その三 ここに来た意味
「こっこれは…」
間違いない、ミノルと全く同じの猫耳。
日本で何度も見てきた猫耳だ。
それに尻尾までちゃんと生えている。
触ってみてもちゃんと触られてると気付ける。
えっでもそうなってくると色々とおかしいな。
俺はこの島の生まれではない、それは絶対だ。
なのに何故日本人のおれが、半獣特有の猫耳や尻尾が付いてるんだ。
俺が考え事をしていると、ミノルが俺の方に顔を近づけて来た。
「何ぼーっとしてるのよ。人の話聞いてるの」
「えっあっ、ごめん。なんの話だっけ」
「はぁ〜、もう一度言うわよ。あなたはどこから来たの」
来た場所か……
こうゆう場合は住んでる街ではなく日本と行ったほうがいいだろう。
「日本から来たけど」
「そんなところ聞いたことないんだけど」
やっぱり知らないのか。
「そりゃ、そうだろ。この世界に日本なんて存在しないんだから」
「あんたさっきから言っていることが無茶苦茶よ。この世界に無いんだったら、あなたが日本から来たなんて嘘ってことじゃない」
う〜んやっぱり説明は難しいな。
俺だって今の状況に色々困惑していて説明なんてそんな簡単にできないのだが。
とりあえず俺の予想だけど小説とか漫画で見たことある異世界転移の現象に似てるしそれで来たって言っとくか。
あまり黙ると疑われるしな。
俺はまだこちらに疑いの視線を向けるミノルに早く誤解を解かす為に説明した。
「何だ、ミノルは異世界転移って知らないのかよ?」
「そんなの知らないわよ」
「いいか、異世界転移ってのは、あるきっかけによって異世界にワープもしくは移動する現象のことだ」
「ふ〜ん、なるほどね。で、かつはどんなきっかけで異世界転移したの?」
「それはだな……」
あれそういえば何で俺はここにいるんだ。
最初に目を覚ました時もそうだけど、ここに来る前の記憶があやふやだ。
何か大事なことを忘れているような……
「ねえ、かつは何のきっかけで来たのよ」
「ちょっと待ってろ。今思い出すから」
「思い出すって……まさか忘れたの?こんな大切な事忘れるなんて、かつは記憶力が無いのね」
うるさい女だな、こっちはここに来た時気絶してたんだぞ。
ん?女……何か引っかかるな。
女の人になにかされたような気がする。
まだボケているのか靄がかかった状態で分からない。
クソ!あともう少しなのに思い出せない。
女…女…うるさい女、そうだ確かここに来る前に女の人に会って、その人も何か色々言っていたような気がする。
たしかその場所は……
「ねえ、かつ。何して――――――」
「あああああああ!!」
「――――っっ!!うるさいわね、いきなり叫ばないでよ!鼓膜破れるかと思ったじゃない」
ミノルは俺の声を耳に届かせない為に頭の耳を手でペタンと折った。
何か……かわいい。
てっそんなこと言ってる場合じゃない。
「思い出したよ!そうだよ路地裏だ!そこで女の人に連れてかれて………そうだ、あの女の人は何処だ!?」
周りを見たが、その女の人の姿は無かった。
「なぁここ俺以外誰か居なかったか」
「かつ以外誰も居なかったわよ」
「そうか……」
とゆうことは、あの人は俺とは違う場所に転移したって事か。
もし居たら何で俺をここに連れてきたとかそして俺が死ぬとか言ってた理由も教えてもらいたかったな。
「結局かつは、その女の人に連れてかれてここに来たって事なの?」
「まぁそうゆう事だな」
まだ俺自身納得してないが俺の知ってる現象でこれしか思いつかない。
「にわかに信じがたい事だけど、かつが嘘をついてるとは思わないし信じてあげるわ」
「なんか上から目線なのが気になるが、一応ありがとうと言っておこう」
それに俺の話を信じてくれるなんてこの人はお人好しなのか?
まあ今の状況ならありがたい。
「まぁこれであなたが安全な人って分かったけど日本から来たって他の人に言っちゃ駄目よ」
「えっ?何でだよ」
「決まってるでしょ、にゃんこ島にしか居ない半獣が別のところから来た人がなれるなんて知ったら、あなたの体に興味を持った人が調べに来るわよ」
調べるという言葉が気になり俺は恐る恐るミノルに聞いた。
「しっ調べるって……どんな」
「それはもちろん解剖して内蔵などをえぐり取っ―――――」
「分かった分かった!もういいから」
予想以上の答えに俺は途中で説明をやめさせた。
「分かればいいのよ」
絶対に、にゃんこ島では日本から来たなんて話さないようにしよう。
「それじゃあかつが本当にこの島のことを知らないのは分かったし、そろそろ行きますか」
そう言ってミノルは立ち上がる。
「え?どこに行くんだ」
俺も同じように立ち上がる。
「決まってるじゃない。この島を案内してあげる」
「マジか!ありがとなミノル」
「別にいいわよ。それじゃあ何処に行きたい」
「う〜〜ん。色々行きたい所はあるけど、やっぱり魔法を覚えられる所に行きたいな」
魔法。
それはみんなの夢であり憧れだ。
俺も一時期魔法を覚えるために、アニメの主人公の魔法の名前を必死に覚えて魔法使いのマネとかしてた頃が懐かしい。
そんな子供の頃からの夢がこうして叶えられるなんて異世界最高だな。
「それじゃあ行くわよ」
「ああ、わかった」
こうして俺の異世界ライフが始まった。
俺はこれからの事を考えると自然と笑みがこぼれた。