲むために脱衣所から出る。
その時大量の食材を抱えたミノルと目が合った。
「きゃああ!!」
「ちょ、まっ――――――ぐふっ!」
その瞬間見事なとび膝蹴りを喰らわされた。
―――――――――――――――――
「はあ、クソ舐めやがって」
風間はイライラしながら自分の城に戻っていく。
その手にはお土産の煉獄ハバネロパウダー10瓶ほど袋に詰めて持っていた。
「おかえりなさい、風間さま。おや、それはお土産ですか」
「ああ、カノエにお土産として渡された。城の奴らに配ってくれ」
「分かりました。ああ、そういえば今日絶対かつが来ましたよ」
その言葉を聞いて風間は険しい顔をする。
「なに?かつが来たって?用事は」
「詳しくははぐらかされてしまったので分かりませんが、風間さまとかつにしか分からない問題だと言ってました」
「はあ、なるほど。今はそれどころじゃない。明日もし来ても忙しいと言って追い返してくれ」
「分かりました。かつにはそう伝えます」
「ああ後、この島の各店舗の売り上げ情報は」
「すでにリストアップしています。そして風間さまが不在の時に起きた問題も粗方処理しておきましたよ。それとガルア様が話がしたいと、次の予定を開けておけと連絡がありました」
「そうか、ご苦労だったな。マイト、お前が側に居てくれて助かったよ」
「いいえ、こちらこそ側に居させていただき光栄ですよ」
風間が自分の部屋に行こうとした時ツキノが待ち伏せしていた。
「ツキノ、何しているカジノの経営を任せたはずだぞ。今日の報告書が出せれてないぞ」
「話がある‥‥‥」
「ツキノ、今風間さまは」
「大丈夫だ。ツキノ話を聞こう。部屋に入れ」
風間はツキノの真剣な表情に何かを察知して二人っきりで部屋に入る。
「それで話ってなんだよ」
「かつと‥‥‥協力して‥‥‥」
「は?何言ってんだ、俺はそんな暇ないんだよ」
「風間の悩み‥‥‥かつじゃなきゃ解決できない‥‥‥そうでしょ‥‥‥」
「まだその時じゃない。今までサボってた仕事が山積み何だよ。あいつに会ってる暇もないんだ。話しはそれだけか?それじゃ、お前もさっさと仕事に戻れ」
風間それだけ言うとデスクに座り仕事をし始める。
だがツキノはその場から一歩も動かなかった。
「何してんだ。お前のわがままに付き合ってる暇はないんだよ。さっさと出ていけ」
「キスされた‥‥‥」
「は?今何て言った?」
「かつにキスされた‥‥‥」
その言葉を聞いてたまらず風間は椅子から立ち上がり、ツキノの元に行く。
「お前、何でそんなことになってんだよ!」
「かつに‥‥‥風間の居場所言えないなら‥‥‥kissするって言われて‥‥‥」
「言わなかったのか!?」
「だって‥‥‥言うなって言ったから‥‥‥」
「状況によるだろ。あのクソ野郎、俺の事が嫌いだからって俺の周りの奴にちょっかい出して言い訳ないだろ!クソ野郎が見損なったぜ」
風間はすぐに部屋を飛び出す。
それに続いてツキノも部屋を飛び出していく。
「どこに行くの‥‥‥」
「あいつの元に決まってんだろ。俺の仲間に手を出したらどうなるか思い知らせてやる」
するとツキノが風間の前に出る。
「それは駄目‥‥‥」
「邪魔だツキノ」
「文句なら‥‥‥明日言って‥‥‥」
「だからそれは仕事が――――――」
「お願い‥‥‥」
ツキノはうるんだ瞳で風間に懇願する。
ツキノの一度言ったらやめない頑固さを風間はよく知ってるので、一つため息を吐いて諦める。
「分かった。明日あいつと会うよ。予定を開けておく」
「ありがとう‥‥‥」
「そんなことより、大丈夫なのか。無理矢理キスされて」
「大丈夫‥‥‥痛くないから‥‥‥」
「でも心は傷つくだろ。今度から自分の身を最優先に動け分かったな」
「うん‥‥‥そうする‥‥‥」
「それじゃ仕事に戻れ」
風間は疲れ切った顔をしながら部屋に戻って行った。
「ごめんね‥‥‥かつ、風間さま‥‥‥」




