その三十 氷結山を統べるもの
「死ね!異邦人!」
その瞬間、ものすごいスピードでリドルの体を突き刺しに来る。
「リドル!!」
俺はすぐにリドルを突き飛ばして、くちばしの攻撃から逃がす。
「あぶないな!初っぱなから殺す気か!」
「くそっ!避けられたか。余計なことをするな!私はそいつを殺せるなら何でもいいんだよ!」
「鬼ごっこだって言ってんだろ!殺すのを目的にするんじゃなくて逃げろよ!」
「いえ、かつさん。これで大丈夫です。氷結鳥は怒りで視野が狭まっています。相手の来る場所が分かるならいくらでも対策が作れます」
「まあ確かにそうだけど………」
「かつ、リドル!来るわよ!」
ミノルの声かけにより、再び氷結鳥がこちらにくちばし攻撃して来ることに気づく。
「今度こそ逃がさない!次は回避できない速さで刺す!」
そう言って、氷結鳥は自分が飛べるギリギリの範囲まで上昇する。
ちゃんとルールは守るんだな。
「死ね」
その一言が頭に響いた瞬間、先程よりも素早く急降下する。
まずい!これは間に合わない!
「ファイヤーウォール!」
その瞬間、氷結鳥とリドルの間に炎の壁が出来る。
「チッ!また邪魔したな!邪魔するなと言ってるでしょうが!!」
すると、氷結鳥はその場で回転し始める。
すると、炎がその回転に巻き込まれて炎の竜巻となって俺達に襲いかかる。
「嘘でしょ!?」
「今決めました!異邦人は、ここから誰一人として逃がしません!時間切れになるまでここで殺さずに閉じ込めます!ざまぁみろです!!」
「口が悪いのか丁寧なのかよく分からないな。てっ!おい、リドル!そっちに竜巻行ったぞ!」
炎の竜巻が草木を燃やしながらリドルに近づいていく。
「風の動きを見て、相殺させます。アグレッシブフルート!」
リドルの一撃により竜巻が割れた風船のように弾け飛ぶ。
その瞬間、目の前に氷結鳥が居ることに気付いた。
「今度こそ串刺しにしてやります!」
「しまっ!」
やらせるわけにはいかない!
「ワープ!」
俺はすぐにワープでリドルの元に向かい。
「インパクト!」
切り替えによる魔法で氷結鳥に攻撃する。
だが…………
「ふぅ……今の攻撃は中々危険ですね」
「なっ!?避けたのか!」
あの大きさで避けられるなんて、早すぎるだろ!
まずいな、そんなに速いとなるとワープで近くに飛んでも避けられる可能性がある。
俺の足でも捕まえるのは不可能だな。
「大丈夫かリドル?」
「はい。まさか、目の前に現れるとは。僕が竜巻を消すことを見越して氷結鳥は僕に攻撃をしようとしたんですね。僕の行動が読まれるなんて」
「ああ、予想以上に厄介だな。怒り任せかと思ったら意外と冷静だ」
「かつ、リドル!大丈夫!?」
ミノルは俺達の元に向かってくる。
だが、その隙を見逃さなかった氷結鳥がミノルを捉える。
「ミノル上だ!」
「っ!」
その瞬間、翼を羽ばたかせると凍りついた無数の羽がミノルに飛ばされる。
「アイスガン!」
巨大な氷の塊により羽を弾き氷結鳥にぶつける。
「よしっ!」
「いいぞ、ミノル!」
「いや、駄目です!」
「私に氷が効くと思ったのか?私は氷結山の化身、氷を司る者に氷が効くと思ったか?」
「分かってるわよ、そんなこと!ライトニングアロー!」
高速の光の矢が氷結鳥を襲う。
だが、それを簡単にかわした。
「この程度で私に当たると思ったのですか?」
「本当に素早いわね。いやっと言うほど」
「私は他の魔物とは格が違うのです。なので、異邦人が捕まえると言うのは不可能ですよ。そして、ここで異邦人の旅は終わりを迎えます」
すると、翼を大きく広げて同じ場所をグルグル回り始める。
これは炎の竜巻を作っていた時と同じだ。
そうなると、結果はああなるよな。
「私が氷結の化身と言われる所以、教えてあげましょう。今から異邦人を氷付けにする。立派な氷像にしてあげますよ」
その言葉通り翼を羽ばたかせ強烈な冷気を周りに撒き散らす。
「や、やばいなこれ!」
「風が強すぎて体が動かせないわ!」
「それでも、動かさないと僕達の体が凍り付きます!」
「そんなこと言ったって、どうしろって言うんだよ!」
吹き飛ばされないように踏ん張るので精一杯だ。
いや、もしかしたら踏ん張ってギリギリ止まれるくらいの風量を出してるのか?
