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半分獣の俺が異世界で最強を目指す物語  作者: 福田 ひで
第十五章 ようこそ地獄へ
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その二十九 鳥の豹変

「なっなっ!?」


突然の鳥の登場に開いた口が塞がらない。

ていうか、今こいつ喋らなかったか?


「異邦人よ。ここへ何しに来た?」

「喋った!やっぱり喋ったぞこいつ!」


気の所為じゃなかった、この鳥人の言葉を発するのか!


「おおおお落ち着いてかつ!喋る魔物なんてさっきから見てるでしょ!」

「いや、これは喋ってると言うより頭に直接響いてくるの方が正しいですね」


リドルは冷静に自身の頭を押さえる。

たしかに耳で聞くって感じじゃないな。


「何だそれ、テレパシーって事か?」

「異邦人よ、私の質問に答えよ」


そう言って鋭い目付きで俺らのことを睨む。

氷結山に棲む白銀色の羽と真っ白いくちばしは他の魔物とは違う、美しさがある。

喋り方といい風体といい妙な緊張感が流れ思わず恐縮してしまう。


「え、えっと俺達はデビを助けに来たんだよ。なっ?」

「そうよ。だからあなたに危害を加えようとは思ってないの」

「あれ?あの鳥を捕まえて氷結山に行こうとしてませんでしたっけ?」

「ばっ!お前今言うことじゃないだろ!」


俺は慌ててリドルの口を押さえる。

こいつは元気になったと思ったらすぐにいらんことを言う。


「機嫌を損ねるような事言っちゃダメよ!あの鳥一瞬にして私達が気付かない内に背後に回り込めるのよ。相手にしちゃダメ」


俺とミノルは余計なことを言うリドルを叱る。

あの鳥の雰囲気からして他とは明らかに違う。

もしかしたら、氷結山の長だったりするかもな。


「聞こえていますよ。私の捕獲しようとしたのですね」

「っ!いやぁ………あのすいません!俺達を氷結山まで連れていってください!」


俺は観念にして土下座して鳥に頼み込む。


「ちょっかつ!?」

「俺達には時間がないんです!お願いします!どうか、連れていってください!」

「かつさん………僕からもどうかお願いします」

「え!リドルも!?………私からもお願いします!」


そう言って俺達は目の前の鳥の魔物に土下座をした。

土下座をし続けていると、突然笑い声が頭の中に響いてくる。


「ふふふっこれは何とも珍しい体験だな。異邦人に会うことすら滅多にないと言うのに、土下座してお願いされるとは。余程、時間がないとみた」

「俺達には助けなきゃいけない仲間が居るんだ。お願いだ、俺達を運んでくれ!」


再び俺は鳥に心の底からお願いをする。

鳥はしばらく考えるとテレパシーのようなもので言葉を頭に送ってくる。


「答えはいいえだ」


それは俺達にとっては絶望的な言葉だった。


「なっ!どうしてだよ!」

「私がそれをして何になる?」

「くっ!そ、それは………」


何か言おうとするが言葉に詰まり、声を出せない。


「無いのだろう?ならば交渉は無意味。こんなところで道草を食うのではなく、歩を進めた方が良いと思うが」

「それじゃあ、間に合わないのよ。溶岩エリアとか毒の沼とか私達じゃとてもじゃないけど通れないの。だから、あなたの力を貸してほしいの!何か欲しいものがあれば何でも言って!それが交渉の材料、どうかしら?」

「何でも?それが異邦人が提出するメリット?話にならないな」


そう言って鳥は羽を羽ばたかせ向き飛ぶ体制に入る。

風圧で吹き飛ばされそうなのをなんとか堪えながら、飛び立とうとする鳥を呼び止める。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

「待たない。私は忙しいのだ。これ以上異邦人のわがままに付き合うつもりはない。それでは」

「逃げるんですか?鳥さん?」


その言葉を聞いて飛び立とうとした鳥は翼を止める。

今のはリドル?


