エピローグ それぞれの人生
「本当に行かなくていいのか?」
仲間の帰りを見届けたデビにエンマは問う。
「妾に残ってほしいと言ったのはお父様じゃぞ」
「それは確かにそうじゃが‥‥‥」
「それに約束したから大丈夫じゃ。また会えるしのう」
デビはそう言ってこれから先の未来を楽しむかのように笑顔を見せる。
「我が娘ながら成長したのう。昔は自分の思い通りにいかなければすぐに駄々をこねていたというのに」
「誰の事を言っておるのじゃ?妾はそんなわがままな女は知らんのう」
「誰も女とは言ってないが」
「うるさいのじゃ!早く始めるぞ!」
図星を付かれてデビはごまかす様に大声をあげて立ち去ろうとする。
「ありがとう、デビの仲間たちよ」
そしてエンマもデビの元に向かっていった。
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「クソどうしてもうまくいかないな」
誰も近寄らないシアラルスに佇む漆黒の建物に一人の研究者が居た。
その男の名は浜崎陸矢、絶対かつと同じ島の命運を託された者の一人だ。
「もう少し魔力を足すか?いや、射出口を狭めた方が良いか」
この研究所を作られたのもこの島の王ガルアに命令されたからだ。
彼はそれ以来ある物を作るためだけに日々を生きている。
「ん?これは‥‥‥来たぞ来たぞ!この反応を待ってたんだ!」
浜崎は嬉々とした表情でその石を銃に装填する。
そして目の前に縛られている半獣に向かって銃口を向ける。
「んー!んー!」
口を縛られているせいで唸り声をあげることしか出来ない。
命がけの懇願も今の浜崎に届くわけもなく、容赦なく引き金を引いた。
その瞬間、爆発音のような音が響き渡り射出口から先程装填した石が目にも止まらぬ速さで、目の前の半獣の心臓を貫く。
「ん————————」
そして目の前の半獣の人生は終了した。
だが浜崎はその事よりも石の行方だけを気にしていて、すぐに心臓にある石を半獣から取り除く。
その石は先程よりも色鮮やかな紫色に変色していた。
「ははっはははは!成功だ!やったぞ!俺はついに成し遂げたんだ」
この時浜崎の宿願は果たされた。
「これで俺はガルア様に殺されることも無く、日本に帰れるぞー!」
今この瞬間、彼の運命は決まった。