あいつ、そこまで計算して俺達を襲ってんのかよ。
「これはちょっとまずいな」
体がどんどん凍りついていく、このままじゃあいつの言った通りに氷像になっちまうな。
「異邦人ごときが私に生意気な口を利いたのが全ての間違い、謝罪の言葉を述べるなら生かすことも考えますが?」
「それはごめんだな」
「私達を舐めないでよ。ごめんなさいって言って助けられるほど生半可な世界じゃ無いことくらい分かってるわよ」
「だからこそ、僕達は僕達の力で乗り越えて行かなきゃいけないんです」
「そですか、なら自らの力の無さを悔いながら凍り付け!」
その瞬間、さらに冷気が増した。
それにより凍りつくスピードも速くなる。
「2人とも!これから俺がやりたいこと分かるか?」
「当たり前でしょ。何年の付き合いだと思ってるのよ」
「正確に言うとそんなに何年も一緒ではないですけどね」
「分かってるわよ。雰囲気よ、雰囲気」
「でも、何となくやりたいことは分かります」
「へへっやっぱり、お前らが仲間で良かったよ。それじゃあ、行くぞ!」
「ええ!」
「はい!」
「何をしようとむ――――」
「インパクト!!」
俺は地面に向かってインパクトを放つ。
それにより、冷気が吹き飛び体を覆っていた氷が破壊される。
「冷気を吹き飛ばせても異邦人が氷像になることには変わらない」
「ソイルウェーブ!」
「ラノストーム!」
「何?」
その瞬間、巨大な砂嵐が氷結鳥を取り囲む。
「今さら私がこんなもので閉じ込められるとでも?すぐに吹き飛ばしてあげます!」
氷結鳥は砂嵐を吹き飛ばす勢いで翼を羽ばたかせる。
そして、砂嵐がその風の勢いで消される。
だが、俺はその瞬間を狙っていた。
「っ!?何だこれは!」
俺は事前に魔法陣を空中に複数展開させた。
「食らえ!ウォーター10連!」
俺は一気に氷結鳥に水を浴びせる。
「なんだ、ただの水?ははっ!まさか、水で私を止められると…………っ!何だ、翼が動かしにくい」
「へっただの水でもその翼についた砂に触れたらお前の動きを抑えるのに十分だ!」
「まさか、泥!?」
先程の砂嵐で付着した大量の砂が水に触れることにより、泥に変化する。
それにより翼が重たくなり、飛ぶのが困難になる。
泥は羽毛に付いたら中々取れず凍りもしないので、振りほどくのは困難だ。
「こしゃくな!」
「今だ!捕まえ――――」
「まだだ!」
その瞬間、氷結鳥口を大きく開く。
「飛び回るだけが能だと思ったか?凍りつけ!」
まさか、口から氷のビームでも放つのか!?
まずい、近づきすぎた!やられる!
「ロックタワー!」
「んぐっ!?口が!」
氷結鳥が俺を凍らせようとしたその時、ミノルの魔法が氷結鳥の顎に見事にヒットして、自分の技で顔が凍りついた。
「ナイスミノル!」
「ならば足で握りつぶしてやる!」
すると、氷結鳥は翼と口が使えないならと足で俺を攻撃しようとする。
「これ以上暴れさせねえよ!インパクト!」
「―――――――っ!?」
インパクトの衝撃波により氷結鳥が地面に思いっきり叩きつけられる。
「リドル!」
「分かってます!」
そして、地面に倒れている氷結鳥をリドルが捕まえる。
その瞬間、俺達の勝利が決まった。




