その十 クエストを求めて
「すいませ〜ん!クエスト貰いに来ました!」
俺はクエスト欲しさについ思いっきり扉を開けてしまった。
俺は一瞬しまったなと思ったが、予想外な事にみんな俺の事なんか見向きもせずいつも通りに過ごしていた。
魔法協会では店もやってるから大声には慣れてるのか。
そんな中俺の声に反応した人がいた。
その人は俺の事をじっと見つめている。
「どうしたんですかルルさん。そんなにじっと俺の事を見て。顔になんか付いてますか」
「い、いえ!何でもないですよかつさん。それで今日は何の用ですか」
かなり動揺してるな。
そりゃそうだ、俺の全財産をむしり取った1時間後くらいに来たからまだ申し訳ないと思ってるのだろう。
「クエストを選びに来たんですよ。何かいいクエストはないですかね」
「クエストですか!そうですねぇ〜えっと……このクエストとかどうですかね」
「ん〜ちょっと微妙ですかね」
ていうか新種のモンスターのクエストをくれよ。
「じゃあこれ何かどうですか」
「これもあんまりですかね〜」
そんなのより良いクエストがあるだろ。
「じゃあこれは――――――」
「他のありますか」
「そうですよね。このクエストは駄目ですよね」
さっきから何で新種のモンスター以外のクエストを出してくるんだ。
ルルさんだったら真っ先に出してくると思ったんだけど。
もしかして金をむしり取った俺にすら言えない理由があるのか。
ちょっと揺さぶってみるか。
「ルルさん。噂によると新しいクエストが入ったとか聞いたんですけど」
「あっえっと〜……これのことですかね」
そう言ってルルさんは俺が求めているクエストとは全く違うクエストを出した。
ここまで言って出さないってことは俺にそのクエストを渡したくないってことか。
ルルさんは俺の味方だと思ってたのに何か裏切られた気分だ。
こうなったらルルさん自身の口で言わせてやる。
「ルルさんその後ろにあるクエストはなんですか」
「え!あ、えっと、その……」
するとルルさんが後ろにあるクエストを手で隠した。
隠すってことはそれが例のクエストなのだろう。
「ルルさんその後ろのクエストはなんですか」
俺はもう一度同じことを言った。
今度は静かにそしてはっきりと。
「あ……その……えっと……」
「いいから出せ!」
「は……はい!」
するとルルさんは慌てて後ろにおいてあるクエストを渡した。
つい怒ってしまったが俺だって迷惑してる。
だからこれはしょうがない事だ。
「………やっぱり。何で出さなかったんですか」
「そ…それは……言えません……すいません」
「言えないって……」
何を言ってるんだこの人は!?
俺に散々色んな事やっておいて理由も言ってくれないなんて。
仕方無いもう言いたい事全部言ってやる!
「ルルさんって俺のお金全部ぶん取りましたよね」
「ぶん取るって……ちょっと言い方悪くないですか」
「そんな事はどうでもいいんです。大事なのはその中身です。ルルさんは全財産を奪った。その時なんて言ったか覚えていますか」
ルルさんは少し困ったような顔をして周りの人に助けを求めているようだった。
「もしかして……クエストを渡すって事ですかね」
「そうそれです!ルルさんは自分でクエストを上げるって言いましたよね」
「は…はい…」
「なのにルルさんはこのクエストを渡さずにしかも渡さなかった理由も言わない!これが全財産を奪われた人に向ける態度ですかね!」
「言い返す言葉もありません……」
ルルさんの声がどんどん小さくなっていく。
俺はそんな事気にせず喋り続けた。
「しかも!誤魔化すように渡してきたこのクエストも!全部しょ〜もないものばっかりですよね!これって面倒くさいから適当なクエストでも渡しとくかってことですか!」
「けしてそう言う訳じゃ……」
「シャラッープ!黙って下さい!」
「はい……すいません」
そしてルルさんの声が消えてしまいそうなその時後ろから頭を叩かれた。
「痛!?誰だ!」
「これ以上ルルをいじめんなよ。泣いてんだろ」
そこにはトレーを持ったウルフが立っていた。
俺はルルの方を見てみると今にも泣きそうな姿があった。
しまったちょっと言い過ぎたか。
今までのストレスを発散する勢いで言ってしまったからな。
「うわ〜!ウルフさん〜怖かったです!」
「よしよし大丈夫か。怖かったな〜。もう大丈夫だぞ」
ルルさんはウルフに抱きつきウルフはルルさんの頭をなでてあやしている。
なんかこれ俺が悪者みたいになってないか。
「まさかお前が女をいじめるなんてな。そんな奴とは思わなかったぞ」
「いや違う違う違う!俺はただちゃんとしたクエストを貰いたかっただけで」
「そうなのかルル?」
するとルルさんがこちらを見つめて。
「かつさんがいじめてきて」
「おいルル!お前嘘つくんじねぇ!」
「ああもう!落ち着け!収拾つかなくなるだろ!」
それから数分は受付が使えなくなった。