「どういう意味ですか?」

「僕達には何もせずにそのまま飛び立とうとしましたね。それはなぜですか?」

「私は他の魔物とは違い、弱いものを傷つけるような事はしません。なので、異邦人に関心はありません」

「なるほど、でもこう解釈も出来ますよね。鳥さんは自らの力量の差を感じて飛び立とうとした。その可能性はありませんか?」

「何ですか?挑発してるつもりですか?」


おいおいおい、また始まったぞ。

久しぶりに見たリドルの挑発。

大丈夫なんだろうな。


「もう少し分かりやすく言うと、ビビってるんですか?」

「っ!なるほど、私を挑発して交渉に持ち込もうと言う魂胆ですね。その手には通じませんよ」

「やっぱりそう言うことですか。鳥さんは交渉に持ち込むのをビビっている。だからこそ、僕達から逃げようとしている。何故なら、交渉に持ち込んでしまったら鳥さんが不利になってしまうから」

「何故、私が怯えていると?」

「僕達の方が強いからですよ」

「ははっ面白い!私が異邦人よりも弱いと言うのか!」


鳥はこちらを鋭い視線で睨みつけてくる。

独特の瞳で睨まれただけで背筋が凍りそうになる。

これ大丈夫か?

何か嫌な方向に進んでいるような気がする。


「ならば、その体に刻んでやろうか?」


そう言って鳥はリドルの方にくちばしを向ける。

それは鋭利で人の体など簡単に貫けそうだった。

だがリドルは怯える様子はなく、毅然とした振る舞いを続ける。


「それでは面白くありませんよ。もっとゲーム性を持ちましょう。ただの殺し合いほど虚しいものはありませんから」

「ならば、どういう娯楽をするのだ?」

「鬼ごっこです」


その言葉を聞いて鳥は目を丸くする。

鳥にも鬼ごっこの意味が分かるのか?

というか俺達も正直意味が分からないんだが。


「鬼ごっこ?ははっ笑わせてくれる。そんな、お遊びに付き合う暇などない。やはり、私は失礼する」

「逃げるんですか?鳥さん、所詮はやっぱり鳥ですね」

「鳥と言えば私が怒ると思ったか?もう一度言うがそんな安い挑発に私が乗るなど―――――」

「ああ、なるほど。よく言いますもんね、臆病者のチキンやろうと。あなたはチキンとしてチキンに恥じない行動をしていたのですね。それは失礼しました、チキンに逃げるなと言う方が無理でしたね。どうぞ、チキンらしく僕達に背を向けて羽ばたいていってくださいチキン」

「ぶっ殺してやるよ、このガキ!!」


あっこれはまずい、完全に鳥を怒らせたな。

ていうか、口調変わりすぎだろ。


「どうしたんですか?早く行ってくださいよ、チキンさん」

「だからそれやめろって言ってんだろ!私は氷結鳥って言う名前があんだよ!」

「それは失礼しました。それではゲームに参加すると言うことでいいですね?」

「やるに決まってんだろ!ボコボコにしてやる!」

「ですって、それでいいですよね」

「え?あ、ああ」


完全に蚊帳の外だった為、正直自分は参加しないと思ってしまった。


「それでは氷結鳥の飛べる範囲は10メートルまでと言うことでいいですか?」

「あっ!?いいぜ、ハンデくらいはあげないとな」


口調変わりすぎだろ、さっきまでの謎の強者感はどこ行ったんだ。


「別にハンデじゃないですよ。ただ、あなたが逃げて行ってしまう可能性があるから言ったんです」

「逃げるわけねぇだろうが!ぶっ刺すぞ!」

「ははっそれじゃあ、了承したと言うことで良いですね」 


すると、話し終えたのを見てミノルがリドルに純粋な疑問をぶつける。


「ねえ、何で鬼ごっこなの?」

「簡単で分かりやすいじゃないですか」

「何か作戦があるからそれにしたんじゃないのか?」

「いえ、なので作戦は任せましたよ」

「完全に人任せかよ。まあいいか、時間もないしとっとと勝って山にいくぞ!」


俺は覚悟を決めて、氷結鳥と対峙する。


「それじゃあ、始めましょうか、鬼は僕達で氷結鳥を捕まえたら僕達の勝ち、負けたら」

「お前を串刺しにする!」

「だっそうです」


冷静に言ってるが自分だけが狙われてるってことに気づいてるよな?


「準備はいいですか?」

「ああ!」

「私はいつでもいいぞ!」

「私も準備できてるわ」

「それではよーいスタート!」



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